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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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93/124

ep.91

 

「お、ワールドアナウンスか。」


 久しぶりに聞いたな。第3エリアだって。一体どんな奴らがそんなところまで進めているのか。俺はまだ、第2エリアにも到達していないというのに。いやはや、攻略組というものは恐れ入る。確か、初めて転職した人が出た時もワールドアナウンスがあった気がする。ということは、次の転職のハードルの方が高いのかな。イベント期間中だし、近いうちに転職の方も流れるかもしれないな。いいぞいいぞ、運がない奴らが回数を回して、低レアを空にしてくれ。


「兵太夫たちも第3エリア目指すのか?」


「いや、俺たちは砂浜から船でも出せないか、今試行錯誤中だ。」


「へえ、そりゃいいな。」


「ああ。楽しくやってるところだ。」


 兵太夫は船で荒波に出るつもりらしい。そのための船作りに試行錯誤している途中とのこと。手漕ぎだろうから、燃料とかの問題はないだろうが、そこそこのサイズは必要だろうしな。今は浮力と浸水してしまうのが専らの課題だそうだ。大きくすればそれだけの浮力は確保できるだろうけど、人力では推進力に限界もあるからな。ペーロン船のような細長い形状にすると釣りにくいだろうし。前回見た限りだと、目に見える範囲に対岸はなかったし、相当な距離を漕がなければならない可能性がある。まあ、目的が一致している奴らがいるなら、どうとでもなるだろ。


「じゃあ。」


「ああ、また。」

「街で宣伝しておいてくれ。」


 兵太夫たちはこれから街に戻り買い出しだそうだ。お互い挨拶をして別れる。雨天ではあるが皆美味しいと言ってくれて、気持ちは晴れやか。結構な量を買って行ってくれたので、俺の懐もホクホク。ガチャポイントも美味しい、タコスと同じくらいか。今日は縁故で売れたのもあるが、1日目の滑り出しとしては上々の立ち上がりと言ってもいいんじゃないか。


 雨は小降りになってきたが、まだまだ降り続いている。最初に仕込んだ分はまだ残っているから、仕込みの続きは雨が止んでからだな。急がなくても大丈夫だろう。ここにただ座っているのも、手持ち無沙汰だし、書き置きでも残して、少し周りに狩り出てみようか。近場で魔物を見つけられれば、いいんだが。戦闘は久しぶりだ。猪のは戦闘とは呼べないし。戦闘では経験値が得られないとは言え、せめて【土魔法】くらいはレベルを上げておきたい。


「え、待て。魔法の経験値も入らないことある?」


 まずいことになったかもしれない。魔法の経験値に関しては全く考えてなかった。流石に魔法の方は熟練度的な扱いで、レベル上がるよな?そっちも遊び人仕様だったらどうしよう。遊び人の間、【土魔法Lv.2】のままなんて、産廃にも程がある。しかも進行度的に考えると第2エリア間は遊び人のままだし。とにかく、その検証のためにも、どこかで魔法をぶっ放してみたい。経験値といった目に見えて成長するものではないが、レベルアップまでそんなに遠くないんじゃないかとは思っている。


「少し、お待ちください、と。」


 石造りの屋台の前、ぬかるんだ地面に、杖で書き置きを残す。そこまで遠くに出るつもりはないが、タイミングが悪ければ少し待たせてしまうかもしれないしな。せっかくの客を逃すわけにはいかん。


「何もおらん。」


 屋台から離れてみたはいいものの、全く魔物に遭遇しない。城壁に近寄らないようにはなっていそうなんだが、このくらいの距離なら大丈夫だと思うんだけどな。今いるのは、屋台がかろうじて視認できるくらいの距離。屋台を中心にして半円状に移動しているところだ。これで2往復目。魔物も見ないし、客も見ない。所詮、TeAも一般腹減り勢だったか。何が有名インフルエンサーだよ、全く。


「第3エリア解放されたのも効いてるか?」


 今一番ホットなのは、第2エリアと第3エリアの中間だろうな。場末のタコス屋なんて見向きされないのも無理はない。イベントだから頑張ったんだろうが、もうちょっとゆっくりゲームを楽しんでもいいんじゃないのかね。タコスでも食ってさ。


 せっかくの機会だから、しばらくサボっていた、【鑑定】【看破】を使っていく。【気配希釈】も使用し、熟練度上げに勤しむ。何も得られないより、スキルの熟練度上げした方がマシだ。あーあ、本当なら客がひっきりなしに来ていたはずなのにな。雨のせいか?雨のせいということにしようか。


「んん?」


 今一瞬【看破】に何か引っかかったような。この辺は南の大きな岩場の少し手前、大小様々な形の入り乱れる場所。何か生物がいるような気配もないんだが。


「ルー、何かいると思う?」


「  」


 再度【看破】を使用してみるが、イマイチピンとこない。ルーに確認しても反応なし。ルーが怯えている気配が感じられないから、何か危険が迫っているというわけではないんだろうけど。なんだったんだろうな。考えられるのは、岩に擬態した魔物か何かがいたが、俺に気がついて逃げた、くらいか。でも再度【看破】使った時に何も反応がなかったのは説明できないし。


「おーい。」


 姿の見えない何かと格闘しているところに、横槍が。せっかくいいところだったのに。一体誰が邪魔したんだと顔を上げ、声のした方向をみると屋台の方から手を振る人が。まさか、客か。





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