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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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33/47

ep.31

 

「また、世話になる。」


「はあ、あなた、またですか。」


 いつもの景色に、いつもの対応。まるで実家のような安心感。すまないな、いつまで経っても、金がないんだよ。他の旅人は金持ってそうだよな。なんでこんな格差ができているんだろう。


「ここに風呂はないのだろうか。」


 タリアの嫌そうな対応を躱し、風呂に入りたかったことを思い出す。道中思い出していたが、宿屋は確か250リルだったはず。今の俺に250リル出せる余裕などない。神官が入る風呂を少し借りさせてくれればいいんだ。


「街の共同浴場にでも行ってください。」


 そういうと、タリアはその浴場の場所を教えてくれる。こいついいやつなんだよな。神に仕えているだけある。礼を言い、教えてもらった共同浴場へ。待て、俺の持ち金で入れるのか?


「なんというか、銭湯だな。」


 西洋チックな世界観から、一気に大正ロマンに引きずられる。日本の下町の銭湯のような雰囲気。俺としては落ち着いていいのだが、開発者の趣味か?


「はい、100リルね。」


 番台はおばあちゃん。良い、銭湯はこうでなくてはな。風呂代もタオル付きで100リルぽっきり。これなら俺にも出せる。中に入ると、ますます古き良き日本の風景。流石に富士山は描かれていない。脱衣所にて服を脱ぎ、中に入る。タイルではなく、石で整備されている、露天風呂的な雰囲気。露天ではないが。体を洗い、湯に浸かる。広い風呂で一番嫌なことは人が多くて手足を伸ばせないこと。その点、ここは浴槽も広々、そこそこ利用している人も多いのに、手足を伸ばしても人の迷惑にならないくらいの密度。


 風呂上がりにコーヒー牛乳を買う金もなし。初期装備を着て外に出る。風呂上がりに初期装備というのも、イマイチ風情がない。街着用の甚平などあることを期待しよう。


「教えてくれてありがとう。良い湯だった。」


 神殿に帰り、再度タリアに礼を言う。風呂に入り、あとは寝るだけ。ベッドは硬いが、それにも慣れた。今日も俺一人の利用。みんなちゃんと宿をとっていてえらい。


「まあ、今日は多めにみましょう。」


 神像の前に佇むタリア。時折光る神像と彼女との2ショットは彼女の神秘的な魅力と相成り、掲示板で高値で取引されるのは、また別の話。



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「今のところ問題なさそうか。」


 とあるビルの一室。サービス開始時の緊張感は解け、落ち着いた雰囲気のあるオフィス。話しかけられた部下は何やら眉間にシワを寄せる。


「いやー、そろそろ第2エリアに到達しそうな人たちもちらほら出てきてますし、順調ですけど、」


「おお、ならええやんか。何をそんな難しい顔しとんねん。」


 予定通りやんか、と部下からの報告を聞いた課長は機嫌よくコーヒーを飲み込む。それをみて、部下はさらに心配そうに話す。


「進捗は予想通りですけど、ちょっとアクシデントが。」


「アクシデント?」


「はい。ここなんですけど。薬草の群生地付近が火事で燃えちゃって。燃えた経緯もなんとも、こんなことになるのが不思議なくらいで。」


不正(チート)は使われてないんやろ?じゃあ、それこそ事故で済ませてええんやないか?」


「はい、チートは確認できてないですけど、そのあと、ほら。」


 部下は課長に見てくださいと、一人のプレイヤーのログを見せる。


「ほんまか。」


「ほんまです。」


 ログを確認した上司は、口をあんぐりと開け、コーヒーをすする手が止まる。課長の言葉を真似する部下。


「終盤に取れるやつが出てくるかもしれん想定やったんけど。いや、でもそんな簡単にはいかんやろ。」


「それが、このプレイヤー例の【欲望の僕】の。」


「ほんまか?」


「ほんまです。」


「それなら、取れるかもなあ。」


「取れちゃいますね。なぜか信仰も高いですし。」

「まあ、このプレイヤー、そんなに攻略に積極的じゃないのが不幸中の幸いですかね。」


「地獄に仏、ただし閻魔様も同席してるくらいやな。」


「いいっすね、その例え。」


「せやろ。使ってええで。」


 結局、このプレイヤーの監視強化しようかというところに落ち着き、通常作業に戻る部下だった。





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