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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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ep.92

 

「ふー。」

「タコス屋Gへようこそ。」


 久しぶりにこんなに走ったかも。お客様を待たすわけにはいかないからな。俺に声をかけてきたのは、女の子。造形がいいが、NPCか?帯刀していないから、魔法使い系かも、と類推する。プレイヤーだとしたら、魔法使いで、結構先に行ってそうな雰囲気。特徴的なのが、ファンシーな色したぐるぐる巻きのマフラー。首元だけでなく、口元まで覆っている。防寒具というわけではなさそう。雨降ってるから、濡れてぺたんとなっているが、首元気持ち悪くないんだろうか。NPC説が濃厚になってきた。


「うん。女の子が食べているのを見て、食べたくなっちゃった。」


「女の子?TeAか?」


「そう。TeAちゃん。」


 おお、TeAの紹介だったか。推定NPCまで影響力があるとは。なかなか、やるじゃないか。その調子で頼むぞ。料金やその他諸々を説明する。毎度説明するのも、あれだな。店員とのコミュニケーションがあまり好きじゃない現代人も多いと聞く。まず、俺がめんどくさいし。こういう時は黒板にチョークが鉄板だろうか。手製でなんとかできそうだな。次空き時間があったら、試してみよう。わざわざ黒板用意しなくても、城壁を一部拝借して石で削ればいけるかも。


「んーと、じゃあねー、サルサ3で。」


 すごいな、この子。こういう時だいたい、一つは別の味にしがちなのに。NPCだからか?それともZ世代と呼ばれる新しい世代か?再度キャンプキットを使用し、雨よけのタープを。そこで、石板にタコスを出し、サルサソースをかける。マフラーの君はポケットから1,000リルを出し、すぐに食べ始める。久しぶりに見たな、硬貨。ここ最近はほとんどギルドカードでの金銭の授受だったのに。まあ、僻地とかではキャッシュレス通用しない可能性あるよな。TeAには及ばないが、美味しそうにむぐむぐと食べる姿は微笑ましい。


「これ、美味しい。」


「どうも。」

「【生活魔法】使っていいか?」


「ん?」


 そもそも他人に使えるかわからんのだが。雨に濡れっぱなしなのが気になって仕方ない。【生活魔法】の対象をマフラーの君にして使ってみる。よほどのこだわりがないと、濡れたままがいいやつはいないだろうし。いないよな?濡れたら攻撃力が上がるとか、なくはないか。対象に選べたから、使えるとは踏んでいたが、効果はバッチリ。濡れていた装備やマフラーも全て新品のような仕上がり。雨が降っているので、すぐまた濡れてはしまうのだが。


「わあ。ありがとー!」


「はい。遠くまで来てくれたから。」

「今後ともご贔屓に。」


 いつの間にか食べ終えていたマフラーの君は早足で門の方に戻っていく。今までで一番客と店員らしかったかもしれない。店員というか店主だな。俺しか居ないし。魔法使いだからか、足が遅い気がする。なかなか姿が見えなくならない。TeAはもっと早かったような。流石、近接職といったところか。それなのにわざわざ遠いところまで、悪かったな。【生活魔法】はサービスにしとくよ。ホスピタリティも集客に影響するご時世だ。だから、宣伝、頼むな。


「さて、メニュー書けるかな。」


 先はど考えていた、メニューに取り掛かる。近場の石に書いても目立たなさそうなので、城壁を少しだけ拝借して、石で彫らせてもらおう。先の尖った石を見つけ、城壁と向き合う。えーと、書くのは店名、料金、ソースの説明、くらいか?


「よいしょ。流石に硬いな。」


 こっちの世界での俺の身長が175cmくらい。こっちの世界では平均より少し低いくらいだろうか。女性の客のことも考えると、俺の目線から少し低いくらいの位置に書くのがよろしいか?両足を広げ、高さを調節して、城壁に石で文字を書いていく。だが、流石にいい素材を使っているのか、城壁を撫でるだけで文字を刻むことはできない。STRの問題か?


「うーん、何か手はないものか。」


 食材から色を抽出しようにも、色の濃いものはない。それに雨季だから水溶性はいつまで持つかも不透明だしな。同じ理由で灰もNG。チョークは貝殻とかから作られるんだっけ?兵太夫に融通聞かせて貰えばよかったかな。でも船造りの邪魔するのも悪いし。かといって、自分でわざわざ獲りに行くまでのことじゃない。じゃあ、血液?魔物を倒してもポリゴンになって、血液は手に入らない。血が有用な魔物はドロップで落とすのだろう。自分のを使うのももってのほかだ。


「やっぱ、パワー、か。」


 結局、力で解決するしかないという結論に。一旦文字の体裁は気にせずに、力任せに叩き込んでみる。これで傷でも付こうものなら、それを足がかりに文字に見えるようにしていこうと考えていたが、傷すら付けられず。


「お前がそういう感じで来るなら、俺にも考えがあるぞ?」


 色々試したが、全て不発。城壁がニタァとコチラをほくそ笑んでいる気配すらしてきた。城壁に向かって宣戦布告をする。こういう時は、この辺りの人通りが少なくてよかったと思うよな。


【破壊】


 HPの急激な減少を感じる。使うのはいつ以来だろうか。ダンジョンで使った時以来か?あの頃から、HPも少し伸びているのに、全く堪え性のない。石に【破壊】の意志を乗せて、城壁に叩き込む。一撃だけしか使えないから、どうせ文字なんか書けやしない、が、城壁になんて負けてられない。これは俺の意地だ。


 パリンッ


「ゑ?」




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草
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