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趣味人のVRMMO  作者: et al.
9/19

ep.7

 

「さ、皿洗いは。」


「魔法で一瞬で済む。」


 俺はこう言った場合の常套手段である皿洗いを提案するが、一蹴される。俺が飲んだ後のカップはすでに綺麗になっていた。


「なんで?」


「ああ、旅人だったな。冒険者ギルドあたりでもらえるんじゃないか。」


 なんと片付けが一瞬で終わる便利魔法があるらしい。これはいいことを聞いた。何をするにしても後始末というのはついてまわる。準備は楽しいが、片付けは手間だ。もしかしたら部屋を綺麗にしたり、服のクリーニングもできたりするのだろうか。そうなったらさらにいろんなことに時間を割けるじゃないか。やっぱりゲームって最高だな。だが、俺の出せる手札も無くなってきた現状、どこかで決定打を打たなければ、このままではまずい。便利魔法の習得すらままならん。あとできることは、気配を薄くすることと、料理だけだった。


「料理ならスキルがある。それか気配を少し薄くできるが。」


「ふむ、料理か。じゃあ、コーヒーに合うものを作ってくれ。俺とあそこの客の分だ。」


 材料はここにあるものを使っていい、と言いながら作業場を譲ってくれる。よし、首の皮一枚繋がった。だが問題はここからだ。作った料理を気に入ってもらえなければ通報待ったなしか。テーブル席の爺の分もとのことだが、なぜだ。迷惑料か。自分が作れるものでコーヒーに合うものを模索する。短時間かつレトロな喫茶店で出てくるものにしたい。喫茶店といえば、ナポリタンだろうが固定観念すぎる。コーヒーに合うものなら甘いものかな。


「甘いのでもいい、ですか。」


「構わん。」


 一応下手に出て確認をとる。どうやらヒゲの紳士も問題無いようだ。色々考えた末、ホットケーキを作ることにした。料理スキルがどこまで活躍してくれるか、わからない。人に出すのに初挑戦というのもいただけない。自分で食う分には色々挑戦したいがな。ただベーキングパウダーなんてものはないだろうし、ましてやホットケーキミックスなんて便利な代物もないだろう。調理場があるが、メニューも見ずにコーヒーを頼んだからな。この店がどんな食いもんを提供しているかもわからん。パッと見た感じ小麦粉やら卵、牛?乳はありそうだから、ホットケーキならいけるだろうと踏んだ。

 商店とか行けば色々手に入るのかな、コーヒーもコーヒー用品も揃ってたし、街並みは西欧の歴史あるような雰囲気だが、生活水準は近代ぐらいなのかな。こっちのスーパーとかすごく気になるな。次々と気になること言ってみたいことが湧き出てくる。現実世界ではなかなか味わえない感覚だ。そのためにもここの課題をクリアせねば。

 とりあえず卵の卵白を泡立てるか。【料理】スキルはどうやって使うのかな。使い方がわからないが、【水魔法】みたいな発動型ではないようだ。持ってれば効果を発動できるのか。そんなこと考えながら泡立て器でメレンゲを作る。現実世界では重労働だが、料理スキルが働いたのか、すごく簡単にメレンゲを作ることができた。現実世界でもこうならな、とごちる。卵黄に砂糖を混ぜ、ミルクを加える。そこに小麦粉をふるいいれ、混ぜ合わせる。最後にメレンゲを入れ、軽く混ぜる。


「なんか、ものすごい、スムーズにできるな。」


 これが料理スキルの恩恵か。もしくは、ゲームシステム的にこうなってるのか。非常に楽しい。手のかかる作業がさっくり終わる。料理の楽しいところだけができる。確かに現実世界と同じ時間がかかっていたら、本末転倒だからな。フライパンを温め、バターを溶かし、いい頃合いで生地を流し込む。生地が沸々としてきたら、ひっくり返す。うん、いい焼き色だ。反対側も色づいたら皿に移す。バターを乗せ、蜂蜜はお好みで。


「熱いうちにどうぞ。」


 あったかいうちに食べて欲しいので先に店主の前に提供する。すると、店主がヒゲの紳士の席にサーブする。ホットケーキ自体はこっちにもあるんだろうな。訝しんでいる様子は見られない。紳士はハチミツをたっぷりかけ、美しいナイフ捌きで一口頬張る。甘党だったのか、ヒゲ。多分いいとこの出なんだろうな、テーブルマナーが完璧なように思う。俺自身が詳しくないから実際はわからないが。一般独身サラリーマンはテーブルマナーとは無縁なのだ。そうこうしているうちにもう一枚も焼き上がる。店主は甘さ控えめ。ハチミツを少しかけ、こちらも綺麗に一口。


「美味い。」


「それはよかった。生地が余っているが、もう一枚ずつ焼こうか。さっきのより小さくなるが。」


「いや、自分で食べていい。俺の飲む分のコーヒーを淹れる。残ったら出してやろう。」


「おお、それはありがたい。」


 これは棚ぼただ。もう一杯飲める。ゲームの世界だ。どれだけ飲んでも体に害がない。ウキウキで自分の分を仕上げる。カウンターについていた店主もこちらにきてコーヒーを入れ始める。最高の空間だ。出来上がって一口食べて、コーヒーを啜る。ホットケーキも美味しくできているが、まあ、並だ。これから研鑽していかねばなるまい。だが、お題のコーヒーとの相性は間違いなかった。甘いホットケーキを苦いコーヒーで流し込み、後味はすっきり。また味覚の再現度に驚嘆する。


[ホットケーキがレシピに追加されました]


自分で見返してみて1,000字はあまりにもサクッとし過ぎていたので、少し長めですが、いかがでしょうか。

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