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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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53/70

ep.51

 

「いいな。」


 眩しさに翳す指に光るそれが、昨日の激戦と勝利した喜びを思い出させてくれる。今日は快晴。昨日の雨が嘘みたいに晴れている。その光を反射し輝く指輪に、再度感嘆の声を漏らす。


 魔力の指輪*

 装着者の知力を上げる指輪。

 MP+10 INT+5 スタン耐性up *


「うん。良い性能。」


 でも、どうせなら、蜘蛛が使っていた遠距離スタン攻撃か、スパイダー何某のように蜘蛛の糸を出せる能力が欲しかったな。魔力の指輪自体はよくあるドロップで、スタン耐性があの宝箱から出るユニークな効果だと思うんだよな。この街の周りではまだスタン攻撃を扱う奴を見かけていないんだが、役立つ時は来るのだろうか。数レベル分のステータスの底上げが本体だと考えて良いのだろうな。またあの蜘蛛と戦えるなら、今すぐに恩恵がありそうだが。宝箱が復活していないならば、わざわざ戦う必要はない。


 他の装備も更新すれば、結構な戦力増強になるんだろうか。確かに、最近では初期装備はあまり見かけなくなった気が。


「ナイフの耐久も、減っちゃったな。」


 木材で神像を彫った時は、そんなに耐久値は減らなかったんだが、今回蜘蛛を一突きしただけで結構減ってしまった。武器を使う職業の人も、その職業なりの金食い虫があるんだな。


「まだ、いたのか。おはよう。」


「  」


 声をかけると、カメレオンは背中に移動してくる。ログアウト中はどうして過ごしていたんだろうな。王都の情報が出たら、そっちに行ってみような。餌は大丈夫か?畑も保留中で、ローナも満足に食わせてやれんが、今日一日くらいならいけるのかな。今解放されているのが、第2エリア。近からず、遠からずといったところだろうか。本来なら、魔物の脅威が低いところに王都を立てるべきだよな。この地が王都ならば、住民は喜ぶだろうに。まあ、歴史やら魔物以外の脅威やら、王都には王都のストーリーがあるはずだ。考古学的なものでこの世界の詳らかにするのも面白そうだ。


 今日の予定はダンジョンの残りの探索。探索なのだが、街に戻って回復薬を買ってからアタックするか、今から冒険心にあかせて殴り込みに行くか。ログアウトのおかげもあり、HP MPはフル。


「どっちがいいと思う?」


「  」


「そうだよな。」

「いいか?危なくなったら逃げるんだぞ。」


 ダンジョン探索に決めた。一応、カメレオンにお伺いを立ててみたものの、まあわからない。危害がなければどっちでもいいスタンスだろうか。主体性を持たないといかんぞ。聞くかどうかはその時次第だけど。


 ダンジョン内は変わらず、湿っぽい。雨とかは関係なかったのかもしれない。ということは、どこかに水源があるかもしれないな。淡水の綺麗なものでも、海水の神秘的な光景でも、なんなら鍾乳洞でも。洞窟と水源との組み合わせは無限大の高揚感がある。


 肩慣らしに洞窟コウモリと戦闘を。指輪のおかげもあるか、なんとなく魔法の威力が高いような。肩慣らしにもならなかったが、朗報が。【水魔法】のレベルが3に。そして、新たな魔法を習得したとのアナウンスが。その名もアクアバレット。説明によると、複数体同時に攻撃できるらしく、とても心強い。使用MPは通常8。ウォーターボールが5なので、結構割りがいいんじゃないか?威力は低く設定されているのかな。使ってみねば。雌雄鶏あたりが適役か?レベルは落ち着いたのかな。


 新しい要素があると、ますます楽しくなる。探索しながら、土魔法のレベルアップも目指したくなってくるな。多分、水魔法より使った回数は少ないから、あと数回は使わなければならんかも。使った回数ではなく、倒した敵の経験値とかも関係してくるなら、少し遠い道のりになるか。


 そうこうしているうちに、残す道はあと一つ。左手の法則に従った結果残った、最後の選択肢。こんなことになるなら、右手信仰していれば良かった。だが、隠し部屋には辿り着かなかった可能性もあるとするなら、やはり左手か?運営がどちらを信仰しているのか、だな。仮に次、右からにして分岐左が本命だったら悔しいから、俺はこれからも左手信仰。


「少し、下っているのか。」


 最後の道は若干の下り坂。この時点で、他の道とは若干の違いが。明らかに本命臭がするな。まあ、この道しか残ってないんだが。湿っぽいのも相まって滑りやすくなっている。杖を本来の使用法で使いながら、慎重に下っていく。


 クレイクラブ Lv.6

 水辺や洞窟の岩陰に潜む小型甲殻類の魔物。水属性に高い耐性を持つ。


「新手か。」


 正解の道には蟹の魔物がまっていた。レベルは少し高く6。水棲生物らしく、水耐性が高いようだ。こういう時のために、複数属性を持っていて良かった。本来なら、雷属性とか、その辺が有効打になりそうな敵だが、あいにくまだ取得できそうにもない。誰かが使っているというのを見聞きしたこともない。今後取得できる機会は来るのだろうか。流石に雷魔法とかはカッコ良さそうだから取得したい。


「あとは、やっぱりワープかなー。」


 クレイクラブを目の前にしても、怯まずにいれる自分がいる。昨日の蜘蛛との死闘が効いているのかもしれない。自分よりレベルが低いという優位感もありそう。まだ距離があるうちにマッドボールを1発打ち込む。さすが、甲殻類。素の防御力が高いのか、指輪で底上げしている俺の魔法を耐える。水属性耐性もあるらしいし、【土魔法】もあげたいので、アクアバレットはまた今度。そうすると、次打てるまでの待ち時間が生まれる。


「あともう一つ、属性とっても良いかもな。」


 何度目かの、新たな属性の検討。蟹はハサミを開いて、こちらに迫ってくる。格下だと思って侮っていたら、大変なことになりそうなハサミ。属性の検討は置いておき、蟹の攻撃を丁寧に避ける。こいつも、蜘蛛みたく、びっくり攻撃手段があるかもだしな。


「おお、魔法を使うのか。」


 この蟹の攻撃手段は水魔法だった。初めて魔物がわかりやすく魔法使っているところを見たな。あれ?カメレオンも使ってたか?まあいい、忘れた。


 蟹が目の前に水球を作り出している間に、マッドボールをまた使えるようになった。魔物が魔法打つ時も動けないんだな。俺としては、魔法を当てやすくて良いのだが、ホーミングされると避ける自信はない。俺もすぐマッドボールを打つ準備に入る。総裁できればよし、当たってもまあ1発は耐えられるだろうという判断だ。


「  」


「あ、置いてこなかったな。」


 背中にカメレオンがいることを思い出す。ぬるっと先頭に入ってしまったせいで、置いてくるのを忘れていた。それに一応ハードコアモードだったな。洞窟の冒険が楽しすぎて、それも忘れていた。


 蟹がウォーターボールを完成させ、こちらに向かって発動させた、後を追って俺がマッドボールを打つ。狙いは蟹ではなく、蟹の作った水球に。属性的には水の方が強いのかな。少し多めにMPを払ったが、果たして。


「おお、こうなるのか。」


 結果は、マッドボールの勝ち。ウォーターボールとぶつかって、そのままマッドボールがウォーターボールを突き破って蟹まで届く。その一撃で蟹はポリゴンとなって霧消していく。魔法使い後同士の戦闘の場合は、こういうことがあることを覚えておこう。この世界にはおそらくPvPやPKが存在する。もしかしたら、今もどこかで戦闘があっているかもな。希少なカメレオンを抱えている今、不意打ちだけは避けていかねばならん。


 ドロップは蟹肉と鋏。ハサミの使い方はわからんが、蟹肉は嬉しい。なかなか食べられるものじゃないからな。どうせなら、1杯丸ごと欲しかったのだが、それは兵太夫の分野になってくるのかな。蟹味噌なんかも、落としてくれて良いんじゃないのか?


「周回したくなるな。」


 蟹のドロップがいいので、ボスなんぞ無視して、蟹だけ倒して回りたい。一回倒しただけでも、結構な量の身が確保できた。蟹にしては大きいサイズだと思っていたんだが、食うためだったのか。みんながこのダンジョンの場所分かれば、こぞってやってくるだろうに。それこそ、絶滅させる勢いで。ただ、他のプレイヤーに伝える手段がないのが欠点。掲示板?無理無理。俺には向いてない。眺めて楽しむのが関の山。


「クリアしても、魔物が出るタイプのダンジョンだといいな。」


 これから戦うであろうボスを倒した途端、ダンジョンの力が霧散して、って展開だけはやめてほしい。もしかしたら、群生地近くの川に沢蟹でもいるかもしれないが、こんな大ぶりの身を提供してくれるとは到底思えない。沢蟹はあのサイズだからいいんだ。運営はその辺わかってくれているはず。


「蟹、カニ〜。」


 蟹を倒してからは分岐のない一本道が続く。先ほどから蟹を求めているのだが、全然出てきてくれない。恥ずかしがらなくていいんだよ。カメレオンみたいに、背景色と同化しているのかと、時折【看破】もかけては見ているのだが、空振り。前に進むしかなく、入り口付近よりもワクワク感はない。


「おや、終わり、か。」


 楽しかった冒険にも終わりの時が。目の前に大きい空間と、私がボスです、という威容のモンスターが。丸っこいフォルムをしているが、なんなのかはまだわからない。せっかくここまできたんだから、クリアするのも悪くないだろう。保険(回復薬)はないが、今までもパッションでやってきたんだ。


「離れとくんだよ。」


「  」


 これで、憂いもなくなった。



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