ep.34
「はい?」
ワールドアナウンス、ではないよな。俺個人に向けたものであってる?【破壊と再生の使徒】?あからさまに物騒だぞ。序盤に取れちゃダメなやつなんじゃないか?条件を達成した記憶もないんだが。本当に俺か?
疑問符だらけだが、門で立ち止まっていると、衛兵に怪しまれる。どこか腰を据えて、確認したいところだが、あいにく気軽に立ち寄れるカフェみたいな場所を知らない。
「はぁ〜。」
タリアに教えてもらった大衆浴場にきた。ここは相も変わらず、落ち着いている。番台にはお婆さん。お婆さんとの会話に変化はなかった。良かった、これでお婆さんとの好感度が変化していたら、風呂どころの騒ぎじゃなかった。
まず、問題の称号【破壊と再生の使徒】をみてみる。
【破壊と再生の使徒】
この世界で初めて、一定範囲のフィールドオブジェクトを破壊し、その範囲内のフィールドオブジェクトを自らの手で再生したものに与えられる。
「えーと。全く身に覚えがありません。」
説明を読んだが、全く身に覚えがない。いや、正確には、ある。つまり、あの火事は俺が起こした、ということでファイナルアンサー?あの辺の木々や群生地を焼いたことが破壊。その後で焼いた範囲内にある群生地に薬草を植えたことが再生?再生ってことは、群生地が復活したってこと?早くない?自分で壊しておいて、自分で直したら手に入る?それ、なんてマッチポンプ?
「風呂から上がったら、観に行かねばならんか。」
風呂入った後は、ゆっくり資料室に篭ろうって思ってたのに。流石に昨日の今日で群生地が復活したとは、到底考えられないが。システムがそれを認めているから、そうなんだろうな。自分の目で確認せにゃならんか。豊穣神様、ちょっと本気出しすぎたんじゃないの?
次に付録のスキル【破壊】と【再生】。
【破壊】
破壊のエネルギーを司る。自身のHPを使用して、行動に破壊の力を乗せる。
?⁇
【再生】
再生の力を司る。自身のHPを使用して、行動に再生の力を乗せる。
⁇?
「ふん。よう分からん。」
鑑定で詳細を調べてみても、よく分からなんだ。行動にというのも、なんとも曖昧。攻撃には【破壊】、【回復】は再生に、ってことだろうか。群生地に薬草を植えたあの行為も【再生】の範疇ってことなのか。それに、今のレベルじゃ分からない項目もある。【欲望の僕】にも分からない項目あったような。今も時々体重くなるんだよな。
風呂に浸かって、落ち着いてみてみたが、結局何がなんだか。ひとまず、俺に相応しくない称号なのはわかったが。まあ、こんな大層な力、使う機会は少ないだろうし、現状保留で。こないだボスを倒したプレイヤーに渡れば良かったのにな。でも、憎き角野郎と出会った時には、ありがたく使わせてもらおう。
風呂から出て、休憩所でゆっくり。こないだ利用した時は、あと寝るだけだったのですぐ帰ったが、ここはゆったりとした休憩スペースも完備していた。初期装備なのだけが、不満材料。服屋も候補に入れておかねば。
十分に銭湯を満喫して、外に出る。今日は少しお金があったので、コーヒー牛乳まで飲んじゃったよ。こういう無駄遣いを無くさなきゃな。いや、風呂上がりの牛乳は必要経費か?
とりあえず、薬草の群生地を観に行かねば、ということで、風呂を出て門の方へ向かっている。状況が状況なら、また神像でも彫らないとな。まあ、でも畑とは違って、群生地なので、誰かに見つかる可能性もあるし、どうするのが正解だろうか。
門を過ぎ群生地に向かって歩く。戦う気はないのだが、魔物を鑑定しながら進む。相変わらず、鶏やネズミはレベルが高いまま。コレ、下がるときはくるのかな。魔物の発生条件に親個体が絡むなら、多分この上がったレベルの恩恵は受けそうだけど。そうではない、自然発生というのであれば、レベルは最初の頃に戻っていくんじゃなかろうか。あの小川沿いの森林が元に戻ればこちらに大量発生した虫も減っていくだろうし、ちょっとしたイベントだったことにせんか?
「これは、」
小火の起きた跡地に着くと確かに、数日前に小火が起きた現場とは思えない、異様な光景が目に入ってくる。俺が薬草を植えた採取ポイントだけ異様に青々とした薬草が生い茂っている。近づいてみると、採取可能のアイコンが表示され、見た目通り、群生地が復活していることを示している。あまりの光景に、開いた口が塞がらない。
「お前、すごかったんだな。」
群生地前で愕然としていると、こちらに話しかけてくる声が。最近も聞いたな。
「いや、俺も何がなんだか。」
声の主はやはり兵太夫。こいつ、ずっと釣りしていたのか?どうやって?
「ずっと、釣りしてたよ。キャンプキット使ってな。飯はお前が作ってくれたのもあったし。」
俺の心の声が伝わったのか、カラクリを明かしてくれる。キャンプキットとは?昨日見て回った範囲では見当たらなかったような。詳しくみることはなかったが。
「あ、そうそう。ギルドの人がお前探してたぞ。」
「ん?なぜ?」
「ここに薬草植えてたの見られてただろ?それで。」
俺も声かけられたけど、俺は関係ないって言っておいた。お前の名前も伝えておいたから、冒険者ギルドに行けば、話しかけられるんじゃないかと兵太夫談。コイツ、なんで余計なことを。
「なあ、一緒に行かないか。お前も共犯じゃないか。」
「パス。そんな暇あるなら釣りしとく。」
報奨金もらえるんじゃないかってわざとらしく笑う兵太夫。俺だってそんな暇あるなら、ペットの犬探して愛でてえし、吸いてえよ。
いや、ちょっと待て、ギルドに呼ばれてるのって、本当に群生地の再生の件なのか?俺が火事を起こした張本人だってバレたのなら、お咎めなしとは行かないんじゃないか?仮に俺が認めなくても、称号ついてるから見られたら、絶対バレるだろ。
「なあ、兵太夫、少し鑑定させてもらえないか?」
「なんだよ、気持ち悪いな。」
「俺もさせてもらえるならいいぞ。」
「、保留で。」




