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高校生の俺が、妊娠させてしまった恋人を幸せにすることは出来るのだろうか?  作者: ミソネタ・ドザえもん
一章

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5/11

5.法律

 恋人である白石の妊娠発覚から数日、毎日のように関係者に対する説明、説得をしていた俺達だったが、今日でようやくそれもひと段落させられそうな気がする。


「晃、行くよ」

「うん」


 今日、俺達が説明に向かっている先、それは俺達が通う高校。

 ここまでの説得先は、俺と白石の二人のみで赴くことが多かったが……今回ばかりは両両親も保護者として一緒に参加してもらうことにした。

 学校という組織を相手取るにあたり、未成年の子供だけでは少しばかり誠意に欠ける気がしたためだ。


『うん。いいよ』


 学校への説明に同行してほしいという俺の願い出に、父は快く応じてくれた。


「うーん。悩むねぇ」


 しかし、学校訪問当日、父は悩んでいる素振りを見せていた。


「基本的には俺が喋るから、そんなに悩まないで大丈夫だ」

「え? 何のこと?」

「……今日の学校側への説明の事で悩んでいたのではないのか?」

「え? あはは。そんなわけないだろう」


 父は笑いながら、スマホの画面を俺に見せてきた。

 画面に映っていたのは……通販アプリの購入画面。


「どっちの赤ちゃん服の方が可愛いかな?」


 ……俺達の妊娠で一番浮かれているの、もしかしたら俺の父かもしれない。


「まだ気が早いよ、父さん」

「えー、そうかなー?」

「……あと一か月後にスーパーセールがあるから、その時に両方買おう」

「その手があったか……」


 そんな一幕を経て、リラックスムードのまま、俺達は学校へ。

 今更ながら、時刻は午前十時頃。

 通常であれば既に授業が始まっている時間に保護者連れで学校に向かった理由は、保護者付きで登校している姿を周囲に見られ、訝しげに見られるのを避けるためだ。


 まあ、俺個人としては別に周囲に訝しげに見られることは問題なかったが……白石の立場を考慮すると、この選択は正しかった気もする。


 そんなわけで今朝、俺達は担任の先生に遅刻、かつ保護者付きでの登校を連絡し、今の時間に学校に向かうことになった。

 

「初めまして。酒井晃の父です」

「あ、これはどうも」


 俺達の父親の出会いは、学校の校門前だった。

 社会人経験が豊富な両親は、これから商談でも始めるかの如く、低姿勢でのコミュニケーションを図っていた。


「それじゃあ、そろそろ行きますか」

「そうですね。行こう、二人とも」

「うん」

「はい」


 俺と白石は両方の父の後に続いた。

 まもなく職員室に保護者付きで入ると、丁度今は授業中ということもあって、俺達の担任以外はほとんど出払っていた。


「……それじゃあこちらへ」


 同級生男女と、その父親が一緒に学校に来た。

 既にこの時点で、担任の先生としても思い付き節があったのだろう。

 ……報告後の処理のことを既に煙たがっているのか、先生の顔は暗かった。


「……というわけでして、お手数ですがこれからもこの子達のサポートをしていただけますと」


 ……基本的には俺が喋る、と先に父に言っていたのだが、俺の父がここぞとばかりに出しゃばってきたせいで、結局俺、白石は無言を貫くことになった。


 父達の話を聞いた後、先生は『やっぱりか』と言いたげな顔を作って、取り繕うこともせずにため息を吐いた。


「……とりあえず、あたしの一存だけではなんとも出来かねますので、一度協議をさせていただけますでしょうか」

「勿論です。この場で答えをもらえるような内容ではありませんので」

「……ただ、この子達の進学意思は固い。聞けば学年順位一、二位らしいじゃないですか。有名大学の進学だって夢じゃない。このタイミングでこの達を退学させて失って、有名大学合格実績を失うのは惜しいのでは?」


 一々、先生に圧をかけて、嫌な大人達である。


「……検討します」


 先生は貧乏くじでも引かされた気分だろう。

 可哀想に。

 まあ、俺達のせいなんだけど。


「今日のところは帰ろうか。君達は授業、どうする?」

「え?」


 父の問いに、俺は考えた。


「……まあ、出るか」

「さっきのやり取り、言いたいことがありそうだったけど、君も大概、面の皮が厚いよね」

「おいおい、そんなに褒めないでくれ」

「それじゃあ、僕達は帰るから」

「授業頑張ってね」

「……あの」


 学校から去ろうとする両父を俺は呼び止めた。


「……今日はありがとうございました」


 そして、二人に向けて頭を下げた。

 先日、父に向けて、子が親をサポートするのは当然だと迫った俺だが……その逆として、サポートしてもらった日にはキチンとその礼をする。

 それもまた当然のことだと思っていたのだ。


「頑張ってね、色々と」


 父は笑っていた。

 学校側に妊娠、出産意思を伝える緊張の一日だったはずだが……彼らのおかげで、今日は和やかなムードで過ごすことが出来た。


 本当に、感謝で胸でいっぱいだ。


「あ、ただ一つ言わなきゃいけないことがあったことを思い出した」


 ほっこりとした気分の中、父は何かを思い出したらしい。


「二人は結婚する意思は固いの?」

「え?」

「え?」


 俺と白石は、顔を見合わせた。

 そして……頬を染めて、目を逸らして。


「うん」


 照れ臭そうに、頷いた。


「そっかそっか」


 父はうんうん、と頷いた。


「無理だよ」


 ……。


「えっ」

「えっ」

「君達の結婚、無理だよ」


 父は動揺する俺達に向けて、また同じことを言った。

 この期に及んで、突然、こいつは一体、何を言い出すんだろう。

 

 ……子供を産むのは認めるが、結婚は認めない。

 そういうことなのだろうか?


「ああ、違う違う。僕だって君達の結婚は賛成だ。……だから、結婚をさせない、じゃなくて結婚は無理って言ってるのさ」

「……何を」

「君達、まだ十七歳だろう」

「……」

「だから、君達はまだ法律的に結婚できないよ」


 ……。

 …………。


 ……そうだった。

一章終了です



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