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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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38/52

ep.36

 

 そうと決まれば行動は早かった。周囲に人がいないことを確認し、採取ポイントで薬草、ローハを摘む。採取ポイントが枯れたら、次は自分の畑に移動。門の近くは通らず、離れた道なき道を移動する。畑についたらまた少し採取する。こちらではローナも一緒に。


「ん?また鱗だ。」


 よく落ちてるな。なんか薬草好きの有鱗目でもいるのだろうか。今は何があの女店主のお眼鏡にかなうかわからない状態だ。蜘蛛の糸にすがる思いで鱗も一緒に拾っておく。無農薬だからな、ほどほどになら食ってもかまわんぞ。有鱗目が食べるなら、薬草に群がる虫の方か。


 畑での採取も終えたら、東門の方へ向かう。監視網を抜けられるとしたら、東門の方だろう。俺が【鑑定】の熟練度を上げるんなら、西門を選択する。畑の薬草に水もやっておきたかったが、何が起きるかわからないため、MP節約でまたの機会に。手を合わせて、畑の繁栄と共に自身の身の安全を祈願する。


 戦闘を避け、東門へ。いつも通り挨拶し街へ入る。ここでは、何も言われることはなかった。俺の思い過ごしなのか?そうだったら良いんだが。


 今回は、前回選ばなかった、坂道の方を選択する。前回の道は商工通りにつながり、その先が冒険者ギルドだ。それに、鍛治屋の女将さんが言っていた、園芸店はこちらにあるかもしれないし。今は急を要しており、ゆっくりしている場合ではないんだが、落ち着いた時のために場所は知っておきたい。


 坂道はあまり人通りが多い道ではないのが救いだった。女店主の店まではスムーズに行きそうだな。


 上り坂の終わりには、大層豪華な邸宅があった。立派な門、本宅なのか建物までも結構な距離がある。庭もついていて、噴水もある。本当にこの街は水資源が豊かだよな。川なんてないのに。まあ、ファンタジーか。天気も良く、噴水から走る水飛沫もキラキラと輝いて見える。なんで、こんな素晴らしい日に俺だけハードコアしてるんだよ。俺もこう言うところで、のんびりしてえよ。


「いや、待って!今は違うぞ!」


 ゆっくりしたいと思った途端、下り坂を降る足が重くなった感じが。久しぶりに、【欲望の僕】が本領発揮した気配。今は厳しいからと足を動かそうとするが、下りなはずなのに今まで登ってきた坂道よりも足が重く感じる。振り返って邸宅の方を向くと体全体が軽くなったような気が。振り返って坂道の方に行くとまた重くなる。振り返ると、軽くなる。振り返ると、重く


「あら、何をやっているのかしら。」


 背後から、何やら育ちの良さそうな声が。うわー、終わった。多分ここん家のご令嬢とかだろ。冒険者ギルドに火事の件で糾弾される前に、この令嬢に変質者として官憲に突き出される方が早くなった。放火魔と変質者、どちらも嫌だが、放火魔の方がまだ弁明の余地がある。やっぱり、正直に話したほうが良かったんだ。時間戻してくれねえかな。金持ちの家の前でくるくる動いている正体不明の男がいたら、俺が少女なら確実に大人の男の人を呼ぶ。


「ああ、素敵な庭だと思って。思わず、体が動いてしまった。」


 我ながら、苦しい言い訳だが、なんとか乗り切るしかない。変質者だけは嫌だ。振り返りながらいうと、目の前には綺麗なシルバーブロンドの華奢な少女。ピッシリとしたシーツを着こなした壮年の男性を後ろに立たせ、邸宅の方へ歩いている。


「あら、そうなの?ぜひ、中に入って観て行かれて。」


 良いでしょ、セバス。と装飾のなされた鉄の門を開けて中に入るように促してくる。やはり、執事といえばセバスチャンだよな。よくわかっている。ここの運営はこういうところで奇を衒わないから、おじさんに優しい。お気持ちはありがたいんだが、今はちょっとな。


「お嬢様、正体のわからぬ者をお屋敷に入れるわけには。」


 恭しく提言するセバス。そうだよな、セバス。こんな何処の馬の骨ともわからん男を中に入れるわけにはいかんよな。そういうことだ、またの機会、があるかわからんがその時はよろしく頼む。


「そう。」

「私は、ミア。ミア・オール・アインス。こっちは執事のセバスチャン。あなたは?」


 ニコニコと名乗る少女、ミア。その後ろでこちらを注視し、眉間の皺が一層深くなるセバス。確実に鑑定()られているよな、これ。おそらく、俺の称号も丸裸だろう。警戒すべきはプレイヤーだけではなかったか。だが、NPCが見ても火事とは繋がらんだろうし、執事ということで、上の者の命令がなければ口外することもあるまい。執事として、仕える者の危険分子の分析は大切なことなのであろうが、そっちがその気ならと、セバスチャンを鑑定する。



 セバスチャン ?⁇

 ⁇?



 名前はわかったというか、名前しか分からなかった。なんならミアから聞いて知ってたし。日本人なら、当てずっぽうでも大半が当てれるだろうし。だが、他の情報は全く分からず、何やらキャンセルされた雰囲気。セバスチャンは涼しい顔に戻っている。取るに足らん相手だと判断されたようだ。それは良いんだが、鑑定から身を守る方法教えてくれない?


「GAKU、でいい。つい先日こちらにきた旅人だ。」


 ばれたんなら仕方がない。一時的に身を隠すのに協力してもらおう。本来、権力というものに近づきたくはないのだが、この令嬢が権力の中枢と近いとは考えにくい。【欲望の僕】の導きでもあるしな。


 あ。【破壊と再生の使徒】ばかりに気が行っていたが、よく考えれば【欲望の僕】も結構アウト寄りか?なんなら令嬢を守るという手前、【欲望の僕】の方が危険なのか?


「まあ!あなたが旅人さん?」

「来るとは聞いていたんですけれど、初めてお目にかかりました。」


 これで正体は分かりましたね、と屋敷の中に入るよう促してくる。セバスも否定しないところを見ると、入っては良いらしい。多分何かあってもセバスがいるという信頼もあるんだろうな。







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