ep.49
とりあえず罠があると思われる宝箱前を避けて、丸い空間の壁沿いを進み宝箱に近づく。宝箱ごとインベントリに突っ込みトンズラ決めさせていただこうと。我ながら狡いことを考えるが、宝箱は固定されていた。対策済み、です、か。まあまあまあ、想定内ですよ。次考えるのは、罠を解除しないと宝箱が開かないのか、開けたら発動するタイプなのか、宝物を回収すると、反応するタイプなのか。
裏側に回ったところで、開けてみる。特に引っかかりもなく、スムーズに開いた。これで残されたのは、回収すると発動する罠。そもそも、どんなのが入っているかもまだわからない。俺は、まだはこの裏しか見れてない。内容によっては、そのまま放置してもいいかもな。
「指輪、か。」
正直アクセサリー類は嬉しい。装備ならまだしも、装飾品を買えるだけの余裕なんてうちにはない。
「お前、ちょっと降りて隠れとけ。」
俺はこれから死地に挑む。罠を避けつつ、隠し部屋の入り口に戻り、カメレオンに降りるよう促す。大丈夫。敵わんかったら、反対側から迎えにくるから。そうなったら、また細々と畑でも耕して、生計を立てていこうな。正規の方法で脱皮した鱗を俺にくれてもいいんだぞ。MP回復薬の本数が増えるかもな。
俺の気持ちが伝わったのか、それとも最初から信用していないのか、カメレオンはすんなり降りてくれた。ここで、ごねられたら戦えなかったからな。物分かりが良くて、助かる。
「さて、憂もなくなった。」
心置きなく、死ねる。この際、神殿行きも享受せにゃならん。冒険者ギルドに捕捉される前に、街を出れば良いだけだ。死ぬことの面倒臭さよりも、今は冒険心の方が勝っている。
一応、罠が発動しないように宝箱の後ろに隠れながら、チラチラ覗き見し、指輪を手に取る。無事取るとこまでは行けた。あとは、部屋の外まで逃げ切るだけ。
宝箱から離れ、壁沿いを伝って抜き足差し足、入り口まで戻ろうとするが、宝箱の側面と正対したあたりで、魔法陣が映し出される。やっぱり、持ち逃げなんて、そうは問屋が卸さない、と言うことか。
宝箱の前で魔法陣が妖しく輝き出す。果たして鬼が出るか蛇が出るか。どちらも勘弁願いたいところだ。そうだな、洞窟で出てきて欲しい敵といえば、なんだろうな。何も出てきて欲しくないかも。
「シュルルルル。」
「蜘蛛、か。」
選ばれたのは、蜘蛛でした。大きさはそれほどでも無い代わりに、機動力ありそうでやだな。とりあえず距離をとりながら、様子見を。
キラースパイダー(幼体) Lv.9
森や洞窟に住む、大型の哺乳類も捕食するキラースパイダーの幼体。
粘着する糸を出し、敵を捕縛する。
怖いことが書いていますね。レベルも上。ひとまず、糸に捕まったら厳しそうだ。ホーミングでないことに期待して、どこを狙っているかを常に意識しておかねば。それにしても、足のふさふさであったり、綺麗なレンズのような目、凶悪でグロテスクな口元。すごい造り込みだ。そこまで忌避感のない俺でもこのサイズのものを見てしまうと、鳥肌が立つ。苦手な人なら卒倒モノだろう。これで幼体ってんだから、この世界はまだまだ広いな。冒険を辞めたくなってきた気分だ。
俺が横にいたからか、まだ見つかっていないようだ。その辺の視野角とかも、幼体ならではのものに設定されているのかも。だが見つかるのも、時間の問題だろう。ならば、
「ウォーターボール!」
とりあえず、自分にできることをしていくしかない。肉弾戦は絶対に無理。相手の攻撃を避けながら、魔法を当てる。やることはシンプルだ。あとはそれを遂行できるか。
「シュルルルゥ!」
魔法を当てられたことで、こちらを捕捉、苛立っているように見える。と言うことは、だ。全くこちらを歯牙にも掛けない、と言うわけではなさそうだな。チャンスはあるかも。
蜘蛛は8本の足をカサカサと動かし、こちらに迫ってくる。攻撃方法はなんだろうか。糸で拘束してくることは判明している。シンプルにこちらに体を擦り付けてくるのか?長い足で引っ掻いてくるのか?興味は尽きないが、当たるわけにはいかない。
蜘蛛の最初の攻撃は体当たりだった。スピードを落とさず、こちらの方に向かってくる。最初の位置が少し距離があって助かった。予備動作というか、モーションを見れたので、早めに動いて避けることに成功する。また距離をとり、今度はマッドボールを放つ。
「シュルルゥ」
狙い通り、目の付近に当たり、一時的にヘイトが外れた。ウサギやら鶏相手に練習しといてよかったな。魔法のリキャスト待ちながら、これを交互に繰り返していけば、この蜘蛛も倒せそうだな。
「ジュウウウ!!」
蜘蛛に行動の変化があったのは、もう一度この繰り返した時であった。明らかに、怒っているのがわかる。ウォーターボールのCTも上がった。また距離をとり、狙いを定めて、
「痛っ!!」
なんだ、何が当たったんだ?十分に距離はあるはずなのに、蜘蛛が腕を振るモーションの後、足に刺激痛が。痛みの元を見てみると、何やら、繊毛が服の上から刺さっているのがわかる。君、遠距離もいけるのね。また蜘蛛がこちらに向けて走ってくる。HPは4分の1減った程度。レベルが上がった時に、ポイント振っておいて助かった。続いて来る、蜘蛛の体当たりを避けようとすると、足の動きが、鈍い。
「なん、で。」
そのまま避けれずに、真正面からぶつかり、壁に打ち付けられる。今、足が動かなかったぞ。追撃をしようとしてくる蜘蛛を、今度はすんでのところで躱し、距離をとる。
「タランチュラ、だったか。」
せいぜいアシダカとか、女郎とかその辺かなと高を括っていた。確かに、魔物という言葉とシナジーがあるのはタランチュラの方だよな。刺激毛を飛ばしてきた、ということなのだろう。でも、遠距離攻撃の手段もあるとなると、結構厳しい戦いになるな。




