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刑罰と食事とこの街と、その1


「アーシェに言われたんだが、これからその凹んでる坊主とソラちゃんとこ

行くんだが、ねえちゃんも来るか?」

「………ッ…いや、私もまだ仕事がある。だから、遠慮しておこう」

「そうか、じゃあ仕事がんばれよ」

「…ふっ、貴様に言われなくともするとも。では、失礼する」


コッコッコッ……と音を鳴らしながら、副隊長はこの場を後にする。

対する俺はいつまでも項垂れているわけにはいかないので大きく息を吐いて

顔を勢いよく叩いて、気持ちを入れ替える。

その、刻印術とかいうのが使われてないのもあるかもしれないし

風呂なら最悪ドラム缶風呂みたいなのに入ればいいしな、うん!!


「さっき、言ってたソラチャン…?って誰でどこに行くんだよ?」

「ソラちゃんってのはアーシェの妹さん、ようは王女様だから

無礼な事をすると処されるぞ?」

「ま、まさか……冗談だよな?あの王子の妹だろ?」

「冗談だって、兄貴と一緒で良い子だよ」

「そ、そうか……よかった」


俺が知っている王女様とかドぎつい、童を見るとは何者じゃ無礼者とか

言いそうな感じってイメージあったからいい子って聞けて良かった。

とりあえずは一安心だ。


「で、どこに行くかはアーシェんちだ。この建物の一角がそうなってんだよ」

「王族が住まうって……ここってもしかして相当広いのか?」

「ああ、結構広いぞ。大体、一軒家……8つ分はあるんじゃねえかな。

まぁ、使ってんのはそのうちのほんの一部だけどな」


そうなのか、結構広々と浸かってるもんだと思ってた。王族だし……

しかし、そうなるとどんなところに住んでるのだろうか。


[住んでる範囲は狭いですけど、凄くきらびやかしてそうですね]


だなー……凄く気になる。どんな感じなんだろうか

そんな期待に胸を高鳴らせながら、王族の住まう場所へ向かう。

そんな向かっている途中で良い匂いが漂ってきた。

匂いを嗅いだためか、急に腹の虫が騒ぎ出した。


「随分とでかい音だな、坊主」

「……そういや、ここに来てからなんも食ってねえからなぁ」

「ほう、初めて食うのがソラちゃんの手作りか。贅沢だな、坊主」

「そういうのは使用人がやるんじゃねえのか?」

「アーシェんとこはな、使用人とかつけずに自分らで家事してんのよ。

王族らしくねえだろ?」

「確かに俺の中のイメージと全く違うな」

[意外ですねえ、私も王族って色々見てきましたが大抵は使用人やらメイドが

いたもんですが……]


って事はあの王子がエプロンつけて、朝飯とか作ってたりするってわけか……

さぞ女子受けしそうだ。

なんて事をラオージュと話しながら匂いがする方向へと進んでいく。

良い匂いが強くなればなるほど、腹の虫が刺激される。

今、襲撃されたり、罠にかかったりしたらやばいかもしれん。

なんて思うぐらいに頭の中では飯の事ばかり考えているとラオージュは

ごく普通の大きさの扉の前で足を止める。

え、ここが入り口なの!?俺が思い浮かべる一軒家の玄関の扉と大きさ大差ないぞ!?

俺が呆気にとられるとラオージュはノックの一つもせずに扉のノブに手をかける。


「ソラちゃーん、入るぞーー」


…………何してんの、こいつ?

無礼者ってレベルじゃねえぞ、何かこう、変な事してたらどうするんだよ。


「え!?ラオージュさん!!?」


部屋の奥から女の子の驚いた声が聞こえてくる。

そりゃ、知っている男とは言えいきなり入ってきたらびっくりするだろう。

バタバタとした音が聞こえた後に女の子が奥から出てくる。

王子と同じ髪色に綺麗な顔立ちをしていて、身長も大体155あるかどうかぐらいかな?


「良かった、目を覚まし――……ラオージュさん、そちらの方って……」

「ああ、俺と倒れてたやつ」

「やっぱりそうですよね。良かったぁ、そちらの方も重傷だったんで心配してたんですよ。

今にでも死にそうで……あっ!?すいません。まだ、自己紹介もしてませんでした。

私はソラ・シオナンと言います。ソラと呼んで貰えると嬉しいです」

「俺はケン・ミヤモトって言うんだ。よろしく、ソ…ソラ」

「はい、よろしくお願いします」


なんか、女の子を名前で呼ぶってなんか照れ臭いな。


[耳を赤くしちゃって、相変わらず初心ですね。ケンさんは]


…うるせえ、同年代でも基本的に苗字を呼んでたんだよ、俺は……

ん、ちょっと待て……


「なんで、ソ、ソラは俺らがそんな怪我したの知ってるんだ?」

「それは私がお二人を治療したからですよ」

「毎度毎度、ボロッボロになるたびに治してくれてありがとな」

「本当ですよ、毎回言ってますけど気を付けてくださいね。

私は生きてる限りは治せますけど、死んじゃったら治せないんですから。

ケンさんも気を付けてくださいね」

「あ、ああ…気を付けるよ」


頭に怒りマークがついてそうな剣幕で言われて流石に押される。

こんな、俺より年下の高校生ぐらいの子が治したのか……凄いな、魔術は。


「それで、お二人は何故来られたのですか?」

「飯に誘われたんだが、アーシェから聞いてねえのか?」

「何も聞いてないですけど……もう、兄さんは……」


そう言って、ため息を吐くお……ソラ。

王子、しっかりしてそうなのに案外抜けてるのかもしれない。


「用意出来てないみたいだし、帰った方が良いんじゃ……」

「いえ、ダメです。せっかく来て貰ったんですから、ちゃんと用意しますので

中で待っていてください」

「だってよ、入ろうぜ」

「あ、あぁ……」


ラオージュに引き続いて、俺も足を入れる――

前に中を見渡すが、特に王族が住んでそうな煌びやかな感じではなく

今まで歩いて来た廊下と洋装に違いはないように見える。

何より、罠らしきものは見受けられない。


[特に罠のようなものは見受けられませんね。ただ、至る所に刻印術なるものが

刻まれてます。刻まれているものを見る限りは照明だと思われます]


アンジュがそう言うって事は大丈夫と言う事だろう。

警戒を一段階解いて中へと足を進める。

一軒家の廊下と大して変わりのない廊下を潜り抜けて出た部屋は

リビングにしては広いなぁ…と思う程度の広さだった。

花が飾ってある程度で別に毛皮が敷いてあったり

首が飾ってあったり、煌びやかなシャンデリアが吊るされてあったりはしない。

置いてある家具はソファーにでかいテーブルに6つの椅子、最後に本棚がある程度だ。

思っていた以上に質素だった。正直、言われなきゃ王族が住んでるだなんて

とても思えないぐらいには……


「どうした、期待外れだったか?」

「いや、そんな事はねえよ」

「そうか……じゃあ、俺らはのんびり待つことにしようぜ」


と言いながらラオージュは何も言われてないのにソファーへ腰を下ろす。

旧知の仲だろうけど、それでも何も言われてないのによく座るな、こいつ。


「ケンさんも自由に寛いでもらっていて構いませんよ」

「あ、あぁ、そうさせて貰うよ」


既に先客がいるソファーにいくのもあれなので俺はテーブルの方の椅子へ座る。

ソラが匂い漂うキッチンの方へと足を進めていったせいで

ラオージュと全く嬉しくない二人きりになる。

特に話題もあるわけもなく、ただただ、時間が進んで行く。


[彼と何か話さないん―――]

「グゴォ―――……」


ソファーからいびきが聞こえて来た………あいつ、寝てんのか?

見れば、上を向いて口を開けて爆睡していた。

友人の妹に飯の用意して貰ってるのによく寝れるな、あいつ。

なんて馬鹿にしたいが、ただ座っているだけの俺も似たようなもんだ。


「手伝いに行くか……」



立ち上がって、ソラが行った方へ行く。

料理は正直、焼くぐらいしか出来ないが皿を運ぶとかぐらいは出来るからな。

そんなのでも手伝った方が良いだろう。
























「(……これだけ好き晒して特に怪しい行動してねえって事は真に白ってとこだな)」



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