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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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ep.38

 

 ミア、セバスと別れて坂道を下る。HPは減ってしまったが、クッキーまでいただいたし、足取りは軽やか。【欲望の僕】君もご満足いただけたようだ。坂道を下り切って、ギルドへ続く大通りから一本逸れて、例の店へ。久しぶりな気もするが、相変わらず、建物周囲の植物がおどろおどろしい。山積みの魔道具もそのままだ。崩れず保っているのがすごい。まともに商売やってけてんのかね。


「あんたかい。金は持ってきたんだろうね。」


 入るなりこれだよ。さっきの純真な出会いを返してくれ。まあ、相手が態度の悪いババアなら、こっちも気を遣わなくて済む。そういえば、セバスから鑑定を拒絶する方法を聞くの忘れたな。【再生】代として聞き出せばよかった。


「金はないが、こちらは買取はしていないのか?」


「モノによるね。あんた旅人だろ?ギルドで売ればいいじゃないか。」


 ぐう。こっちの世界の知り合いは、やけに勘の鋭いやつが多い。このババアも嫌なところを突いてくる。俺だって好き好んでこんな場末の魔道具屋まできたりしねえよ。


「少し、事情があってな。」


「事情ってのは()()かい?」


 チッ、こいつ。俺の情報が筒抜けじゃないか。いつの間に見やがった。ここいらのNPCは一体どうなってやがんだ。プレイヤーでも勝手に人のこと除いたりはせんぞ。一部を除いて。


「この街では、人のステータスを勝手に見てもいいのか?」


「嫌ねえ。見られたくなければ、隠しておきなさい。」


 断りもなく鑑定したことを責めると、至極真っ当な返答が。そうだよな、どこの世界も、情報がものをいう。知られたくないことは隠さなければならないのが世の常だ。だが、その方法がわからないから、困ってんだろうが。


 意趣返しとばかりに、鑑定を試みるが、名前すらも見えない。セバスと違って、キャンセルかけてくる様子もない。絶対に見られないことがわかってるんだろうな。目の前のババアは、満足そうに悦にいっている。くそ、【破壊】の力、お前に使ってくれようか。HPないんだった。


「ローハかローナは?」


 分の悪い戦いをするつもりはない。早めにおさらばしようと、本題を切り出す。ぼったくり価格で回復薬を売っているなら、回復薬の材料は買い取ってくれると踏んでローハとローナを一株ずつ取り出す。


「群生地は元に戻ったって聞いたわよ?」


 誰かさんのおかげでねえ、と話すババア。思っていたよりも耳ざといな。ここに籠って、情弱相手にぼったくり商売しているだけのババアじゃなさそうだ。群生地が焼けたままであれば買ってくれるかもしれなかったのか。わざわざ俺から買う必要も義理もないしな。いや、義理はギリある。なんつって、薬草なんて、植えなければよかった。


「いらんか。」


「買わないとは言ってないじゃない。見せな。」


 インベントリに戻そうとする俺の手を静止して、まじまじと草を見始める。なんだ、結局要るんじゃないか。


「ローナはどれだけ出せるんだい?」


 ローハはいらないのか。結局ローナがなんに使われるのか分かってはいないが、このババアいとってはローハよりも価値のあるものだということだ。


 とりあえず、インベントリにあるローナを全部出す。


「これをこの量定期的に持って来れんのなら、これくらいだすよ。」


 と言ってババアが提案してきた額は冒険者ギルドでローハの納品をする額の5倍ほどであった。マジかよ。そんな価値のある草なの?これだけあれば、定期的にコーヒー飲めるじゃん。確かに、最初群生地の採取ポイントで取れたのは一株だけだったか。冒険者ギルドでローナの価格調べておくべきだった。今思っても後の祭りだが。


「足元見てるんじゃないだろうな?」


 詳しい値段は忘れたが、ここの回復薬と、冒険者ギルドで売っている回復薬は結構な差があったはず。まともな商売をしているとは思えない。ここを利用するしかないのが、運の尽きだが。


「失礼ね。金も持ってないガキから巻き上げるほど落ちぶれちゃいないよ。」

「嫌なら、売らなければいいじゃない。冒険者ギルドのあとは牢屋、かしらね。」


 確実に足元見られているだろうが、お願いするしかない立場ってものは辛いもんだな。ここで金を作らないと今日を生きることすら難しい。


「分かった。売ろう。」

「定期的というのは、どのくらいで持ってくれば良いのか?」


「最初からそう言えばいいのよ。」


 誰が言ってんねん。


「手に入ったら、都度持ってきてくれていいわ。」


 都度か。毎回ここまでくるのは面倒臭いが、まあデイリーだと思えば、苦ではないか。キャンプキットを買って、畑周囲でログアウト、ログインして、ローナ摘んで、持ってくれば、そこまで手間ではないか。


「他は?」


「他ね、これとか。」


 手持ちにあるのはコーヒー豆に灰、なんか分からん鱗くらいだが。売り物になるとしたら、ソレしかないだろうな。


「この鱗なら、数枚。」


「あんた、これをどこで?」


 鱗を見せると、ババアの表情が少し変化した。珍しいものなのか、ババアにとって所縁のあるものなのか。貴重なものなら、とっておいた方がいいのか?レアなものを渋ってしまう、ラストエリクサー症候群だな。換金アイテムなら換金アイテムとわかるように説明があるだろうし、ババアも反応しているから、そんじょそこらのアイテムではないのは明白だ。価値を測ってからの話だな。


「最初はローハの群生地で、それ以降は自分の畑で。」


「自分の畑?」


「ああ、城壁の外に勝手にローハを植えて実験している。そこに落ちていた。」


「さっきのローナもそこで?」


「ああ。群生地ではなかなか手に入らなくて。畑で育てているやつだな。」


「そこで取ったローハも見せなさい。」


 何か思うところがあったのか、先ほどいらないと言った薬草も見せるよう行ってくる。



「最初からそういえばいいんだ。」





皮肉屋

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