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出撃 相まみえるは獄炎の魔術師

二人の激戦からほんの少し遡り……。


「副隊長!ラオージュ殿が向かった方向と逆の方向により巨大な魔力反応が」

「何!?」


その声を遮るかのような大きな爆発音が聞こえる。

音がした方角を確認すると一部分が真っ赤に染まっていた。


「ブラフか……!!」

「副隊長、どうなさいますか」

「魔砲を使用する。すぐに準備せよ」

「わかりました。しかし、これも恐らくは気休めにしかなりません」


騎士とシャルがかなり慌ただしく動き、話している。

俺が動くべきだと思うが、ここの指令を出すのはシャルだ。

勝手に動いて迷惑はかけられない。

ここはあいつから命令受けるまでは下手に動かない方が無難だろう。


「少しばかりの足止めでいい、動きが鈍っている隙に私が出向く」

「なっ………」


………あいつ。

俺はシャルを止めるべく声をかける。


「待て、シャル。お前が行ったら誰が部下の指揮を執るんだ」

「その通りだが、私以外行くものがおらんだろう」

「あほか、こういう時に俺に言えよ。時間稼ぎか何かで

いいから行って来いってな」

「……お前、正気か。

あの規模と魔力量からすれば恐らく極術師や同規模の魔術師。

それにあの破壊状態からすると相手は炎魔術の使い手だ。

魔術に弱いお前だとすぐに焼き尽くされるぞ、それでもいいのか!!」

「じゃあ、お前はあれに勝てる自信があるのか?」

「………………ない」


やはりな、死にに行く気だったか。


「ったく。勝機の無いのに行こうとするな」

「じゃあ、お前はあるのか!!」

「お前が行っても魔術の真正面からのぶつかり合いになるだろ。

そうなれば単純に力の強い方が勝つんじゃないか?」

「………あぁ………」

「だが、俺はそんな事は出来ない。出来ないならではの戦い方をするんだ。

そっちの方が勝率は高いだろ」

「…………!!」

「副隊長……」


悔しそうな顔をし、歯を食いしばるシャル。

自分の非力さでも呪ってるのか、俺は心が読めないからわからない。


「……わかった。だが、一つだけ約束して貰うぞ」

「内容次第だけど、どういう約束なんだ?」

「ちゃんと命だけは持って戻って来てくれ」

「当然持って帰るさ。勝つ気で行くんだからな」


すぐにでも、向かおうとするとソラに止められる。


「ケンさん、えっと……あった、これをどうぞ」


貰ったのは液体状のモノが入った瓶。これは魔術おなじみのあれか?


「これはなんかの薬か?」

「はい、これは私が作った回復薬です。少しでも助けになればと思って」


ほう、始めて見たがやっぱりあったかこういう類の薬。

流石は魔術世界だ、この辺は思っていた通りだな。


「ありがとう、王女様」

「兄みたいに私が強ければ良かったんですけど…」

「そんな事を言うなよ。お前が強くても俺が行ったさ」


こんな状況で、女の子に行かせておいてのほほんとは俺には出来ない。

特にやれるんだ、やれるのにのほほんとなんて出来ない。

貰った薬を服にしまい、出発する。もう、時間が無いからな。

窓から外に出て、向かおうとするとアシェルとシェシュルの姿が見えた。


「よう!」

「うわっ!?どこから出てきたのよ」

「窓から跳んできた。で、だ。お前らに頼みがあるんだが、いいか?」

「内容によるけど、こんな状況で何よ…………まさか、戦いに行くから

着いてきてくれとか言うんじゃないよね?」

「ご名答。着いてきてくれるか?」

「報酬くれるならって言いたいところだけど……無理だわ。モンスター狩るのと

魔術師と戦うのでは話が違うもの。私達じゃ足手まといにしかならない。

ましてやこんな状況になる魔術師なんて私達じゃあ話にならないわ」


確かに俺はこいつらを守るためには抱えて移動しかできない。

咄嗟にバリア貼って防ぐなんて出来ない。下手に連れて行っても

避けに徹する事になりそうだ。ならば、そんな死にかねないような場所に

連れていくのは危険だな。


「そうか、悪いな。声をかけて」

「ま、待ってください」


行こうとしたところでシェシュルに止められる。


「なんだ、何か案でもあるのか?」

「せ、戦闘には参加出来ませんけど援護なら出来ます。で、ですよね」

「え?ま、まぁ…遠目の距離から弓で射貫くぐらいなら出来るけど、

そんなの魔術師が相手じゃあ焼け石に水よ」

「それでいい。相手は見る限り溶岩を操ってる。スライム凍らせた時みたく溶岩を

一時的でいいから凍らせてくれるだけ大助かりだ」

「そ、それでいいなら行くけど、かなり離れるわよ。ケンがダウンしてもすぐに

助けに行けないぐらいの距離よ」

「それでいい。俺はすぐにでも行く。頼んだぞ」


そう言って二人から離れ、敵に向かって行く。

すぐに門を抜け国から出たところで、声を掛けられる。


「待て、異なる世界の者よ」

「…アマラか。どうした、今は急いでるんだ」

「わかっておる、無謀な戦いへ行くお主にわしながらプレゼントじゃ」


そう言うと、アマラがこちらへ指を刺す。

体が少し冷え込んだ、と言うよりかは冷たい何かに包まれた。

まるで、冷気の服でも着こんだかのようだ。


「これは一体……」

「お主に冷気を纏わせた。これで多少は熱に強くなったはずじゃ。多少じゃから

過信はしてはならんぞ」


ほう、耐熱ってわけか。相手は炎らしいからありがたい事この上ない。


「そうか、ありがとな」

「なんじゃ、我にも来いと言うと思っておったが」

「手伝ってほしいのは山々なんだが、お前は炎苦手だろ?」


アマラは氷狼だから炎なんて絶望的に相性が悪いとしか思えない。

下手に連れていくぐらいならばって話だ。


「ふん、そんな事はない!と言いたいところじゃが残念ながら事実じゃ。

なら、その言葉ありがたく受け取っておこうかの」

「あぁ、俺の気が変わらないうちに受け取っておいてくれ。じゃあ、俺は行くから」


そう言って敵へ向かって駆けていく。

援護は頼んだ、バフをかけてもらった、これで負けて死にましたは許されないな。

必ず、勝たねば。

走って相手へ向かって行くうちにどんどん温度が上がっていく。

正面は炎から発生した熱で煌びやかになっている。

そして、その炎の中に、ぐつぐつと煮えたぎる溶岩の中心に人影を見つけた。

あれが、敵か。


「なんだ、お前は?」

「相手に名を聞く時は自分から名乗れよな」

「フハハ、言い寄るな。小童」


一つ笑った後に炎の一つが形を変え、まるで獅子の頭ような形になり迫ってくる。

そいつを左へ跳んで回避する。速度はこんなもんか。

しかし、あいつらの魔術はこんな事しなかったが…好みなのか?


「良く避けたな」

「あんなので終わるほど、トロくないんでな…」


しかし、溶岩で囲まれているだと……。

こんなの近づける気がしないんだが、行けるか?

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