ep.59
「ちょっと待ってくれ。」
いくつか候補を挙げてみるも、なかなかこいつのお眼鏡には敵わないようだ。ニコニコとその様子を見ているミアに断りを入れ、一口紅茶を飲み、頭の中で作戦を練る。カメレオン関係で考えられる名前は、結構出し尽くした。後は、ルーセントフルシファーという種族名から持ってくるのが定石といえよう。でも、なんか気取った感じがして、嫌なんだよな。名前の由来でも聞かれた暁には、ルーセントフルシファーと説明せにゃならんのもあるし。
ルーセントフルシファー関連で考え出すと、指への攻撃が止む。こっち関係の名前であれば文句はないということなんだろう。今更だが、俺の考えがわかっているみたいなんだよな。もう、縁結べてるんじゃね?
「もういい、決めた!」
「ルー、で。」
うんうん考えていくが、結局頭から2文字拝借して、ルーにする。こいつも文句ないみたいだし。呼びやすいし、途中で少し面倒になってきたのも事実。ま、所詮名前なんてものは記号ですよ。縁があれば問題ない。
『この世界で初めてプレイヤーがモンスターをテイムしました。これにより、新たな職業が実装されます。』
『この世界には縁を結べるモンスターが存在します。ぜひ冒険して、出会ってください。』
[プレイヤー:GAKUには称号【友魔の始祖】とスキルポイントを付与します。]
ワールドアナウンスと同時にカメレ、ルーが若干光る。そして俺の腕から降りたと思うと、ミアの方に歩み寄りミアの手に乗って落ち着く。ミアもミアで、特に驚く様子はなく人差し指を曲げ喉元をゆっくり撫でる。
「素敵な名前をいただけて良かったですね。」
「なんだ、知り合いだったのか?」
なら貴女が、と言いかけて止まる。俺がテイム?、してしまったんだし、野暮なこと言うのは止そう。家庭の事情と言うのもある。こういう裕福そうなご家庭であるなら尚更。
「いえ、この子かはわかりませんが、昔お庭で見かけたことが。」
「そうだったのか。」
ミアとルーが戯れている間に、断わりを入れて噴水から水をもらう。多少水を拝借するくらいじゃ、妖精への影響はないらしい。トノサマフロッグの水袋を取り出し、噴水の水につけると、ゴキュゴキュとやたらリアリティのある音を出しながら、水を呑み込んでいく。結構な蟒蛇。カエルなのに。しばらくして、これ以上入らないといった合図か音が鳴り止み、水袋を取り出す。結構水が入っているはずなのに、重さは変わらない。すごい一品だ。ここの水を鑑定してみると、浄水とでた。魔道具屋のババアのところで買った回復薬に使われていると書いてあったものだな。読み通り綺麗な水だったということだ。
「それでは、お話と言うのは?」
「ケホッ。」
水を取り終えテーブルの方に戻ると、ミアから話の催促が。だが、どうやら活動限界も来たらしい。俺も長居しすぎたしな、今日はここまでだろう。
「少し長居し過ぎた。このカニをとってきたダンジョンの話はまた今度にしよう。」
そういって、前回、今回のお茶、水を取らせてくれたお礼にクレイクラブのドロップを執事に渡す。最初カニの話を出した時に拒否されなかったから、食べられないことはないんだろ。」
「これは、ありがとうございます。昔は時々この街にも出物があったのですが、最近は珍しくなってしまいました。」
「ミア様、そろそろ。」
「楽しみにしています。GAKU絶対またきてくださいね。」
「ああ。」
カニが獲れなくなったのは多分カエルのせいだな。安心しろ、今後プレイヤーが腐るほど狩ってくるぞ。ミアは歳の割に物分かりが良くて助かる。
ミアを庭に残し、外に出る。執事が鉄門のところまでお見送りに来てくれた。
「ありがとうございました、GAKU様。お嬢様はここ最近、薬が体に合っているのか、ずいぶん元気になられましたが、まだ体力が。」
「そうだったか。それは僥倖。」
「GAKU様のおかげでございます。」
「何か、お手伝いすることがあれば、連絡いただけたら。」
俺の【再生】も少しは役に立ったということか。あまり積極的に関わることは良しとしていなかったが、さすがに捨ておけないしな。執事がギルドカードを出してくる。彼も冒険者だったのだろうか。だが、なぜ?
「フレンドになりましょう。」
「そしたら、連絡できます。」
「そうなの?」
なんと。ギルドカードでフレンド登録すると、それでフレンドコールと言うチャットのようなことができたりするらしい。すごいハイテク。ものすごい便利。これがプレイヤーだけでなく、こちらの世界の人も利用できていることが素晴らしいよな。冒険者ギルドの説明でこんなのあったっけ?ボスやら倒して、新しく増えた昨日のうちの一つなのかな?そのタイミングで住人側にもサービスが拡大したのだろうか。
「よろしく頼むよ。」
俺もギルドカードを出して、お互いフレンド登録する。俺の数少ないフレンド欄が充実した。打算もありそうだが。執事は頭を下げ、ミアの方に向かっていく。
「早速で悪いんだが、一つ頼みが。」




