牢獄と絶対零度その5
自らへの怒りがぐつぐつと湧いてくるが……
「……フ―――…」
大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
心が落ち着いてきたのは良いんだが、凍ったのが原因か寒くなってきた。
体を温めるべくさすりながら、王子に確認したい事を聞く。
「……一つ聞きたいんだが……お前、俺を串刺しにする気だったか?」
「そんな事ないよ、君を凍らせて動けなくする事だけ考えていただけだよ」
「……あの爆発する……氷柱はどうなんだよ」
「この国の最高戦力の一人とその身一つでやりあったんだ。避けれるはずだろ?」
「……はは……試されたってわけか……」
戦法から察していたが、ただの平和ボケじゃねえってわけか。
いや、しかし、寒い、超寒い、凍え死にそうなほど寒い。
意図してないのに体がガタガタ震えて、歯を鳴らすレベルで寒い。
[ケンさん、体温が34度より下回ってますけど大丈夫ですか?]
「ヘッキシッッ!!………超寒い……!!」
必死に体をこすって体温の回復を図るが全く回復しているようには感じない。
マジで寒すぎる、このままじゃ凍死しそうだ。
「寒いのかい?」
「み、見ての通りだよ……超寒い……」
「なら……」
王子がそう言うと光る玉をこっちへ飛ばして来る。
それは俺の近くで留まり、温かく穏やかな光を放つ。
はーーー……あったっけえ……。
マッチ売りの少女の気持ちがめちゃくちゃよくわかるわ、これ。
暖を取っていると風の音が聞こえてたと思うと何かが着地した音がした。
風の音の時点で誰かわかったので無視して、暖を取る。
はーーーーー……あったまるわぁ。
「いやーーー…改めて見たが本当にやべーな、こいつ」
「ハハハ……流石に最後のあれは予想外だったよ。
音が聞こえているなと思ったら、すぐそばにいた時は流石に背筋が凍ったよ」
「絶対凍界の二つ名を持つお前の背筋が凍るか、ハハハハハハ!!」
「隊長!!大丈夫ですか!?彼から一撃貰っているように見えましたが……」
「なんとか防ぐ事は出来たから問題はない、心配してくれてありがとう」
3人が会話していると、流石に若者の速度には追いつけなかったのか
遅れて老人3名が来た。
俺は冷えに冷えた体を温める事に専念しておこう。
「お疲れさまでした、王子。相変わらずの強さですな」
「ええ、終盤の方は展開の速さに年寄りには追いつけませんでしたが……」
「しかし、彼がこれ程の強さだったとは……あれならば文句のつけようはありませんな」
「だとよ、坊主」
「あ、ああ……よ、良かったよ」
随分と暖を取っているはずなのにまだ寒いし、震える。
油断したら凍え死にそうだ。
「……いくらなんでも大げさすぎねえか?流石に震えすぎだろ」
「う、うるせえ……寒いんだよ」
「……もしかしたら、君の体質のせいかもしれないね」
「ど、どういう事だよ……」
「君の体には一切魔力が存在しない。もしかしたら、それが原因で
魔術そのものに対して耐性がないのかもしれない」
「な……んだって?」
……………………マジ?
魔術が横行する世界で魔術に対して耐性がないだと!?
いや、待て、落ち着け。
まだ、推測の域を出ていない。俺って寒がりだし、単純にそれが原因の―――
[……あ、本当ですね。ケンさんの体は魔術に対する耐性が全くありません。
普通の人より2倍……いや、3倍は多く効果を受ける、そう思った方がいいですよ]
…………嘘だと言ってくれよ。
この世界でそれはマジで洒落にならねえって。
ハードモードどころかベリーハードだよ、こんなの。
この先の事を考えるだけで胃が痛くなりそうだ……
体も冷えてりゃ、心は極寒地獄だ。
「まだ寒いかい?」
「温まってはいるが、まだ寒い……かな」
「……効果が薄いと言う事は、体の芯から冷えてるようだね。
副隊長、すまないが温かい飲み物を彼に持ってきてくれないか?」
「わかりました」
そう言って、副隊長はどこかへと走っていった。
うう……寒い……。
「ラオージュ、彼が温まり次第、彼と一緒にソラの下に行っていてくれないかい。
君、この後予定無いだろ?」
「確かにねえが……まぁ、いいよ」
「では、私はやるべき事があるから先に行かせて貰うよ」
「へいへい」
王子は3人の老人と共にこの場から去り、入れ替わるように
副隊長が水筒の様な筒状の何かを持ってきた。
そして、上の部分をくるくると回して取ってそこに中身を注いだ。
中身は注がれると湯気を立ち昇らせていて温かい事をアピールする。
「お待たせした、これだ」
「あ、ああ……ありがとう」
受け取って、ゆっくりと口へと流し込む。
味は紅茶のような烏龍茶のようなそんな感じの味だ。
そんな味で楽しませてくれた飲み物は喉を過ぎていき
その熱をじんわりと体全体へ広がらせる。
体の芯まで温まるとはまさにこの事なんだろうな……。
口を話すことなく飲み切り、ふぅぅ……とゆっくりと息を吐く。
「あっったかけぇ……」
「そうか、満足して貰えたようで何よりだ。
お代わりが欲しいのなら、自分で頼むぞ」
そう言って、地面にコツっと音を鳴らしながら水筒(仮)が置かれる。
もう一杯飲みたくて、それを手に取って傾けると出て来たものは湯気を立てない。
その事に疑問を抱きながら、口をつけると冷たかった。
「……冷たいんだが?」
「何を言っている、刻印術を刻んであるんだ。冷たいわけが―――」
「ねえちゃん、刻印術は魔力流さないと機能しねえんだぞ」
「………そうか、お前は魔力が無いんだったな。すまない」
「刻印術ってなんだよ?」
「刻印術ってのはな、魔術を物に刻む技術だ。こいつをしておくと
魔力流すだけで魔術使えるからこんな感じで術を展開する手間が無くなるんだ」
ラオージュは魔法陣を描きながら説明してくれる。
って事はその水筒には中身を瞬時にあっためる術が刻まれてるって事か。
「……言っていて気づいたけど、水道とかコンロに刻印術が使われてるから
こいつ、使えねえよな」
「……確かに魔力がない以上は使う事は出来ないな」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!?それらが使えねえって事は
俺、日常生活満足に送れねえんじゃないのか!?」
「残念ながら……そうなると思う」
「ああ、可哀想にな」
二人から同情の眼差しを向けられる。
……………マジで、マジで使えないの?
俺は自分で水を出して手を洗う事も、火をつけて飯を作る事も出来ねえの?




