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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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ep.98

 

 畑まで戻ってきた。畑は無事。周りにちらほら人の気配はあるが、ここまでは及んでいない。雨は続き、地面がぬかるんではいるものの、まだ濠とは呼べないかも。この緊急クエストは一体いつまで続くんだろうか。そして、俺は無事ログアウトできるのか。


 HPとMPは回復薬のおかげで全快している。これで、憂いの一つが無くなった。畑も無事のようだし、少し遠征しても良いかもしれない。


「ここにあったローハはお前が育ててたのか?」


 先ほど来た時に疑問に思っていたのだろうか。反対側から脇目も振らず走ってきて、何より先に薬草を回収していたら、当然気になるよな。群生地でもないし。気軽に聞いてくれて構わんのに。まあ、こうやって話しかけてきたって事は、ずいぶん打ち解けてきたんじゃないか?このままこっち側に引き摺り込めば、逃げ仰るかも。なんなら、君が破壊したことにしない?君の一振りに【破壊】の力込めてやってもいい。【再生】が他人のする行為にも乗るのは、ミアとセバスの件で確認済み。なら【破壊】もいけるだろう。できることなら、嫌な奴に罪をなすりつけたいが。サリアちゃんの親衛隊の彼とか。


「ああ。これも趣味の一環で。」

「タコスにはこういう草を乗せがちなんだ。こちらでは薬草として使っているんだろうが、食べることができないかと思って。」


 城壁沿いを私有地がごとく占有していることに対しては、お咎めないらしい。これは、街のお墨付きを得たと捉えても良い?良いよね?一応タコス屋としてのロールプレイも忘れない。もう、あまり意味がない気もするが。タンクの中で俺がどういう人物像になっているか気になるところ。


「その祠は?」


「ああ。豊穣神様から加護をいただけて。」

「そのお礼として、神像を彫って、祠を建ててみた。まだ会ったことはないので、神殿の女神像をモチーフに。」


「お前は、一体、」


 タンクは物凄く困惑し、次の言葉を考えあぐねているよう。まあ、わからんでもない。でも、旅人とはそういう生き物だと、割り切った方がいい。俺も変なことしている自覚はあるが、俺以上に変なやつなんてこの世界に来ているやつだけでも掃いて捨てるほどいる。悪意がない分、俺はマシな方だ。


「しがないタコス屋だよ。」


 なんか、もう、ギャグみたいになってるな。誰も笑ってないけど。名乗りとしては、遊び人よりマシだろ。


 困惑しているタンクを尻目に、魔物を選り好みして戦闘を仕掛ける。今回は狼。あの夜に襲われたはぐれ狼ではなくて、グレイウルフ。Right君が言っていた方かな。対峙するのは初めて。一体、俺はこの期間何をやっていたんだ?Right君とその話をしたのは、ゲーム始まってすぐだったはずなのに。


「手強い相手だった。」


 激戦だった。相手が1匹だったからなんとかなったようなものだ。狼の生態を考えると、複数匹で群をなして生活していることも考えられる。2匹以上と戦うことを想定すると、さすがに搦手を用意しておかねば。今までは正面から攻撃をしてくる魔物が多かったが、狼はステップというか、少し横に動いてから首元を狙ってくる挙動が見てとれた。タンクは軽々切っ飛ばしていたんだけどな。俺には身を守る術がないから、強制的に避ける姿勢を取らされる。姿勢が崩れたところで再度噛みつこうとしてきた。さすが、食物連鎖の上の方にいる生き物だな。その時はなんとか杖で振り払えたが、次もうまく行く保証はない。正面からの力比べじゃ、俺が勝てる見込みもないし。


 所感としては、狼のHP自体はべらぼうに高いわけではなさそう。少し多めにMPを払ったマッドボールで2発。指輪の性能も乗っての2発だから、装備なしMPも通常量だったら4〜5発必要だったかも。そもそも初期装備で戦う相手ではないのかもしれない。そんなことより。狼の脅威はやはり俊敏さだった。相手もその強みをわかって巧みに機動力をつかって、こちらを翻弄してくる。そしてなんと言っても、イヌ科特有の顔面の良さ。さすがに、魔法を撃つ時は心が痛んだ。相手が歯茎剥き出しで襲い掛かってきたから正気に戻れた節もある。今後必要がない限り戦いたくない相手だな。


「ちなみに、ロ(・)グ(・)ア(・)ウ(・)ト(・)するのは可能か?」


「詰所でしてもらう。」


「そうですか。」


 休憩って言ってしまうと、正確に伝わらない可能性があるので、ログアウト、と伝えた。システム側がうまく変換してくれるだろうと期待して。そしたら、可能だが、兵士の詰所で行う必要がある、という返答が。さすがにそうだよな。街の城壁にかかっている魔物よけを壊した可能性のあるやつを、街に入れてくれるだけありがたいと思うべきだ。寝て起きたら、緊急クエストも終わってしまう可能性もあるし、もう少し粘ってみよう。レベルは上がらんが、ガチャポイントは美味しい。


 完全に日が沈んだんだろうか、出てくる魔物がおどろおどろしくなってきた。骸骨やゾンビのようなもの、人型のもあれば、日中見かけるウサギや鶏のものも見られる。火の玉なんかもあるな。【夜目】を取っててよかった。これが急に視界に現れると考えると、ゾッとする。それに今はタンクもいて心強い。背中にはルーの気配も感じるし。すまんな、戦闘させてやれなくって。この緊急クエストのボスっぽいやつが来たら、そいつにあの魔法を使ってもいいぞ。それで1日の終わりにしよう。今は暗いから、あの出所のわからない爆発の魔法なら、ルーが気づかることはないだろ。




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