ep.47
各回復薬を取り、リルを置いて店の外に出る。色々教えてもらったのに、礼も言えなかったな。そして、出てから、看破を試さなかったことに気づく。まあいい、また明日、トライしよう。ゆっくり進めていこうと思っていたところなのに、さっきの話を聞いてたら、悠長にしてもいられなくなってしまったな。趣味に生きるスタンスを変えるつもりは毛頭ないが、何かあった時のために、戦える力はつけておかねばなるまい。流石の俺も年貢の納め時か。旅人から卒業するいい機会だと割り切ろう。それが、拾ったものの責任だ。最悪、ババアに売り渡す選択肢も生えてきた。あの透明の蛇からも慕われているみたいだし。悪いようにはされないだろう。まあ、それも俺が決めることではない。
「お前、結構状態悪いっぽいぞ。」
「 」
さっきの話も聞いていただろうが、一応俺からも伝えておく。告知みたいだな。レベル4の奴に背負わせていい運命じゃない。俺なんてその頃デスポーン祭りだったのに。あの頃は若かった。ギリギリでいつも生きていた。
また坂道を登って、東門の方へ。面倒くさいったらありゃしない。西門ならすぐなのに。でも時間はあるし、受け入れるしかないな。結構濃い一日になったと思っているが、まだ草とって、カメレオンにあって、コーヒー飲んで、草売っただけだ。
転職するにあたって、倒しておかなければならない敵がいる。そう、角ウサギだ。狼は一旦ギブ。正直、今なら勝てそうな気もしないでもないが、一度負けた相手だ。俺のイメージの中では、今では強大な敵となっている。
正直、俺の戦力は大して伸びていない。ステがいくらか上がったくらい。魔法は未だレベル2。結構使っている気はするのに、案外上がらないもんだな。【鑑定】や【看破】もこの調子だと考えると、先が思いやられる。
東門から出て、とりあえず畑へ向かう。さて、何をしようかな。俺って、今まで何していたんだろうか。いつも気づくと日が暮れていたんだが、今日は随分と時間が経つのが遅く感じる。当面は【気配希釈】と【鑑定】【看破】の熟練度上げかな。副次的にレベルアップを狙えばいいか。
「うわっ、やられた。」
薬草が青々と茂っているはずの畑がスカスカだ。近づいてみると何者かに踏み荒らされた痕跡が。神の見ている前で不届な輩もいたものだ。神像も巻き添えを食らっており、泥だらけ。プレイヤーの足跡ではなさそう。不法占拠ではあったのだ。よく今まで持ったと思いたいが、俺の食い扶持を潰してくれやがって。この恨み、晴らさでおくべきか。
ひとまず、神像を救出。【水魔法】で綺麗に洗う。その後、根ごと残っている株を救出する。謎の種を植えたところを掘ってみると、まだあった。植えた時と何ら変わっていない。休眠期間とかあるのかな。生育条件が揃わなければ、発芽しないとか。ただ、土の中で腐ってしまっているものと思っていたので、救出できて何より。ちょっと条件を変えて、またトライしてみよう。
「場所どうすっかなー。」
野生動物なんかは、一度入ったところはもう自分の土地だと勘違いする生き物だ。多分、同じところに畑を耕しても、また荒らされるのがオチだろう。別の場所を探さねば。街に近くて、結構気に入っていたのにな。今後のことも考えると、荒らした元凶を叩く方が良さそうだが、敵の姿がわからないことには、手の打ちようがない。
「いっそ、罠にでもかけてみるか。」
現実世界で畑を荒らす代表的なものといえば、野良猫、たぬきかもぐら、でかいのだと猪とかクマとかだろうか。クマが薬草食うとは思えないから、足跡的にも猪辺りじゃないかと踏んでいる。
「いや、無理だな。」
金属もなしに、猪を拘束できる罠を作れるとは思えない。ましてや、魔物化した個体なら尚更。ここは大人しく、別の場所に移るしかなさそうだ。また、場所の選定からか。荒らされた土地を均して、散っていった薬草たちの供養を。
「今度は、南の方だな。」
今度は反対側の城壁沿いを目指してみよう。少し風景が変わると、気分も変わるだろう。目新しい何かも見つかるかもしれない。
東門を通り越し、城壁に沿って歩いていく。途中であったスライムなんかは、倒しながら。さすがにスライムはいけるな。動きが遅い相手には、魔法が打ちやすい。レベルアップも間近だな。
『この世界で初めて、第1エリア、アインス荒野のボスが倒されました。』
『それに伴い、新たなクエストの開放、一部機能の追加、新職業が実装されます。』
おや、同僚はレベルアップどころか、ボスなんか倒しちゃって。俺なんてスライム相手にイキリ散らかしている最中なのに。西門の森のボス攻略から、少し時間が空いたか?ボスもこっちの方が、難易度高かったのだろうな。目指すべき王都はどちらの先にあるのだろうか。王道ルートは西門っぽいよな。西門はメインストーリー寄り、東門は力試し的な。
「なら、俺は北上か南下していっても面白いかもな。」
せっかくだから、あまり誰もいかない道を進んでみるのもいいかもしれない。レールの敷かれていない道なんて、結構じゃないか。行き止まりがあるなら、反対側に行って、それもダメなら、大人しく西か東に。そうこうしていると、王都の情報も溜まってくるだろ。少しづつ金をためて、護衛を雇っても良いかもしれない。
「あー、こっちは厳しいかもな。」
南側は結構ゴツゴツした岩が多かった。油断すると足元を岩に取られる。群生地の環境を考えると、薬草の栽培には向かない可能性が高い。水はけは良さそうだから、栽培するなら芋類とかだろうか。火山灰地帯とは、また話が違うかな。
ようやく日も暮れてきたというのに、骨折り損だ。死ぬことはかなわんが、せめてこっちにきた理由を作らねば。何の成果も得られず、北に戻るのも勿体無い。
城壁から離れて、南下していく。ゴロゴロと転がっている石に片っ端から【鑑定】をかけながら歩く。時折、【看破】できる岩があるのだが、鉄鉱石だったり、あまり聞いたことのない種類の石が含まれていると言った内容。割る手段を持っていないのでスルー。ダイヤモンド目指して一攫千金というのも面白そうではあるな。この辺にロマンを求めてきたプレイヤーなんかもいそうだ。そのくらいのポテンシャルは大いに感じる。
岩が大きくなってきた。それこそ、俺を超える背丈のものもちらほらと。隙間を縫いながら、時には、岩を登り、飛び移りながら先を目指す。
「昔磯を歩いた時もこんな感じだったな。」
あの時のGAKU少年は、無謀にも突っかけ草履で磯を攻め、あちこちに傷をつくり、それを勲章としていた。その時の記憶が呼び起こされ、この先にあるのは海かと想像する。
「お、洞窟だ。」
大きい岩の上から先をみると、山なのか、こちらに迫ってくるかのような威容をした壁に一部穴が開いているのが見える。この先が、海なのだろうか。海の入江的なものと繋がっていると思うと、ロマンだな。良い景色も見れそうだ。こっちの世界にカメラはないのだろうか。現実世界では飯を撮ったことすらないのに、ふとそんなことを思ってしまった。




