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高校生の俺が、妊娠させてしまった恋人を幸せにすることは出来るのだろうか?  作者: ミソネタ・ドザえもん
第二章

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10/11

10.親

「ただいま」


 家に到着すると、香ばしい香りが鼻腔をくすぐった。


「おかえり」

「ただいま」


 キッチンの方へ行くと、今日は母が珍しく早くに帰宅していた。


「今日はパート終わるの早かったんだな」

「えぇ。そうねぇ」


 調理をしながら、ながら会話を繰り広げる母の返事はどこか軽い。

 

「……今日、父さんの帰りは?」

「んー? そろそろ帰ってくるんじゃない」

「そっか」


 俺は一つ咳払いをした。


「実は、また相談したいことがあるんだ」

「……またぁ?」


 さっきまで生返事だった母の声が、わかりやすくうんざりげだった。


「ただでさえ、この前の妊娠報告で疲弊したってのに。まだあたし達を追い込む気? これもうマザーハラスメント。マザハラよ」

「変な造語を作るな」


 俺は思わず突っ込んだ。


「ああ、いや……相談する立場なのに、偉そうな口を聞いてごめん」

「……ふう。気にしないで。それで、相談って何?」

「……」

「何。お父さんもいないと駄目な感じ?」

「そういう……わけでもないような、あるような」

「何よ、曖昧ね」


 ……まあ、母だけでも大丈夫、か。


「実は……今日、白石と今後のことを話し合ったんだ」

「今後のこと?」

「そう。……子供が出来るにあたって、どこに住むかって話だ」

「……どこって」

「それで……マンションの契約をしようと思ったのだが、内見の予約の時点で断られてしまってな。途方に暮れていたんだ」

「……なるほどねぇ」


 母は俯き、一旦調理をする手を止めた。


「晃、一ついい?」

「何」

「あんた、この家を出ていくつもりだったの?」


 心底意外そうに母は尋ねてきた。


「ああ。……だって、迷惑だろう?」

「迷惑?」

「……子育てを始めたら、夜泣きだったりなんだったり、毎日が騒がしくなるじゃあないか。確かに、この前は子育てのサポートをしてほしいとは言ったが、二人に迷惑をかけたいと思っているわけじゃないんだ」

「晃、あんた、なんだか誤解をしているみたいだけどさ」


 母は呆れたため息を吐いた。


「あたし達、あんた達の子育てのサポートが迷惑だなんて一度でも言った?」

「……言ってない」

「でしょ。なんでだと思う。迷惑じゃないからよ」


 なんでだと思う、と言いながら、先に答えを教えてくれた。


「……晃、あんたはいつも一人で突っ走りすぎ」

「そうだろうか」

「そうよ。……物件を探してみて費用が嵩むこととかに気付いて、内心焦ったりしたんじゃないの」

「まあ、アルバイトは必要だとは思っていた」

「ほら見なさい。……つまりさ、何が言いたいかってさ」


 母は俺の肩をポンと叩いた。


「不動産屋なんか行く必要ない。子供が生まれた後も、三人でこの家に住みなさいよ」


 ……母ははにかんだ。

 そんな母のはにかみを見ている内に、俺は自分の視野が狭くなっていたことに気付かされた。


 ……普通に考えればそうだ。

 まず、物件を探そうとする前に……親に相談するべきだったんだ。

 子育てにかかる費用は膨大だ。

 その上、俺達は大学進学も目指している。

 費用も、時間も……将来、目指すものを得るためには、自分達だけの力ではどうにもならない現実には、少し前には気付いていたはずなのに。


 ……子供が産まれた後も、この家に住む。

 両親に庇護してもらう。

 一児の父親として、親離れできない状況は恥ずかしい。


 しかし、その羞恥から逃げ出すために、白石や子供に悲しい思いをさせるのは間違っている。


「……駄目だ」


 理屈ではわかった。

 しかし、俺は首を横に振った。


「なんでよ」

「……つまりさ、母さんの要望を聞くと、白石をウチに住まわせるってことだろう?」

「そうね。婚姻届は出せていないとはいえ、あなた達事実婚なわけだし」

「……だから、ちゃんと話さないと」

「ん?」

「白石の親に……彼女をくださいって、話さないと」


 母は……目を丸くしていた。


「そうね」


 しかし、少しして肩を竦めてみせた。


「男としてのけじめ、ね」

「ああ」


 俺は頷いた後、白石家への挨拶をどんな感じにするかを考えて……一つの仮説に行き着いた。


「なあ、母さん」

「何?」

「もし……白石家がさ。……俺と白石の同棲を認めない、という場合は一旦無視して。俺が、彼女の家に住め、とそう迫ってきたら……母さんはどうする?」

「……そうねぇ」


 母は顎に手を当てて、しばらく唸った。


「……どうもしない」


 しばらくして母が導いた答えは……。


「あんたに任せる。最終的に、あんたの人生を決めるのはあたし達じゃないからね」


 ……一見すると、放任主義、ともとれるそんなものだった。

 しかし……俺は、これまでの人生で一番、母への深い感謝を覚えた。


 未成年でまだ学生の息子を他人の家に住まわせる。

 その最終決議を、当事者本人に委ねる。


 ……未成年であるからこそ、保護者の立場で、その選択を選ぶことは難しい。


 未成年の犯したミスは、最終的に保護者のミスということになるからだ。


 ……そういう未成年という足かせが、人生を決める大事な局面で足を引っ張ることは、ここ数日で散々味わったからか。余計にそう思えて仕方がない。


 だからこそ、母のしてくれた選択は……。


 俺を一人の大人として認めてくれている、とも取れるもので、俺は嬉しかったのだ。


「……ありがとう」

「いいえ。それじゃあ、今週末、白石さんの家に三人で行きましょう。それで、今後のあなた達の生活拠点について、話し合いましょう」

「……うん」


 こうして、俺は週末の予定を……不動産屋物件の内見から、白石家の訪問へと変更した。

 そして、白石家で俺達の将来を語り合い……。


 ……おおよそ二週間後。


「……あの、今日からよろしくお願いします」


 白石は俺の実家での生活をスタートさせた。

2章終了です


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― 新着の感想 ―
シリアスタグが先頭にあるのが目に留まって来ました。コンセプトなだけあって流石に読み応えが凄い!今の世の中の多様性は追い風かもだけど最低でも大卒以上の肩書きが無いといい就職は厳しいのは向かい風か。少なく…
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