ep.4
「ア、アイスコーヒーを、」
店に駆け込むなり、アイスコーヒーを注文する。お行儀が悪いが、そうも言っていられない。目の前にあったカウンターに手をかけ、具合のいい椅子に座る。カウンターには他に誰もおらず、マスターと向かい合う。
「どうしてここに。」
「あれ、すみません。ここって喫茶店じゃなかったんですか。コーヒーのいい香りがしまして。」
「いや、喫茶店で合っているが。アイスコーヒーね。」
おかしなことを聞くNPCだが、会話はものすごく流暢にできている。昨今の技術の進歩には目を見張るばかりだ。会話に変なラグがない、現実世界での会話でももっとラグい時もあるぞ。目の前に立つマスターは、ロマンスグレーの色男。シワひとつない、真っ白なシャツ。落ち着いた色のジレ。同色の蝶ネクタイ。壮年だが背筋もピンと伸びている。現実では滅多にお目にかかれない完璧なレトロスタイルの喫茶店のマスターだ。ヒゲと咥えたばこがあれば120点だったが、流石に癖が出過ぎている。しかし、運営にも話のわかるやつはいそうだな、一緒に飲みに行きたいくらいだ。一人運営を絶賛し、注文品の到着を待つ。
「アイスコーヒーね。」
待ちに待っていたアイスコーヒーが来た。店内に一段と良い香りが。この香りを嗅げただけでも【DW】をプレイした甲斐がある。駆けつけいっぱいとばかりにアイスコーヒーを流し込む。カラカラだった喉に潤いが戻っていく。焙煎が深めでコクと苦味がありながら、アイスコーヒーらしく、すっきりとした果実感も感じられる。良いコーヒーだ。当たりの店だな。心なしか、体力も回復していくようだった。
『この世界で初めて飲食をしたプレイヤーが現れました。只今より、空腹値、スタミナゲージが追加されます。』
『GAKUにはスキルポイントと称号【欲望の僕】を付与します』
「おお。」
「どうかしたか。」
「いや、なんでもない。」
どうやら俺がこっちの世界で初めて喫食したらしい。この様子だと最初にモンスター倒したプレイヤーも何か貰ってるだろうなと予想する。ステータス欄にはワールドアナウンスの通り、満腹度とスタミナの欄が生えていた。探索で疲れたのでスタミナの概念はあったんだろうが、目に見える形となったのはわかりやすくてありがたい。空腹値も徐々に減っていくのだろうが、今はコーヒを飲んだおかげで回復したのだろう。戦闘しに行った奴らには申し訳ないことをした。空腹の枷がないうちにもう少し動けただろうに。心の中で謝罪しつつ、わずかに残ったコーヒーを飲み切る。
「すまない、一気に飲んでしまった。とても美味しかった。次はホットを。こちらの店のオリジナルブレンドを頂ければ。」
GAKU
職業:旅人 Lv.1
HP20
MP25(+5)
STR10
VIT10
INT10(+2)
MID10
AGI10
DEX11
LUK 11
スキルポイント(残4P)
所持スキル
【DEX強化】【LUK強化】【MP強化】【水魔法Lv.1】【土魔法Lv.1】【料理】【気配希釈】【鑑定】
称号
【豊穣神の加護】【欲望の僕】
ステータスの()内はアイスコーヒーの恩恵でしょう。




