初仕事
「じゃあ、さっそく頼みたい事があるんだけどいいかい?」
「雇ってる側なんだろ?遠慮せずに命令して貰って構わねーよ」
あれから一晩たち、王子のもとに呼ばれた。
初の任務だ、ここはバシっと決めたいところだが。
「そう言ってもらえると助かるよ。じゃあ命令させてもらおう。
物流経路にいるモンスターを狩りに行ってほしい」
「物流経路?魔術でパッと転送とか出来ないのか?」
あれだけ日常で魔術が発展してるんだ。それぐらいあってもなんら
不思議ではないんだが。
「それに関してだが、まず転送魔術自体がそれぞれの転送場所同士を接続して
送るものなんだ。そして、現在、各国が警戒状態になっている。
そんな中相手国に瞬時にモノを送れる便利なものがある。
相手国へ攻め込みたい時に君ならどうする?」
「……あー、いくらでも悪用出来るな」
相手側に爆弾送ったり、なんなら兵士を大量投下して街を制圧なんて事も
可能だろう。それなら転送魔術なんぞ使えんわな。
「理由はわかったがモンスターの方はどういうやつなんだ?」
「それがだね、どういうものか具体的にわかってないんだ」
「どういうものか?特徴とかもわかってないのか?」
「それなんだけど、ある報告では蛇のモンスター、ある報告は
群れを成した獣のモンスター、またある報告では人型のモンスター
とまるで特徴が合わないんだ」
確かにそこまで特徴がまばらだと確かに何か絞るのは難しそうだ。
変身系だったり幻を見せる術を使ってくるものだったりを
視野に入れたほうがいいかもしれないな。
「本当に情報はそれだけなのか?」
「あぁ、それだけなんだ。私かラオージュが行っても構わないんだけど
一つ問題があってね、困っていたところだったんだ」
「困ってる?あんたらだったら並大抵のなら敵じゃあないだろ?」
あの二人の魔術の規模は災害級だ。
あくまで生物の延長線上の存在であるモンスター如き敵でもないだろうに
何故困るんだ?魔力に耐性でもあるような相手なのか?
「僕らだと魔術規模は大きすぎるんだ。せっかくモンスターを討伐できても
その経路をつぶしたら本末転倒だろう?」
「そりゃそうだな、使えなきゃ意味が無い」
「だからこそ、君だ。君ならば被害を絞ろうと思えば出来るだろ?」
「まぁ、出来る事には出来るが、期待はするなよ。相手次第じゃあ結果は
同じかもしれないからな」
確かに威力を一点集中とか出来るが相手次第じゃあ限度がある。
相手次第じゃあ周りへの配慮なぞやってられん場合もあるからな。
「わかったよ。では、頼む…前に報酬を前金と言う形で今回は
払わせてもらおうよ。君、お金持ってないだろ?」
と言われて、結構大きめの袋を渡される。
お、結構重いぞ。結構な金額が入ってそうだな。
あの後二人に金がないって言ったらかなり怒られたからこれで
二人にも支払える。気が利く王子様だ、ありがたや。
「それと、もう一つ頼みがあるんだ」
「もう一つ?お使いか何かか?」
「いや、違う。彼女を、騎士隊の副隊長を同行させてほしい」
と言われ、スッと一歩前に出たのはあの時の女性騎士だ。
あー副隊長だったのか。って事を考えると彼女もあいつら並の実力者
だろう。そうでなくとも強い事には変わりはないだろう。
そういう天ではありがたい事なんだろうけど、ああいう人間って変に
プライド持ってて、面倒そうなんだよな。
断ってもいいんだろうけど、変に断って警戒されたりする方が厄介だ。
なら、素直に受け入れておいた方が後々楽かもしれない。
「別に構わないが、理由はなんだよ。副隊長ならば仕事も多いだろう?」
「私と違って彼女は君と関りが少しだけだったからね。騎士と傭兵という
間柄だが、味方であることに変わりはないからここは互いを知って
おいた方が良いと思ったんだ。もしもの時に思考がある程度わかっていた
方が楽だろう?」
確かに同じことを共にする上で一番大事なのは連携だ。その上で相手の思考
を読めるってのは非常に大事な要素になってくる。
この先何があるかわからないからな、相手を知るってのは大事だな。
しかし、旅の同伴として副隊長さんがついてくるとは……。
しょっぱなから大変な任務になったな。
「名乗ってなかったな、私はシャル・フワロ。好きに呼んでくれ」
「そうか。じゃあ、シャル。早速出発するけどいいか?」
「わかった、では行こう。では、隊長。行ってきます」
「あぁ、気を付けてね」
そう言われ、二人で外へ向かう。
構わないとは言ったが参ったな。会話が思いつかない。
別に人と話す事が得意でも不得意でもないから、こういう時困る。
「そう言えば、一つ言っておくことがある」
「なんだ?」
「今回、私が同行するとは言ってもリーダーはお前だ。
だから、時には私にも気がいなく頼みを言ってもらっても構わない」
意外だな。こういうタイプの人間はプライドが邪魔をして
自分が指示するとか言い出すイメージが強かったが…。
「そうか、じゃあ気がいなく無理も言わせて貰おうかな」
「あぁ。そのようなつもりで構わないとも」
良かった、思ってたような奴じゃあなくて。
これなら気がいなく行動できそうだ。




