絶界獄炎
炎の鞭と言うべき、細い炎がしなりながらこちらへ向かってくる。
速度を見る限り微妙に狙いがそれてるな。わざとか?
そう思いつつ、その場から動かず、攻撃をかわすというより勝手にそれる。
「どうした?俺は一歩も動いてないだろう。ちゃんと当てろよ」
「ふん、言ってくれるじゃあねぇか」
今度は細い炎が何本も吹き上がりながら形を形成し、こちらへ振り下ろされる。
乱れ撃ちと言う奴だろうか数撃ちゃ当たると言わんばかりの雑すぎる攻撃。
だが、雑すぎて避けづらい。下手に狙いをつけられない分動きが読みづらい。
それでも、攻撃を避ける。読みづらいが避けられないわけではない。
ラオージュの時もそうだったが、攻撃を耐えられる以前に攻撃を当てられない
ってのは辛い。突破口が終わりが見えない。
見る限り、あいつのようなチートバリアは展開してないようだ。
近づきさえすれば、一撃でやれそうなのだがそのためには片足一本溶岩に
付けるか直線であいつに向かって行かなければならない。
さて、どうした事か……。
「やけに素早い小動物みたいな野郎だ。そのゴミ以下な魔力からするに当てりゃ
一撃だとは思うが、厄介な」
「そのゴミ以下に避けられるって事はお前はゴミ以下のカスってわけだな」
挑発し、相手の冷静さを欠きに行くぐらいしか現状やる事がない。
あの溶岩が俺の知っている物理法則であるかどうかもわからな……。
ゴボゴボと言う泡が沸き上がるような音が聞こえる。
疑問に思ったが、答えは目の前にあったためすぐさま気づき、
その場から飛び退く。
さっきまでいた場所から溶岩が噴き出る。
そして、その溶岩は巨大な腕のような形を形成し、こちらへ殴りかかってくる。
その場から走り出し、巨大な腕の攻撃範囲から脱出する。
後ろから、ドジュウゥッ!!と言った音が聞こえ、それと共に熱が当たりに広がる。
そちらへ目を向けると地面が大きくえぐり取られており、
えぐられた箇所は赤く発光し、溶解しているのが見て取れた。
あんなの喰らったら文字通り骨一つ残らないだろ……ザ……ザザ……!
[すいません!遅れました、大丈夫ですか!ケンさん]
「いろいろ言いたい事があるが、肉体的には大丈夫だが戦略的には最悪だ。
攻略法がまるで見えん」
[確かにケンさんの攻撃、あの時と違って当てられはしますが
そもそも近づけませんね。確かにこれは最悪です]
「…何か勝ちにつながる情報はないか?」
[調べて見ますね、待っててください]
さて、アンジュが調べてくれている間どうするか。
まず、生き残る事が大事だが………。
「何をぶつぶつ言ってるかは知らんがもう終わりだ。死ね」
周りからどんどん溶岩が噴出し、その溶岩は腕の形を成していく。
数が多すぎる、完全に数で制圧しに来る気だ。
その腕は次々とこっちへ向かって襲い掛かってくる。
僅かな隙間を縫うようにくぐり避けていく。
後ろから地面が溶ける音が聞こえるたびにゾクゾクと寒気が走る。
相手の方から光が見え、嫌な予感がしたため即座に止まる。
止まったと同時に炎の刃が地面を焼き切りながら突っ込んできた。
止まったため、ぎりぎりで交わす。
危なかった、止まってなきゃ良くて片足持ってかれてた……。
[終わりました!]
「待ってた。で、何かいい情報はあったか」
[えっとですね…。あの溶岩自体は魔術ではありません。溶岩を作り出した
炎自体が魔術です。なので、炎だけは絶対に受けないでください。
ケンさんは今、炎へ多少は耐性ついているみたいですけど、死にこそしませんが
虫の息になるので絶対に食らわないでください]
「じゃあ、なんだ。あいつの周りにある溶岩は魔術ではないって事か」
[そうですね、溶岩はあくまで操っているものが魔術です]
そうか、あいつを囲む溶岩は魔術ではない……ならば!
相手へ向かって走り出す。
焼かれるだろうが、倒してしまえば足が焼けるだけだ。
ただ、一直線に走るのではなくジグザグに走り、近づいていく。
飛んでくる炎の刃や足元から噴き出す溶岩を躱していく。
俺がいざ、覚悟して溶岩へ足を入れようかと言うところで何かが
一歩先の溶岩へ当たり、溶岩が冷えてただの岩へと変わる。
……あいつら、ナイスタイミングだ。
相手に対応される前にその岩を足場に一気に相手に近づく。
回転をつけて相手を蹴り飛ばしにかかる。
が、蹴りは魔力の壁に阻まれる。だが、これは想定済みだ。
苦手だが、足で掌底のように衝撃を発生させ、壁を貫く。
「ゴッッッッ!グッ………!!」
相手はよろめくが、耐えやがった。やはり苦手なのが響いたか!!
このままでは反撃が来る、魔力の壁を足蹴にし、一気にあいてから離れる。
「ゲホッ……。とんだ手を使いやがる。まさか割らずに貫通してくるとは。
だが、倒せなければ意味が無い。そして、俺に一撃喰らわせた褒美だ。
あいつ用に取っておきたかったが、お前に使ってやる」
相手を中心に魔方陣のようなものが展開される。
やばいな、何か大技を使う気か。止めたいがさっきので手の内は見せてしまった。
止めようにも対策されているだろう。避けるしか助かる道はない。
神経を張り巡らし、いつ来ても、いつでも反応できるように構える。
しかし、暑いな。溶岩が近くにあるからか…?
[ま、まずいです。周囲の温度がどんどん加速度的に上がっていきます!]
「何!?」
[45度、48度、53度、64度、75度……その場にいるだけで危険です。
すぐに離れてください]
待て待て、なんだその温度は……あいつにかけた加護が無ければまずかったな。
だが、離れるって言ったってな、俺はあいつを最悪足止めに来たんだ。
それにあんな口を叩いたのにヤバくなったので戻ってきましたなんて
口が裂けても言えん。何とかするしか……
[攻撃来ます!躱してください!]
アンジュの声を聞いたと同時に熱波が襲い掛かってくる。
逃げようとも範囲が広すぎて逃げられない。
目をやられないように腕で顔は防ぐが全身が高熱に晒される。
吸う空気は喉を焦がし、肺を焼く。
「ガハッ……ゲホッ」
間髪入れずに今度は溶岩の波がこちらを押し寄せてくる。
逃げ場になりそうな場所へすぐさま移動し、波から逃げる。
ま、まずい……息がまともに出来ねぇ…。
肺が通常の動きをしないのか息を吸おうにも空気が肺まで到達しない。
ど、どうすれば………そうだ。
すぐさま、ソラから貰った薬を喉に無理やり流し込む。
塗り薬だったかもしれないが、回復薬だ。多分大丈夫だろう。
喉が、肺が通常に戻っていくのを感じる、これならまだいけるか……。
「ほう、まだ生きているか。小童」
灼熱の世界に君臨する魔術師は俺を見据える。
俺もあいつから目を離さない。
複数の炎は、溶岩は形を作り、いつでもこちらに襲い掛からんと構えている。
「いい加減楽になれ」
炎は、溶岩は獣の顔を作り、一斉にこちらへ襲い掛かってくる。
一つを見るな、すべてを見ろ、全体を見ろ。一つにとらわれると死ぬ。
一番最初に突っ込んで来た炎を横へ
次の上から襲い掛かってきた炎は後ろへ
そして、俺に巻き付こうとした炎は上へ
上へ跳んだ俺を仕留めるべく突っ込んできた炎はあえて前へ
動いて、跳んで、走って避ける。
こいつが一番ヤバい、何としても避けなければ……!!
動けはするが、足が熱で悲鳴を上げ始める。
ぐ……いい加減この場にいるのもまずくなってきたか。
こうなったら、四肢欠損覚悟で完全に詰みになる前にあいつを仕留めなければ…
[ッ!?下から来ます]
アンジュのその声を聞いて、即座に動いたがコンマ一秒遅れた。
溶岩が足元から吹き出し、左足の先端を包む。
「………ッ!!!?」
激痛が走る、熱い 熱い 熱い 痛い 痛い 痛い。
生まれて初めて体験した焼かれる痛みに声が出そうになるが、噛み殺す。
押さえて、のたうち回りたい気分になるが押さえつける。
が、左足へ意識が向いた次の瞬間、俺目掛けて、溶岩の獅子が襲い掛かってきた。
少し遅れたが、すぐさま動こうと左足に力を入れ……
「…ッ…しまっ!?」
痛みが走ったために動きが遅れて
左腕が溶岩に飲み込まれた。




