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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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60/73

ep.58

 

「カメ 


「   」


「痛っ!」


 全く、冗談の通じないやつだ。カメレオンって言葉知っているのか、それとも本能的にカメレオンという響きが嫌なのか。


「名前はつけていないんだ。」

「情が湧いてしまうからな。」


「そうなんですか?」

「でも、その子はあなたと縁を結びたがっています。」


「話せるのか?」


「いえ。なんとなくわかります。」


 紅茶を一口。執事の顔を伺うも無表情。何か特殊な能力を持って生まれたのだろうな。その代わりに、体が弱い?割に合わないって。運営さん、普通の体与えてやりなさいよ。縁を結びたがっているとは、少女の割にずいぶん難しい言い回しをする。それにしても、お前”縁を結びたかった”のか。はっはっは、可愛いところあるじゃないか。


「   」


「痛っ!」


 え、俺のツンデレ枠コレ?てっきり俺は、タリアだと。タリアはただ辛辣なだけだったのか。でも、名前ねえ。自分の命が重くないから極力連れて歩きたくないんだが。拾った手前、体調が良くなるまでは面倒はみてやる所存ではある。


「フルシファーの中でも珍しい部類みたいで。」

「俺は旅人だから、避けられない危険があるかもしれないし。」


「だからこそ、縁を結ぶのでは?」


 俺の頭にクエスチョンマークが。危険だから縁を結ぶ?共闘して危険を減らすとか?バカ言え。こちらの常識がどうかは知らんが、不肖このGAKU、敵でもない動物を危険に巻き込むほど落ちぶれてはないぞ。


「縁を結ぶと、その者の魂がこの世界に定着されると聞きます。」


 俺とミアの認識の齟齬があると感じたのだろうか、執事が再度助け舟を。だが意味がいまいちはっきりしない。魂が定着するとはどういう意味なのだろうか。


「不死になると?」


「基本的には。」


 そう来ましたか。基本的にはということは、避けられない死が存在するということなのだろう。伝聞を俺に伝えてくれている感じがするから、実体験ではないのかもしれない。基本的には戦闘では死なないと捉えて良いのだろうか。病気や怪我はどうなんだろう。どちらかというと、こいつにはそっちのリスクが高いと思っているのだが。


「  」


「あ、コラッ。」


 話題の中心であるカメレオンはどこ吹く風。珍しく透明化を解いたと思ったら、舌を伸ばし、執事が茶請けに出してくれたクッキーをパクリ。一口では大きかったのか、もごもごしながら一生懸命咀嚼している。焦る俺に対し、ミアと執事はニコニコとその様子を見ており、執事は新しいのをお持ちしますと席を外す。ミアと執事の背中に向けて謝罪を。飲み込んだ後はよほど美味しかったのか、ゆらゆらと前後に揺れながらキョロキョロ辺りを見回している。おれと縁を結ぶということは、少なからず人間世界で生きていかねばならんのだ。人間世界で生きていくなら、こういうことは許されんぞ。人間のルールに則らなければ、糾弾の対象にもなりうる。そういう不自由に当てはめてしまうのも、名をつけるのに躊躇する理由の一つだ。


 どうしても生物の生き死ににはナーバスになってしまう自分がいる。犬猫の一般愛玩動物を中心に動物は好きなのだが、どうしても死に直面するのが怖くて自分の手で育てようとは思わなかった。見ているだけで十分だと考えていた。こいつがついてきた時も、できるだけ深入りしないようにしてきた自覚はある。


「名前ねぇ。」


「ぜひ。」


「縁は恒久的なものなのか?」


「基本的には。」


「いいのか?」


 何事にも例外があるということか。テーブルの上に置いた腕まで降りてきているカメレオンに最終確認をとる。俺は別に今のままの関係性でも構わんと思うのだが、名付けることで半不死以外のメリットがお前にはあるのか?気兼ねなく戦闘に出られて、成長できるのは考えられるが、成長が怪我を直すのにつながる?それじゃあ、魔道具屋のババアの示唆していることとの矛盾が生じるんだが。メリットデメリットで物事を測るのが俺の傲慢さか?


「   」


 カメレオンは真っ直ぐこちらを見てくる。そのために透明化を解いたんだろうか。Yesと捉えていいんだな。野生のままの方が自由はあるぞ。


「   」


 それでもカメレオンの視線は揺らがない。


「分かった。」


 俺が、首を縦に振ると、カメレオンはまたクッキーを一口。執事がカメレオン用に用意してくれたもので、少し小さいサイズに調整されている。細やかな気遣い。今度はスムーズに食べ、またキョロキョロしだす。名付けに完全に納得したわけではないんだが、縁が恒久的な束縛たり得ないことが決め手となった。カメレオンが、本当についていきたいやつと出会えた時に枷にならないのであれば、名付けをして、半不死を与えるのも悪くない選択肢だと思った。ますます、悪い奴に捕まら似ようにしてやらねば。半不死の状態で捕まったら、逃げ場のない責苦を与えられるかもしれないし。


「では、なんと言うお名前に?」


 なぜか、ミアがさっきからノリノリなんだよな。早く名付けて欲しそうな感じがしている。何かあるんだろうか。見たことないから、見てみてみたいとかか?それにしても、名前か。今までペット飼ったこともないし、名付けた経験がないんだよな。こういうのは、俺のエゴで決めて良いの?現実世界では、双方合意が厳しいから、そうするしかないのか。


「じゃあ、気に入らなかったら反応してくれ。」


 嫌な時の自己主張は激しいからな。Yesを問うより、Noを問う方がわかりやすい。カーくん、メーちゃん、レーくん、オーちゃん。んーちゃんは流石に日本人的に許容できないんだが、お前がそれが良いなら。結果、全部噛まれる。


「名前って、何か決まり事があるのか?」


「いえ。そのようなことは。」


 じゃあ、シンプルにこいつが気に入っていないだけか。何、お前?”縁結びたい”んじゃなかったの?選り好みしてないでささっと決めようよ。


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