ep.35
まずいことになった。このままだと、冒険者ギルドを利用できなくなる可能性が。兵太夫で鑑定の性能を測りたかったのだが、俺が鑑定されるんじゃ元も子もない。冒険者ギルドには鑑定能力の高いスタッフなぞ掃いて捨てるほどいることだろう。
「いきなりどうしたんだよ。」
「いや、よく考えたら人鑑定したことなくてな。どんなもんかと。」
「そうだな、、、」
兵太夫が言うには、暗黙の了解として、人を鑑定する時は同意が必要とのこと。だが、鑑定等スキルにはマスクデータとして熟練度があり、鑑定を繰り返すことで熟練度が上昇すると考えられるため、街中で鑑定を繰り返している輩もいるとのこと。
「熟練度か。」
「そうだなー、たとえば、こないだ鮎渡した時鑑定しなかったか?」
「した。」
「何が出てきた?」
「名前とこの街近辺で取れるってことくらいか。」
「俺には、さらに詳しい生息地や生態、雌雄なんかも見えるんだよな。」
ほー、そう言うことなのか。見た回数や、知識によって鑑定の性能が変わってくるってことか。ここにくるまでに、不届きものがいた場合、俺の称号も見られているってことになる。これに関しては、見られていないことを祈るしかないか。
冒険者ギルドが俺を呼ぶ目的は群生地の再生の件だけだとは思うんだが、さすがに楽観視することはできない。小火の犯人として、だけでなく件のお尋ね者との関わりなんてのも根掘り葉掘り聞かれることまで想像に容易い。いつの間にか、俺がお尋ね者になってしまった。
どうしよう。あの辺りを彷徨くことができなくなってしまった。どうしよう。現状でも金がないのに、クエストを受けるどころか、魔物のドロップを金に変えることすらできなくなった。あー、やっぱりコーヒー牛乳は余計だったか。
ここは兵太夫を信頼して、お互いの鑑定をすべきか?いや、ギルド職員の鑑定性能の方が高いはずだから、ここで兵太夫に見せても比較対象にならない。サリアなんか【気配希釈】も通じなかったし。ブルーもか。なんとか隠す手立てはないのか?スキル欄を見ても隠す手立ては見当たらない。
「もしかして、詰んだ?」
これから寝ると言う兵太夫と別れて、呆然と立ち尽くす。俺の【DW】人生終わったなあ。唯一の解決策として、森にいるというボスを倒して、次の街に行く事だろうが、今の俺には無理。
「あ!Right君なら!!」
ライト君は、なんかあったら助けてくれるって!でも、なんて説明する?アインスの冒険者ギルドを利用できなくなったから、次の街に連れてってくれ?初期装備のおっさんを?これに関しては、頼む側にも礼儀があるよな。せめて、装備更新して、ある程度戦力になれる状態で、前衛かってもらうとか。でもその頃には、ライト君たち、もっと先に進んでそうだしな
ライト君に頼るのは、また別の機会にしよう。となると、残す知り合いと言えるのは鯛の鯛だが、彼は金属専門。鎧なんて装備できないだろうし、剣も無理。俺に寄与することは今のところなさそう。【破壊】の力でなんとかいけるか?いや、死んだら神殿行き。神殿にはタリアがいる。あれも油断ならない。サリアとも繋がっている可能性があるし。
「え、そうじゃん。神殿もつかえない?」
まずい。本格的にまずい。神殿は流石に独立した機関であるとは思うんだが、良いことをした人を探すという名目なら情報提供だってやぶさかではないだろうし、何より、再生とやらに豊穣神の力を借りている可能性だってある。同じ理由で、宿屋もなし。あそこもギルドから推薦されていたはずだ。
「んー、詰んでるなあ。」
兵太夫が言ってたキャンプキットは、街の外でもログアウトできる簡易ポータルのような代物らしい。一回使い切りだが、比較的安価で、それこそ始めたてのプレイヤーでも買えるレベル。だが、その枠に俺は入らない。
「なんとか金を作らなければ。」
結局そこに行き着く。世の中金だな。間違いない。ただ、冒険者ギルド以外で、となると、
「ああ!あそこがあった!」
唐突に思い出した、魔物の素材を得ることができる場所。道を尋ねたきりだが、回復薬や魔道具を取り扱ってたはず。それなら、薬草とか買い取ってくれるかもしれない。そこで金を作って、キャンプキットを買い、街の外でログアウト。死んだら終わりのハードコアモードだ。
「どうしてこんなことに。」
「俺はただ、趣味に生きたいだけなのに。」




