ep.48
「結構大きいな。」
遠目から見た時よりも、壁に開いた穴は随分と大きく感じる。地下に入っていくような洞穴だと、ガス溜まりなんかも考慮するが、近づいた感じ悪臭とかもせず、なんとなく風の流れも感じる。せっかくここまできたんだし、洞窟探検と洒落込みましょうか。
『この世界で初めてプレイヤーがダンジョンに足を踏み入れました。』
『この世界には、数多のダンジョンが存在します。ぜひ踏破してみてください。』
[プレイヤー:GAKUには称号【挑戦者】とスキルポイントを付与します。]
洞窟に足を一歩踏み入れた俺を待っていたのは、ガスでも魔物でもなく、ワールドアナウンスだった。この洞窟、ダンジョンだったのか。あまりにもシームレスで入れてしまったので、気づかなかった。洞窟内はところどころ湿っており、外よりも温度が低そう。先ほど降った雨の影響だろうか。外が明るかったのもあり、洞窟内は真っ暗。【生活魔法】で指先に火を灯してみるが、一寸とは言わないが、十寸先くらいから闇だ。足元も安定しているとは言えず、満足に進めそうもない。
「でも、せっかくだし、探検したいよな。」
「 」
岩場を歩いていたときは、うんともすんとも言わなかったのに、環境が変わって、目が覚めたのか、みじろぎして自分の存在を主張してくる。それはイエスなのかノー、なのか。でもこんなワクワクすること、なかなかないぞ。さすがに男の子の冒険心が腹の底から込み上げてくる。ここは少し気温が低い。変温動物にはキツかろう。大人しく、寝ておきなさい。
前に進む決意として、先ほどもらえたポイントも使って【夜目】を取得し、使用する。称号を隠すためにスキルポイントは残しておきたかったのが本音だが、致し方あるまい。臨時ボーナスが入ったのだ、使わねば野暮というもの。
【夜目】にも熟練度が設定されているのか、随分見えるようになったが、洞窟なのも相まってか、昼間と同じというわけにはいかんようだ。杖の石突で、壁や地面を叩きながら、先に進む。いまだにめぼしい発見はなし。ダンジョンの花は、魔物と、宝箱だ。自動マッピングなんぞ便利なものはないため、左手の法則。分かれ道があれば、左に進んでいくあれ。右手でも構わんのだが、結局は運。俺は左を信仰している。最初の街から徒歩圏内のダンジョンだ。メタ的に考えれば、そこまでの難易度ではないんじゃないかと楽観している。
「どこかで、魔物とも出会っておきたいんだが。」
このダンジョンのレベル感を早めに測っておきたい所存。狼レベルが出てこられると、ギブ。それ以下だったら、俺にも攻略できるかも。お守りに回復薬もある。ギミックボスだったら、ダンジョンの主もワンチャンいけるかもだし。
二つ目の分かれ道を過ぎた後、ようやく魔物の現れた。俺の目の前にいるのは、天井にぶら下がっている蝙蝠。さすがに少し大きい。積極的に襲ってはこないが、こちらを警戒し、威嚇してくる。しまった、【気配希釈】かけとけばよかったな。襲ってこないので、これ見よがしに【鑑定】を。
洞窟コウモリ Lv.4
多くの洞窟に生息している。敵の血液を吸い、自身のHPを回復する。
「おお、ぽいな。」
実にコウモリっぽい設定の魔物。実際には血液を吸うコウモリは少ないとは思うのだが、ゲームなんかでは吸血攻撃がベターだよな。果実を食べているコウモリの動画は見たことがある、なんか憎めない愛嬌がある生物だ。レベルも4とお手頃。この感じでいくと、ボスは抜きにして、ダンジョン自体は見て回れそうだ。
「ウォーターボール!」
狙いを定めて魔法を放つ。MP5使用の通常版。先手も取れ、レベル差もあるからか、無事一撃で倒せる。よし、この様子じゃ、先に進んでも良さそうだ。ドロップ品は羽と牙。一旦は死蔵しておく。インベントリ拡張しといてよかった。コウモリがポリゴンへと変わり、消えていったところでレベルアップのファンファーレも。これでレベル8。未開のダンジョンでレベルが上がったのは僥倖。ステータスは何をあげようかな。【再生】スキルのこともあるしHPとINTにでも振っておくか。スキルポイントは保留で。
「 」
「どうした?」
その後は戦闘を避けつつ、洞窟の探索を進める。未だ、コウモリ以外の魔物には遭遇していない。何度目かの突き当たりで、背中のカメレオンが反応した。具体的には、あの透明な蛇の時ほどではないが、小刻みに揺れている。俺が通ってきた道以外は洞窟の壁。こういうところで反応するってことは、隠し通路があると思っていいんだよな?ペタペタ触って確かめてみるも、イマイチ手応えはない。そして、思い出したように、【看破】を使う。
すると、突き当たり向かって左の壁が妖しく光る。そこも触って確認した後だったのに、やっぱり、スキルがものを言う世界ですね。【看破】がアクティブになってくれれば楽でいいのに。熟練度を上げていけば、可能性があるか?ここの住人は息を吐くように、なんでも見通してくる。そのレベルまで、持っていきたいものだ。見たくないものまで見えてしまうか。考えものだ。
【看破】で見抜いた壁の部分を杖で勢いよく突いてみると大きな音を立てて崩れていき、ぽっかりと空いた空間が現れる。中央奥にはこれ見よがしに宝箱、それ以外のものは見えない。
「うわー、怪しい。」
ダンジョンの花は魔物と宝箱と言ったな、あれは嘘だ。ダンジョンといえば、トラップ。嫌がらせレベルのものから、死に至るものまでバリエーション豊か。これに関しては、運営との読み合いなのか、自動生成なのか。ダンジョンが自動生成だとしても、罠自体は運営が作ったものだろうから、結局は運営との勝負だな。
「【看破】」
俺は成長できる男。空間に目を凝らし、スキルを使用する。【看破】は宝箱前に1箇所気になる目印をつけてくれた。それが何なのかは不明。まあ、罠があると知ってるのといないのとじゃ心構えが違う。踏んだ瞬間発動する落とし穴とか、モンスターハウス系のトラップじゃない事だけを祈ろう。
「ん?落とし穴か。悪くないかも。」
畑を荒らす猪対策に、金属加工ができないから諦めていたが、落とし穴なら俺でも作れるかもしれないな。大きいサイズを作るのは、骨が折れるだろうが、南側がダメだった以上、あの場所がベストなポジションだと思う。落とし穴だったら、特別な技術はいらない。根気があればいつかは完成できそう。そして、落とし穴にハマった猪を上から一方的に魔法でズドン。完璧だな。
GAKU
職業:旅人 Lv.8
HP44
MP56
STR11
VIT11
INT13
MID11
AGI12
DEX14
LUK14
スキルポイント(残2P)
所持スキル
【DEX強化】【LUK強化】【MP強化】
【水魔法Lv.2】【土魔法Lv.2】
【料理】【農耕】【工作】
【気配希釈】【精密操作】【魔力操作】【夜目】(NEW)
【生活魔法】【鑑定】【看破】【破壊】【再生】
称号
【豊穣神の加護】【欲望の僕】【冒険の始まり】【破壊と再生の使徒】【挑戦者】(NEW)




