ep.68
「ガチャポイント?それは何でしょう?」
「あ。やっぱいいや。」
くそ。ガチャポイント貰えるなら、謝礼を呑んでも良かったんだがな。イベントを把握しているのはプレイヤーだけか。一部のNPCは知っているとか、そんな感じ?ギルドマスターが知らないなら、誰も知らなそうだが。タリアが神託で可能性あるかも?
「用というのはそれだけだろうか。」
「それなら失礼する。」
まだ暖かい紅茶を飲み干し、話を切り上げる。この街のギルドマスターは要注意だな。目的のためなら手段は選ばないタイプ、とでも言おうか。酒場で奢ってやれ、というのも余計だったか?それから綾つけられても敵わん。でも、何かを受け入れなければ終わらない雰囲気だったし、我ながら良い落とし所だったんじゃなかろうか。
「では、何かあったら協力するよ。」
「その時は、頼みます。」
頭を下げて席を立つ。こういうのは息苦しくて敵わん。慣れてないのもあるか。ルーもお利口だったな。お前は気疲れなんてしないか。爬虫類だしな。
「ふー。」
「薬草のことだけで良かったー。俺はてっきり、
「てっきり、なんでしょう。」
応接室を出て一息つく。緊張しているロールプレイなんてほざいていたが、結構緊張したな。あれが一集団を取りまとめる長の圧か。抑圧から開放されたからか、反動で火事のことが口をついて出そうになる。まだ、敵陣の中心だというのに。そして、運悪くそれを聞かれてしまった。そして、それが運悪いことに敵の中枢に近いサリアちゃんに。なんで、すぐ後ろにいるんだ?瞬間移動?大体さー、こういう時って、ギルドマスターとやりとりをしてから、部屋を出るもんじゃないの?酒場の件のこととかさー。すぐは出られないんじゃないの、普通?
「いや、城壁沿いに勝手に畑を作っていてな。それを咎められるのかと。」
「本当に?」
内心ドキドキしながらも冷静を装い言い訳をする。これの答えは考えておいたんだ。ギリギリ法に触れるか触れないかの行為。サリアちゃんは素直に受け取らず、確認してくる。その確認はどっちの意味だろうか。本当に畑を作っているか疑わしいのか、てっきりの後に続くのは本当にその話だったの、の方か。君のような勘のいいガキは、というやつだ。
「疑うなら、見に来てくれてもいい。」
「いえ、結構です。」
あくまでも、畑の件ですよという体を崩さない。今回はサリアちゃんが折れてくれた。畑の見学を拒否し、階段を下っていく。俺も後に続くが、階段を登って行った2人が、連れ立って階段を降りていくのもまずい気がする。それでいうと、下には変な方向に勘の働きまくっているガキどもがわんさか。ピラニアのように獲物を今かいまかと待っている気配がする。
「少し、ブルーのところに寄ってくる。」
「そうですか。」
必要ないかも知れないが、一応サリアちゃんに断りを入れて、2階で資料室の方へ向かう。サリアちゃんはそのまま下へ下って行ったようだ。背後から、野太い声が聞こえる。女神生還といったところか。あいつらはイベントのライバル足り得ないな。豪華景品を獲得するのは俺だ。俺もガチャポイント全然稼げてないが。うわ、そう考えたら、サリアちゃんの前でガチャの話しないほうが良かったな。彼女がフォロワーにおねだりすれば、いくらでも貢いでもらえるだろ。
資料室は巷の喧騒とは程遠い、この世界でも有数の静かな場所だ。遮音の魔法でもかかってんのか。ブルーも在席。そういえば、さっき見かけた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
「何の用だったんだい?」
「ローハの群生地の件だった。」
「今下の酒場に行けば、サリアが給仕してくれるかも知れないぞ。」
「それは、面白そうだね。」
くっくと堪えたように笑うブルー。こちらも知的な印象ではあるが、ギルドマスターよりフランク。どちらかというと、同じ匂いがする人物だ。
「この街付近の魔物の資料はあるだろうか。」
「もちろん。」
「何か特定のモンスターが?」
「特定、というわけではないんだが。」
「畑を荒らすようなモンスターはいるだろうか。」
「畑?街中にモンスターが?」
「ああ、いや、違うんだ。」
「城壁の外に勝手に畑作っていてな。」
「それを、荒らされた、と。」
呆れたような目でこちらを見てくるブルー。結局サリアちゃんからも、この行為の是非は聞いていなかったな。何も言われなかったってことは、現状グレーってところか?
「実物は見てないんだ。足跡からモンスターと判断したんだが。」
「そうだねー。ここら辺に多いモンスターは生存本能以外の理性は持ち合わせていないと思うんだ。」
「だから、目的を持って畑を荒らしたわけではないと思うんだけど。」
そういって、近場から資料を探してペラペラとめくるブルー。
「そういえば、時期が関係しているかも。」
確か、魔道具屋のバb
「ぐおっ!!」
いきなり立っていられないほどの頭痛と重力が襲ってきて、思わずしゃがみ込んでしまう。何だよこれ、遠隔もいけるのか。これが【魔女の監視】の効果?四六時中監視して、ただの暇人じゃねえか。
「どうしたんだい。」
急にしゃがんだ俺を見て駆け寄ってくるブルー。ああ、なんて良いやつなんだ。お前みたいなやつでこの世界が満たされれば良いのに。この世界とは言わず、現実世界でも。
「ああ、良いんだ。ちょっとした呪いが。」
片手を前に出し、寄ってくるブルーを制止する。痛みが来たのも一瞬だけだった。HPを見ても増減なし。ただ、嫌がらせをするためだけのものなんだな。遠隔でこれをされるとなると、本気で悪いこととやらはしない方が良いな。こんなん、解除されなかったらまともにゲームなんて出来ん。




