ep.28
「さあ、焼けたぞ。素焼きだがな。」
良い色に焼けている。皮はパリパリ。ところどころ焦げ目があり、香ばしい香りが漂っている。良いサイズだっただけあり、食いでもありそう。さすが兵太夫。良い腕をしている。
「若干さもしいが、悪くないな。」
そういう割には、結構がっついているじゃないか。
「では、俺も。」
人が食べるのをみるだけなのは、我慢ならん。食わせてくれる約束だったからな。遠慮なくいかしてもらう。かぶりつくと、身はふっくら。良い水分量で、焼き方はバッチリ。やっぱり少し塩味が欲しかったが、これはこれで悪くない。素材の味がいいな。残りの焼いていたやつを兵太夫に渡し、バケツの水をかける。保険でウォーターボールも。
「そこまでしなくても。」
「昨日火事があったからな。念には念を、だ。」
そういうもんか、と納得してくれたようだ。ふと、気になることを聞いてみた。
「釣り道具はどうしてるんだ?」
兵太夫は釣りをするために、こちらにきたと言った。釣具屋でもあったんだろうか。だとしても、兵太夫が言っていたように海はないから、釣りはそこまでメジャーなものではなさそうだが。アインスの街、結構広いからな。まだまだ言ったことない場所だらけだ。専門店があってもおかしくない。
「いや、自分で作ったよ。」
「【工作】スキルをとってな。その辺の木とか石で色々作った。」
「おお、それはすごいな。」
ある意味、俺の目指している趣味に生きるの一極集中型ともいえよう。素直に尊敬してしまった。同時にモチベーションも上がる。俺も負けてはいられない。
食べ終わった後もしばらく情報交換して別れる。そろそろ、釣りのホットタイムに差し掛かるらしい。兵太夫はなんともといった、【太公望の加護】というのをもらったらしい。キャラクリの時から、釣りのことしか考えていなかったんだろうな。俺はなぜ【豊穣神の加護】だったのか。兵太夫曰く、掲示板で有志が考察、検証しているらしい。
兵太夫とわかれて、一人寂しく作業を再開する。話しながらでも、二人でいた時の方が効率は良かったな。まあ、残り少しだ。おかげで腹もいっぱいになったし。ひとまず、この辺の採取スポットは植えれそう。
最後の一つを植え終え、大袈裟に手を叩いて豊穣神に祈る。次来るときには、どうなっているのか。少なくとも、少し成長してくれていれば、嬉しい。
薬草を植える作業を通して、フィールドでも自由に農耕できることに気がついた。いずれは自分の土地で、大手を振って色々栽培したいが、現状その手段はない。街の外でも自由に植えていいなら、無限の畑が手に入ったも同義。楽しくなってきたな。あまり人のこなさそうなところで、色々試してみたいことがある。とりあえず、今日植えたところを見直して回る。
「おや、今なんか動いたような。」
最初に植えた地点。火元に一番近い地点に帰ってきたときに、視界の端に何かが映る。そちらを注視しても、何もいない。まあ、虫かなんかが通ったんだろ。火災の生き残りか。さすがの生命力だ。ローハを植えた地点に変化なし。さすがに成長の様子も窺えなかった。そりゃそうだよな。
人に見つからず、色々試せる場所を探しにいく。できれば、街に近いところがいいんだが、街に近いことと人通りが多いことは比例する。東門からは荒野が続くのであれば、西門方面が選択肢になるだろう。水源もあるし、キャンプファイアーした辺りがちょうどいいのだが、焼けてしまった。今一番人目を引く場所と言っても過言ではない。
この際、水源の確保は諦めるしかないか。とりあえず、門の入り口まで戻ってきた。こっち側を見たのは初めてかも。いつもデスポーンしてるからな。城壁に沿って、歩いていく。西門と東門しかないのであれば、門から一番遠い城壁付近が一番人目につかないのではと考えた結果だった。東門の方へ歩いていくと、だんだん風景が変化していっているのがわかる。何か変わったものでもあれば、とか考えていたが目に見える範囲では何もなかったように思う。現状周囲に人は見えないが、今だけかもしれん。知る人ぞ知る、人気狩り場とかの可能性もあるしな。
「街からの移動を考えれば、この辺だな。」
街から遠くになると、移動に徒労する羽目になるのは目に見えている。だめで元々、こういうのはトライアンドエラーだよ。
背の高い草の生えているポイントを目安に、石突で適当に線を引く。これが、俺の畑のスタート地点だ。線を引いただけなのに、なぜか感慨深いな。残っているMPを使い、水魔法で足元を濡らす。杖を使って、軽く掘り、残っていたローハと少しだけ持っていた何者かわからないローナを埋める。今回は、上に土魔法の泥を被せてみた。土壌の性質がわからないから、草木灰はなし。雨が頻繁に降るなら、日本に倣って、草木灰を混ぜてみよう。そして恒例のお祈り。うまくいけば、ここで薬草が取れる。それぞれ数が揃ったら、接木をしてみよう。予想通りコイツらの生命力が強ければ、果物の苗でも買って、大量に生産する。いっぱい取れたら、喫茶店の紳士にお裾分けしてやっても良いかもしれんな。隅っこの方に、これまた手に入れていた、謎の種子を埋めておく。これが何になるのかも楽しみだ。一緒に手に入ったであろう、謎の鱗も気になるが、あの辺で爬虫類みなかったし、魚のものが飛んできていたのかもしれん。
「最初の畑としては、悪くないな。」
顔に泥がついているが、達成感とこれからの展望に思わずにやけてしまう。ここは無くなっても仕方ないが、一応所有権を示しておかねばなるまい。今度ナイフでも買ってきて、木から神像でも掘り出すか。簡易的なものでいいだろう。豊穣神、みたことねえし。
そんなGAKUを見つめる視線があることに、気づくことはなかった。




