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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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98/127

ep.96

 

 なんとか落とし穴まで誘導して落としたいけど、それを囲った壕が邪魔すぎる。越えられない幅ではないんだが、あまりにも越える必要がなさすぎる。遮るものがないから、壕を越えなくても監視の目が途絶えることはない。俺のAGIの低さも、道中ですでにバレている。


 色々と悪巧みを考えていると、魔物のおかわりが。【土魔法】があると分かったからか、少しだけ魔物をこちらに流してくれるようになった。お、これ便利だな。文句言って悪かった。この調子で、頼むな。


「マッドボール!」


 時折流れてくる、ウサギやスライムを倒すだけの簡単なお仕事。そろそろ狼あたりを寄越してくれてもいいのに。旅人期間でトライできなかったからな。強い奴が見ている今の保険の効く環境で、一度手合わせしたいものだ。今なら勝てる気がするんだ。ステータス的には、あの時とそんなに変わってないけど、あの時は、ほら、不意打ちだったから。正面ならいける。ただ、【破壊】は絶対隠さないといけないし、HPも少ないから、一撃で獲り切らないといけないが。


 やきもきしながらも、何回か戦闘を繰り返すと、【土魔法】がLv.3に。よかった。遊び人でもスキルレベルというか、スキルの熟練度は上がるみたいで一安心。レベルが上がったことで覚えた魔法はサンドウォール。【水魔法】の時は範囲攻撃だったが、【土魔法】は壁を出す防御系か。砂の壁とはなんとも心許ないが、密度次第なのか?便利そうな魔法ではあるが、日の目をみるのはもう少ししてからになるだろう。もしかしたら、使う機会もなく、という可能性も。バレてはいけないからな。壁出すだけなら、戦力増強になってないからいいのか?


「どうした?」


「いえ、なんでも。」


【土魔法】のレベルが上がった分の確認作業で少し止まっていると、タンクが声をかけてくる。案外鋭いのか?まあ、普段通りしていれば、これ以上怪しまれることもあるまい。


【土魔法】のレベルも上がったので、今度は【水魔法】にスイッチしたいんだが、嘘をついている手前、易々と切り替えることはできない。ただ、同じ魔法を繰り返す現状に飽きが。戦闘による益が少ないのも飽きに直結している。何か、面白いこと、起きてはくれぬか。刺激が足りない。


「すみませーん!」


 近くに見えたパーティーに声をかける。一時休戦し、ここからは商談の時間だ。一応、戦闘の合間を狙って声をかけた。連戦でスタミナ減っているんじゃない?タコス、買わない?


「何か?」


「いやー、戦闘お疲れ様です。」

「近くで見ていました。すごい強いですね。」

「連戦でお疲れの所悪いんですが、少々お時間、いただけませんか?」


「あー。間に合ってます。」


 そう言うと、そのパーティーはそそくさと次の戦闘に向かっていく。受け答えしていたのがリーダーだろうか。あまりにも冷たい反応だったな。くそ。話くらい聞いてくれてもいいじゃない。何が悪かったのか?こういうイベントの時に時間を取らせるのが悪いのだろうか。本題に入るまでが、長かったのかも。次は単刀直入に攻めてみようか。こういうのはナンパと一緒だ。一回失敗したくらいで気落ちするもんじゃない。ダメで元々、数打って当たりに行くしかない。俺のいきなりの狂行にタンクも面食らっている。


「すみませーん。タコス買いませんかー?」


「タコス?」

「ってか、なんで衛兵ついてんの?」


「はは、まあ色々ありまして。」

「それよりも、タコス、要りませんか?美味しいし、スタミナ結構回復しますよ。」


「衛兵って強いんでしょ。」

「どうやって仲間になったか教えてくれるなら、買うよ。」


「うーん。ここだけの話ですよ。」

「タコス売っていたら、ついてきましたよ。」


「まじ!?買うわ!」

「いくら?」


「はい、毎度ありー。」


 有事の価格ということで、少し割高に。まあ、情報量も込みだから。リルを受け取って、タコスを渡す。しっかりソースもかけて。衛兵は城壁沿いで、最終防衛ラインを築いているからな。他のプレイヤーに取られる前に、早く行ったほうがいいぞ。よし、俺たちは今のうちに別の場所に、移動しようね。


「おい!仲間になった覚えはないぞ。」


 先ほどのパーティーから距離を取ろうと移動していると、一連の流れを聞いていたタンクが反論してくる。商談の最中に声を上げなかったので許す。空気を読んでくれたんだろうな。実直でいい奴なんだろうが、気をつけないと足元掬われるぞ。いいのか?美人の嫁さんと娘が悲しむぞ。俺が勝手に考えて付与した設定だが。


「俺も仲間になったとは言っていません。」

「タコスを売っていたら、ついてきた。」

「嘘は言っていない、でしょう?」


 俺と同郷のやつは特に、食いもん与えたら仲間になるということに疑念を抱かない奴が多いんだ、と付け加える。桃太郎様様だな。甘味というものが現代ほどありふれていない時代に食べるきび団子は、脳に効いただろうな。それこそ、仲間としてついて行きたくなるくらいには。一種の依存性があったとも考えうる。22世紀においてもその効果は絶大だ。本当に何入れたんだよ、おばあさん。


 俺の回答を聞いて、渋い顔をするタンク。しまった、俺が誠実な人間であることも証明しなければならないのに。日頃の癖でつい。今のは相当悪手だったな。今からリル返して謝罪すれば間に合うかな。現世において返金対応は結構誠実な対応の一つなんだけどな。もう遅いか。


「タコス、食べる?」

「もちろん、無償ですよ。」


「必要ない!」


 あらら。




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― 新着の感想 ―
主人公の享楽っぷりが面白くて一気読みしちゃいました。 この先主人公とルーにどんな物語が待っているのか楽しみです。
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