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高校生の俺が、妊娠させてしまった恋人を幸せにすることは出来るのだろうか?  作者: ミソネタ・ドザえもん
第二章

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8/11

8.内見の予約

「まず、俺達はこれから子供と一緒に部屋で暮らすことになる。であれば、子供の夜泣きとかで騒音トラブルが発生する可能性が考えられる」


 俺はシャープペンシルをノートに走らせた。


「というわけで、木造ではなく鉄筋コンクリート造の部屋。これが一つ目の条件」

「……ほへぇ」

「次に……室内に洗濯機置き場がある部屋。しばらくは子育てと学業で忙しくなるだろうし、夜に洗濯機をかけられる環境の方がいいだろう」

「……なるほど」

「後は、最寄り駅は家のそば。駅からの徒歩距離は……妥協してもいいか。最悪、親に送迎を頼もう。あ、後は産婦人科が近くにあった方がいいな」

「……ふぅむ」

「……後、ここまでの条件も譲れないが、一番譲れない条件がある」

「……それは一体?」

「二階以上」

「どうしてです?」

「どうしてって……決まってるだろう」


 俺はシャープペンシルの後ろの部分を額に数度当てながら続けた。


「一階だと……泥棒とかに狙われやすいだろう。こんなにも可愛い奥さんがいる部屋だぞ。下着とか盗まれたら大変だし……そもそも、お前の身に何かあったらどうする」

「……!」


 白石はハッと息を呑んだ。


「さ、酒井君!? 日頃はつっけんどんな酒井君!? 今……今、なんて!?」

「は?」

「今、なんて!?」

「なんてって……お前の身に何かあったらどうする」

「酒井君! こういう時は、まずはあたしの望む答えを言わないことがお約束なんですよ!?」


 さっきから白石の奴、一体どうしたんだ?

 よくわからないけど、一旦無視することにしよう。


「……後は、三人暮らしなことを考えたら部屋の広さは2LDKくらい欲しいよなぁ。で、一番忘れてはいけないのが家賃か」


 ここまでの条件をスマホに入力した結果……。


「う……」


 いくつかの物件が表示されるものの……家賃六桁以下の部屋は一件も見つからなかった。

 さすが都内、物価だけでなく賃貸金も馬鹿にならない。


 ……それにしても。

 最低十数万の家賃。

 子供の養育費。

 俺達の大学資金。

 ガス電気水道代。

 スマホ通信料。

 ……その他、諸々の出費。


 一千万円程度の資産、使っていくだけではあっという間に消えるな、こりゃあ……。


 学業、子育てに並行して、アルバイトもやらないとまずそうだ。


「……酒井君?」

「は……っ」

「どうかしましたか? 顔色が悪いみたいですが……」


 将来の不安に頭を悩ませていたら、一瞬で白石に見抜かれた。

 隣にいる白石が、不安そうな顔で俺を覗いていた。


「……なんでもない。安心してくれ」


 俺は白石に向けて、気丈に振舞ってみせた。

 これから俺は、一家の大黒柱になる。

 そんな俺が、彼女を不安にさせるわけにはいかないだろう。


「……とりあえずもう少し絞り込むか」


 俺は特に家賃を考慮に入れて、表示されている物件を吟味した。

 吟味すること三十分。

 最終的に、入居候補の物件は三軒にまで絞り込めた。


「……気付いたらたった三軒になっちゃいましたね」

「そういうもんじゃないか? 最終的には一軒になるんだし」

「確かに」


 白石は微笑んだ。


「それで、物件を絞った後はどうするんでしょう?」

「ここに内見予約ってあるだろう」

「ありますね」

「後は……この物件を取り扱っている不動産屋に連絡して、内見の予約をすればいいだけだ」

「なるほど。三軒を実際に見せてもらって、そこから住む一軒を決めるということですね」

「ああ」


 俺は頷いた。


「というわけで……今週末、内見の予約を入れよう。早めに契約をしないと、別の人にこの部屋を取られてしまうかもしれない」

「それは大変」

「うん。じゃあ、今週末、予定を空けておいてくれ」

「……うふふ。なんだかデートみたいですね」

「デートよりも地に足ついた大切なことだけどな」

「あら、酒井君。あたしとのデートは大切ではなかった、ということですか?」


 白石は頬を膨らませていた。


「そ、そういうことじゃあない……」

「……なら、あたしとのデートは何だったんですか? ちゃんと言葉にしてほしいです」


 ……白石は丁寧な口調をする心優しく誠実な女性だ。

 だからか、時折、今のように……俺に言葉での表現を求めることがある。


 しかし、不思議なことに……言葉での表現は曖昧やいい加減なことを言えないからか、とても気恥ずかしい。


「……大切だった、というより、幸せな時間だった」


 というわけで、俺はわなわなと口を震わせながら、恥ずかしいことを宣った。


「ふふ。あたしもです」


 しかし、白石は俺の答えに満足したらしい。


「それじゃあ、今週末、よろしく頼むよ」

「はいっ!」


 元気いっぱいの白石の返事を聞いた後、俺は三軒の物件の内見の予約を入れた。

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