刑罰と食事とこの街と、その6
木を植えていく中風が吹き始める。
何事かと思い、流れの方向に目を向けると風によって土が畑だった場所へと
集められていた。あんなやり方ありかよ……反則だろ。
こちとら原始的な方法で修復してるってのに。
「……どうしたの?」
「いや、あんな感じに簡単に出来るのが羨ましかっただけだ」
「何言ってるのよ、数秒で木を植えられるあんたも凄いわよ」
そうかもしれんが、どうしてもあれと比べるとどうしてもなぁ。
なんて思っていると音楽の様なものが鳴り響く。
………なんだ?
「あ、はい。もしもし?」
と言って、腰のポーチから何かを取り出して話し出すアシェル。
え……携帯もあるの!?
びっくりしすぎて、流石にアシェルの方へと振り向いて確認すると
しっかりと耳に何かを当てて話している。あれは間違いなく携帯電話だ。
冷蔵庫やオーブンなどが存在する事にも衝撃を受けたが、まさか携帯まであるとは。
「了解……ケン、ラオージュが呼んでるから行ってあげて」
俺が衝撃を受けてるとアシェルは畑の方へ指を指した。
あいつが呼んでるだ、一体何の用事があるんだか……。
渋々奴の下へと行くとあの二人組とギルドで掴まっていたやつと共に
視線は地面の方へと向けていた。
「坊主。来たか」
「何の用だよ、こっちだって終わってねえんだぞ」
「いやなに、お前にこいつをバラバラにぶっ壊して貰おうと思ってな」
ラオージュが指を指す地面に目を向けると巨大な岩が剥き出しになっていた。
もしや、耕してた時に当たってた硬いものはこれか?
[随分と大きな岩ですね。こんなのがあったら作物を育てていく上では邪魔でしょうね]
邪魔か……それならぶっ壊しておいた方がいいな。
しゃがんで触ってみるが特別硬いようには思えない。
壊すだけなら簡単に出来るが、バラバラとなると……二次被害が怖いな。
「お前ら離れててくれ」
「だとよ。ほれ離れるぞ」
「離れてってこんな小僧にほんとに出来るのか?」
「出来るから頼んだんだよ、ほれ行くぞ」
全員が離れたのを確認してから、岩に手を当てながら軽く息を吸って
吐くと同時に力を入れて衝撃を岩全体に与える。
ドゴォォッ!!!!
衝撃は岩全体に伝わり、振動となって辺り一帯を揺らし岩を砕く。
しかし、砕いたのはいいがこんなでかい岩のかわりになる土を用意できるのか?
「……マジで砕きやがった」
「ラオージュ、砕いたのが良いがこの岩どうやって動かすんだよ」
「動かすんじゃねえ、粉々にするんだ。あぶねえから離れな」
ラオージュが魔法陣を展開して指を動かすと風が吹き始める。
見れば膝ぐらいの高さの竜巻が複数出現し岩を粉々に砕いていく。
「お前、これが出来るんなら砕いた意味ねえだろ」
「そんな事ねえよ、砕かずに削ると設置面積が狭くて時間がかかるからな。
お前にやって貰ったんだ」
「さっすが大兄貴、すげーや!!俺にも今度教えてくれよ」
「別に良いが、前に教えたやつ出来てっか?」
……俺の仕事は終わったみたいだし、木を植える作業に戻るか。
「坊主、ちょっと待て」
「なんだよ、まだやる事あんのか?」
「こいつを貰ってけ」
そう言って何かを握った手を突き出すラオージュ。
何かを渡そうとしているのはわかるが何を渡して来るんだ?
疑問と警戒を抱きながら手を突き出すと金色のコインを6枚渡される。
間違いなく金だろう。
「……いいのか?」
「いいからもってけって」
「わかった、ありがとな」
貰ったコインをズボンのポケットに押し込んで二人の下へ戻ると
二人が俺に対して引き気味の目で見ていた。
「……なんだよ」
「いや、さっきの見てたんだけどどうやったのよ」
「動作だけで言えば、手を当ててこう!!だな」
植えた木に動きだけでやった事を表す。
簡単そうに見えて力を入れ方がむずいんだよな、これ。
出来るようになるまで苦労したなぁ。
「いやいやいやそんなので出来ないでしょ」
「そ、そうですよ。ど、どんな魔術を使ったんですか?」
「こいつは魔術じゃなくて武術って言うんだ」
「ぶ、じゅつ……なにそれ?」
「体術とか武器術とかあるだろ、それらの総称」
「たいじゅつ…?ぶきじゅつ…?……ちょっとわからないわね。
シェシュルは聞いた事ある?」
「き、聞いた事ないです。武器と名前がついているところから剣や弓、槍を使う
事だとはわかるんですが……」
[………ケンさん、またやらかしたんじゃないんですか?]
その……ようだが、今のところ方言の事だって思われてるみたいだ。
この隙にそう思われるように舵を切っておかないとまた面倒な事になる。
「そもそも武器を使うってあたしみたいな魔力が少ない人が魔術が弱いのを補う
ためで後は騎士隊みたいな国の偉いさんが飾りで持ってるぐらいよ?」
「そうなのか。俺の故郷だと当たり前のようにあったから知らなかった」
「珍しいとこもあるものね。剣で切りつけたりするより炎魔術で相手を
焼いたり、氷魔術で凍り付けにした方が効率的だと思うはずだけど……」
「………うちが珍しいみたいだな」
「珍しすぎて、興味出て来たからまた今度連れて行ってくれない?あんたの故郷」
「また、今度な。今はとにかく木を植える事に注力しようぜ」
「そうね、あたし達も終わり次第植えるの手伝うからそれまでは頼むわよ」
「ああ、任せとけ」
なんとか乗り切れたみたいだ、あぶねえ……。
[ケンさん、油断しすぎですよ。まだこの世界の人間じゃないって
あの3人しか知らないんですから]
くっ……正論すぎてぐうの音も出ねえ。
こっちの常識は相手の非常識だなんて普通にある事だ、気を付けないと。
この後はただただ植えては植えてまた植えるという作業が続いていき――
「こいつで最後…っと。終わったな」
「は、はい終わりました。お、お疲れ様です」
「ああ、お疲れさん」
「まさか、日が落ちる前に終わるとは思ってなかったわ……」
だな、俺も暗闇の中やるのを覚悟してたがギリギリ間に合ってよかった。
畑の方は……終わってあいつらもういねえんだけど早すぎだろ。
確か、この後は王子んとこ行くんだったな。だったら……
ポケットの中のものを2枚取り出す。
「手伝ってくれてありがとな、足りねえかもしれねえけど礼として受け取ってくれ」
「別にいい―――………え……これマジ?」
「ん、足りなかったか?なら――」
「そそそんな事ありませんよ、金貨一枚でも中々ないのに2枚は高すぎですよ!?」
げ……金貨一枚を一万円感覚で出していたんだが違ったのか?
気を付けてたんだがまたやらかしてしまった。
思考を張り巡らせる中、突然音楽が鳴り響いた。
「あ、ちょっとごめんね……もしもし?」
アシェルが電話している間に言い訳を考える。
………もうほとんど日が落ちてるし、暗くてわからなかったとかにしとくか。
多分、これが一番無理がないだろ。
「うんうんわかったわ。はーい」
アシェルは話し終わったのか耳元から手を降ろした。
「ケン、あいつからの連絡で今日の報告はしておいたから明日の朝に宮殿に来いって」
「……そうか、わかった」
王子の下へ行く必要が無くなったのか。
手間が省けた事はありがたいんだが俺は寝泊まりする場所も知らないし
なんなら、商店街のとこ見た店ぐらいしか飲食店知らない。
これから朝までどうしようか……こういう時は現地の人を頼った方が良いな。
「お前らってこれから予定あるか?ないなら旨い飯が食える店に
連れて行ってくれないか?奢るからさ」
「言ったわね!!!それじゃあ早速行きましょ!!」
俺の発言に一気に食いついて腕を引っ張ってくる。
良かった、二人してさっきの渡そうとしてた金については聞いてこないみたいだ。
「い、いいんですか?アシェルさんはたくさん食べますよ」
「……そういうのは本人が聞こえない場で言うんだぞ、特に女性相手にはな」
「そうよ~、シェシュル君?」
「すすすすすすいません!!すいません!!」
これはシェシュルが悪い。
「アシェル、今から行く店って何が旨いんだ?」
「魚料理が美味しいわ、特製ソースがまた合うのよ」
「魚か」
魚料理って言えば俺はフライがいいな。
タルタルソースをかけたのを食べながらご飯をかきこむのが好きなんだ。
やばい想像したら腹が急激に減って来た、楽しみだなあ。
なんて心躍らせながら、おすすめの店とやらへ向かう。
―――――――――――――――――
「はい、お待ちどうさま。こいつが当店の看板メニューですよ」
案内された店で出されたのは俺の身長の半分はありそうな巨大な魚を
まるまる串焼きにしたような豪快な一品だった。
その圧倒的なインパクトに呆気にとられる俺を他所に二人は取り分けて行く。
「どうしたの、食べないの?」
「い、いや食べる食べる。大きさに圧倒されただけだよ」
俺も二人に続いて取り分けて口に入れる。身は油も乗っていてそれでいて
身が引き締まっている。魚のフライを想像していたためにびっくりしたが
そんな気持ちはもうすでにどこかへと吹っ飛んで行った。
[うぅ……こんな見てるだけでお腹が空いてきそうな美味しそうなご飯
私も食べたいですぅ―!!]
アンジュが嘆いているが可哀想な事にわけてあげる事は出来ない。
ここは美味しく食べて少しでもアンジュに旨さを伝えるようにしよう。
しかし、これだけ旨いと食が進むものであっという間に皿の上から身が消滅した。
無論、一皿で足りるわけもなく新たに魚を取り分けて
口を入れようとしたところでアシェルに止められる。
「ケン、ちょっとそれを口に入れる前にこれをかけてみてよ」
「そいつは、来る前に言ってた特製ソースってやつか?」
「ピンポン、ほんとはもう少し後の方がいいんだけど今回は早めにって事で」
どんなソースなんだろうか、不安半分期待半分でかけて口へと入れる。
ッ!!酸味が結構強いが……酢のようなツンと来る酸味じゃなくて柔らかな酸味で
魚を包み込むようだ。そのおかげかこの脂が乗っている事でジューシーな
身が一変してさっぱりとしたものに変わってしまった。
確かにこれはもう少し後の方、腹が膨れてきたぐらいの方が向いているな。
「うまいな、このソース」
「でしょう。これをかけると食欲が再来して更に食べれちゃうのよね。
小食のシェシュルもびっくりするぐらい食べちゃうのよね」
「そ、そうですね。そ、そのソースは不思議と食欲が戻ってきちゃって
ついつい多く食べちゃうんですよ」
「お前はその方がいいぞ、育ち盛りなんだから」
「そうそう、じゃないと身長が伸びないわよ」
「き、気にしているんだからそういう事は言わないで下さいよ」
なんて事を話しながら夕食は進んで行った。
しっかし、この後どうすっか……金が余ったら宿
無かったらどっちかの家に泊めて貰おうかな……。
注意!!
現在、この作品は書き直しており、今のところここまでが書き直し版です
なので、この先に噛み合わない場所などがあると思いますのでそれが嫌な方は誠に申し訳ありませんが、一旦ここでブラウザバックして貰うのをお勧めします
それでも良い方はどうぞ。なお、若干の設定の変更はあるものの大まかな内容は変更はありません




