ep.97
場所を変えたからか、陽が沈んできたからか、接敵する魔物にも変化が見られた。場所が東門付近だからか、ファンタジー生物が増えているんだが、中には初見の魔物も。小型だが、翼があって空に浮いているやつ、なんだか薄ぼんやりした、非実体の幽霊っぽいやつ。浮いている相手はコウモリ以来だろうか?正確には、コウモリはぶら下がっていた記憶があるから、初めてかも。魔法にホーミングがあってよかった。【水魔法】が使えれば、もっといいのに。
タンクは疲れ知らずで、見張りをしながらも、敵を寄せつけない。さすが、鍛えているだけある。俺の戦力チェックも兼ねているのか、こちらに移ってからも、時折、魔物をわざと見逃して、俺に流してくれる。ありがたくはあるんだが、ほぼ初見なんですよ。やられる可能性ありますからね。
「ひぇっ。」
ゴブリンに殴りかかられたところを、間一髪回避する。危なかった。ウサギなんかと同じで1発でいけるだろうと思っていたんだが、耐えられて、反撃されてしまった。ゴブリンが棍棒を力任せに振り下ろしただけだったから、なんとかなったな。棍棒の使い方に慣れた個体とかいるかもしれない、注意しなければ。それに一撃で倒せないというのも面倒だ。マッドボールのCT上がるまで、回避を続けなければならないし。最初についた嘘が尾を引いている。嘘なんか、つくもんじゃないな。
ゴブリンは計2発のマッドボールで沈んだ。MP調整すれば、1発でいけそうだな。そして、ウサギを2匹狩るよりも実入りは良い。これで経験値も入れば言うことなしなんだが。もう、言及するのは止そう。悲しくなるだけだ。
「一度街に戻ります。」
連戦でMPが尽きかけている。このタイミングで行くのが良いと判断した。タンクがいるうちに、初見の魔物とは戦っておきたいからな。HPまで回復したら、もう魔物を間引いてはくれなくなるだろうか?それでも当初よりは打ち解けてきたはずだから、お願いすればなにかと言いながらも、手伝ってくれるだろう。
分厚い雲のせいで、辺りが暗くなるのが早い。西洋風の街並みと夕景ってのは目を見張るものがあるのに。雨季はいつまで続くんだろうな。現実世界では一月くらいだが、ゲームの世界で一月も雨が続いても良いのか?そんなことを考えながら、冒険者ギルドに着く。魔道具屋は何が起きるか、不確定要素が多すぎるので今回はパス。効果は落ちるが、冒険者ギルド産の回復薬で間に合わせよう。
「ギルドも忙しそうだな。」
普段から活気のある冒険者ギルドだが、今は活気というか、すごい状況になっていた。新規クエストの受注は中止、アイテム買取なんかも一旦停止しているようだ。受付には一人を残し、他は見当たらない。戦闘に出ているんだろうか。何人かは販売所の助っ人をしているようだな。サリアちゃんも出張っているんだろうか。後学のために、彼女の戦っているところを拝見したい気もする。何か弱点でも見つかれば御の字なんだが。緊急クエストが終わってからの忙しさの反動が怖い気もするな。
回復薬を買いこんで外に出る。ちなみに俺が冒険者ギルド内にいる間はタンクは外で待っていた。一緒に中に入っていたら、ちょっとした騒ぎになっていたかもしれない。外でこうして歩いているだけでも好奇の目に晒されているというのに。ここが街の外だったら、まとめてタコス売りつけてやるんだがな。さすがに町の中でそのような大立ち回りはできない。
「なあ、タンク。街への襲来は前にもあったの?」
何の気なしに、質問してみる。友達のようなテンション感で。まあ、ただの暇つぶしと親睦も兼ねてだが。畑までの移動の間暇だし。返事がなければ、早いとこ回復薬使って、次の戦闘に備えようかなと思っていたら、意外にも回答が。
「何百年も前にあったそうだ。詳細を知るものはいないが、有事の際に備えての訓練の時に、その話を聞いたことがある。兵団での言い伝えのようなものだ。今となっては真実かどうかもわからない。」
「へえ。」
人のある所に歴史はあるんだな、と月並みの感想を持つ。今回の緊急クエストが【破壊】きっかけなら、何百年前にも、その力を使ったやつがいたということだろうか。まあ、ただのガチャポイントと経験値の促進イベントとして、良いきっかけの一つに過ぎなかった可能性だってあるから一概には言えないか。この街に立派な城壁が構えられているのも、その襲撃の過去が関係しているかも?全てタンクが言ったように、真実がどうかはわからない、か。あとで資料室でも行ってみようかな。ここの運営なら、その辺の話もちゃんと設定されているだろうし、史料も残されているかもしれない。マダムの所にもありそうだな。
あ、その前に詰所に行くんだった。




