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牢獄と絶対零度その3

力を貸すと言った以上、。

牢から出た俺と風野郎のラオージュはマシマシ王子と副隊長の後をついて行く。

牢を出た先の扉を抜けると広くながーーーーい廊下に出た。

壁は大理石のような白に模様が入っている。

軽く触れてみるとつるつるしており、目を向ければ指紋汚れのようなものも

見当たらなかった。恐らくはかなり丁寧に掃除されてるんだろうな。

他の構造を見る限り、建築技術や文化は特に俺が元いた世界とは

大した差はないところを見るに同じ人間である以上行きつく考えは一緒なのかもな。


[凄い綺麗ですねえ、まるで神殿ですね]

「……ああ、欧米の王族が住んでそうだ」

「何をしてんだ、坊主」

「……ちょっと見てただけだ、気にしないでくれ」


2人の後に続いて、廊下を歩いていく。

白い壁にいくつもついている窓も見た事のある形をしている。

こういう世界に行く小説をいくつか読んだ事はあったが、それらの世界の

建物とか構造とかどうなってたんだろうか、来る側になると気になるな。


「さっきからキョロキョロしてるが、お前から見て珍しいもんでもあるのか?」

「いや、別にそういうものはないかな」

「そう言うって事はお前が元いたとこと大差がねーわけか」

「……お前らは俺が別の世界から来たって言うぶっ飛んだ話を本当に信じてるのか?」

「心の底からは信じてはないが、お前の体質、記憶喪失にしては足りない知識

スパイとかにしては抜けてる点、そしてあの事件、それらを踏まえて考えれば

十分あり得る話だなって思ってるよ」

「色々、聞きたい事が出来たがまず、事件って何があったんだ?」

「これを知らねえのか……こりゃ、確定だな」


ラオージュはニヤリと笑いながらそう言った。

さっきもそうだったが、情報不足過ぎて常識が全く分からん。

なんで言語は入れてくれて常識は入れてくれないんだよ。アンジュ


「事件の事だが、俺とかアーシェが生まれてるか怪しいぐらいの時に事故で

別の世界と繋がったんだよ」

「は………?」

[マ、マジですか!?そんな事聞いた事ないですよ!?]


なん………だと!?

偶発的とは言え、別の世界と繋がった事があるとかこの世界の技術はどうなってんだ?

明らかに俺が元居た世界よりも技術力上じゃねえか。

こういう世界の文化、技術は中世ヨーロッパぐらいだって相場が決まってるだろ!?


「で、その時に別世界の怪物がこっちに来て、暴れに暴れていきやがったんだ。

そのせいで被害を受けた国と受けてない国とで格差が生まれちまってな」

「もしや、それが原因で王子が言ってたような世界情勢になってるってわけか?」

「そゆこと」

[それは……解決までに数年はかかりそうですね]


俺は数年どころか2桁は固いと踏んでるがな……。

目的達成までの年月を考えれば考えるだけ鬱になる、凹む。

いつになったら俺は元の場所に戻れるんだろうか……

なんて思っていると前を歩く二人の足がでかい扉の前で止まる。


「ふぅ……さぁ、行こうか」


大きく一息吐いた王子が扉を開き、それに続いて部屋へと入っていく――

前に踏みとどまり、部屋全体を見る。

特に仕掛けらしいものは見当たらないな。

視覚状での安全を確認したところで部屋へと入っていく。

部屋には年取ったふくよかなハゲと細い眼鏡と杖を突いた白髪の爺さんがいた。

3人ともこちらへ向ける目線はとても王子に向ける者とは思えない。


「ようやく目覚めましたか、そちらの金食い虫は……」

「そうは言ってやらないでくれ。彼だって故意的にやったのではないんだ」

「故意などは関係ありません。毎度毎度の被害が洒落になってないんですよ!!」

「そうです、見ましたか。今回の被害額を!!」


雰囲気こそ嫌な老害ってとこだが、言ってる事は全く間違ってない。

俺が見ただけでも畑一つと森を吹き飛ばしたりしてるからなぁ。

それの被害額だなんて凄まじいに決まってる。

更に毎度毎度って言ってたところから何回かやらかしてるんだろうから

お前、またやったんか!?ってキレるのは至極真っ当のものだろう。


「そこに記載されている金額は過剰なものだ、この国ならば額を押さえる事が出来る。

具体的に表すならこの程度になるだろう」


王子が魔法陣を展開すると大臣っぽい3人の手元に魔法陣が出現する。

そうやって資料を渡せるのか、魔術は便利だなぁ。


「確かにこれならば半額近くにまで抑えられますが……国が払うのですか?」

「国が出すのは私は反対ですよ」

「その分、ラオージュの来月の給料を削るからそれは問題ない」

「はぁッ!?お前、マジかよ!?この前も分割するからって減額したじゃねえか!!」

「何をわめいている、貴様。今、予算はカツカツなんだ。

本来、出さなくても良い金を出さなければならなくなった以上はどこかを削るのは

至極当然の話だろう」

[当然の話ですね]


全く間違ってない当然の話だ、そう思いながら同意のために頷く。

誰も間違った事は言っていない。


「それに貴様の給料は私より遥かに高いんだ。多少削られても痛くはないだろう」

「もう痛くなるレベルまで削られてんだけど!?」

「それは君の自業自得だ、諦めてくれ」

「マジかぁ……」


肩を落として落胆するラオージュ。

騎士団の副隊長より給料高いってこいつ、いくら貰ってんだろうか。

いつかいなくなる以上、あんまり金には興味ないがいくら貰ってるかは気になるな。


「他に今回の件に関しての話はあるかな?」

「彼に関してはありませんが、彼の隣にいるあの青年が気になります。

彼は何者なんですか?」

「彼は今回、ラオージュと渡り合った青年だ」

「なッ!?」

「ッ!!!!」

「そ、それは本当ですか!!!!」

「ああ、本当だ」


3人の反応を見るにこいつ、やっぱりメタクソ強いのか。

良かった、1面中ボスレベルとかじゃなくて…本当に。


「そ、そんな青年を何故にここに連れて来たのですか?」

「彼をこの国に戦力として迎え入れる事にしたのでその報告として連れて来たんだ」

「な、なんですと!?」

「ほ、本気ですか!?それを父上は知っておられるのですか!?」

「どこの馬の骨かもわからぬものですよ!?いいのですか、どこかの国のスパイや

工作員だと言うのも十分にあり得るのですよ」

「一つ一つ答えていこう。まずは父はこの事は知らないが、

任されている以上、決めるのも責任を取るのも私だ。確認を取る必要はない。

次についてだが、これに関しては私と副隊長、ラオージュの三人で

取り調べをした上で問題ないと判断した」


ここで俺の事で別世界の住人だ、だの言い出したらより騒ぎになりそうだからか

ごり押しに等しい理由付けしてるな……。

だが、3人の妙に納得した表情を見る限り、この3人は相当信頼を置かれているようだ。

そりゃ、騎士隊の隊長と副隊長とめっちゃ強いやつだから当然か。


「で、ですが、私達は青年の実力がいかほどのものかみておりません。

彼と渡り合ったと言うだけで相当ものだと想像は着きますが……どうしても

この目で見ない限りは納得できませぬ。現に……ッ!?」


杖を突いた方が意見を述べながら魔法陣を弄っていて、急に固まった。

どうかしたのか?


「な、何故……彼からは魔力を感じられないのでしょうか」

「「ッ!!!!」」


その発言を聞き、二人が信じられないものを見るかのような顔をしてこっちを見る。

なんか、化け物扱いされてるようで気分悪いな。


「落ち着いてくれ、彼はそういう体質なんだ」

「そ、そんな人がいるのですか!?ステルスを使っているのでは……?」

「そうでなくとも、操られてるなんて可能性もありますよ」

「それはない。ステルス魔術はこの距離では機能せず、それらの魔術は

対象の者に魔力が無いと機能しない。その事から彼から白だ」

「しかし、問題がなのはわかりましたが、魔力がない者に彼を倒せるとは

到底思えません。出来れば実力の方を見せてほしいのですが」

「わかった、なら……」


王子は振り向き


「ケン君、悪いが私と一戦交えてくれないか?」

「…………は…?」


予想の斜め上すぎる事を言い出した。

そんな発言に思考が追いつかず、素の反応が出てしまった。

え、マジで何言ってんの、この人。


「あ、えっと………なんで?」

「ラオージュを倒した、崖を破壊する身体能力、私達はこの二つしか知らないんだ。

なら、ここで一目で見ておきたいんだ。いいかな?」

「別に良いんだが……やるってなら保証は出来ねえぞ」

「それで良い、全力で来てほしい」



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