ep.3
prologue地点に戻ります
芋洗い状態だったスポーン地点を抜け、裏路地を駆けずり回っているが、未だ目当ての店は見つかっていない。AGIの低さ、ステータス欄にはなかったが、スタミナの概念もあるのだろう、なかなか思うように体が進まない。体を動かすのを止め、一息つく。落ち着いて辺りを見渡し、自分の嗅覚に身を任せてゆっくり探索を再開する。サービス開始の周りの熱に浮かされ我を見失っていた。
『この世界で初めてプレイヤーにより、モンスターが倒されました。』
あの空間にいた女神の声が聞こえる。これがワールドアナウンスなのだろうか。ライバルたちは頑張っているみたいだな。俺も頑張らなくてはと、思いを新たにする。余裕ができたことで、頭も回り始め、キャラクリ時点で選択してたランダムスキルの存在を思い出した。
「そういえばあれ、どうなったかな。珍しいものだったら嬉しいんだが。」
レアなスキルを期待し、内心ドキドキしながらステータス欄を確認する。
GAKU
職業:旅人 Lv.1
HP20
MP25
STR10
VIT10
INT10
MID10
AGI10
DEX11
LUK 11
スキルポイント(残1P)
所持スキル
【DEX強化】【LUK強化】【MP強化】【水魔法Lv.1】【土魔法Lv.1】【料理】【気配希釈】【鑑定】
称号
【豊穣神の加護】
ランダムスキルから獲得できたのは気配希釈というスキルだった。初期に選べるスキルの中にはなかったように思う。だがスキルとしては聞き馴染みのあるものなので、オンリーワンというわけでもないだろうな。
「微当たりくらいか。運も強化したし、まあ悪くない結果だな。」
スキルの効果も確認してみたいが、今は街中だし、わざわざ使うこともない。戦闘の時にでも試してみよう。魔法がメインウェポンなのでありがたい結果だったのかもしれない。
ランダムスキルに目が行っていたが、スキル欄の下の方に称号というものがあった。貰えていたのは【豊穣神の加護】。
「豊穣神さんと仲良くなったつもりはないのだが。」
でも貰えるもんは貰っておく。あって困るようなものでもなさそうだし。これが【DW】の発売前に説明のあったこの世界には八百万の神がいる、ということなのだろうか。プレイヤー一人一人に違った神が加護を授けているのだろうな。豊穣神はなんだ。日本か、北欧か。まあ、どちらでもいいか、と思考を切り上げ、インベントリから木の杖を取り出し、文字通り杖として使う。
肩で息をしながら探索を続けていると、にわかに嗅ぎ慣れた香ばしい香りがしてくる。その匂いの元を突き止めるべく、彼は残る力を振り絞り、気持ち駆け足で辿っていく。匂いのする方に向かって歩いていると、ようやく本丸と思しき建物に出くわす。店舗ではあるようだが看板など一目でわかるようなものはない。窓ガラスもありはするが、汚れているのか、はたまたそういう作りなのかくぐもっていて中ははっきりしない。こじんまりとした建物には蔦がびっしりと絡んでいる。率直に言ってものすごく怪しく、現実世界では入るのが拒まれるような店である。だがものすごくかっこいい店でもあった。滅茶苦茶雰囲気を感じる。何よりここは俺の望んだ世界。この店も俺の望んだ結果生まれたものなのかもしれない。
「名店ってのは隠れてないといけない法律があるんだよな。」
まるで砂漠で遭難したかのように喉はカラカラ、息も絶え絶え、必死で足を動かし、目の前の喫茶店に駆け込んでいく。




