ep.27
「兵太夫、だったな。」
「お。覚えてたか。お前は、GAKUだったよな。冒険者ギルドぶりだ。」
「で、何やってるんだ。」
「いや、薬草の群生地が燃えてしまってな。薬草植えたら戻らんかと試していたところだ。」
「へー。変わってんな。」
「そういう兵太夫は何しに?」
「釣りに決まってんだろ。海釣りはまだ海が見つかってないからな。この先の川で釣りしてんだよ。」
ここらが燃えてたのはびびったけど、移動は楽になっていいな、と笑う兵太夫。
「もしかして、お前が放火犯なんじゃ?」」
「バカ言え。火つけるスキルなんか持っちゃいねーよ。虫も多くて餌にも困らんのに。」
「釣りはするのに、魚は食べないのか?」
「料理もできないからな。ギルドやら店舗に釣った魚おろして金に変えてる。」
「帰りに薬草とって小銭稼ぎしてたのにな。まあGAKUが復活させてくれるならありがたい。」
「水魔法持っていないか?持ってたら手伝え。」
こいつ、恩恵にあやかろうって魂胆なら、そうはいかない。俺のMPも有限なのだ。お前のMPも提供しろ。
「別に魔法じゃなくても、水汲んでくればいいんじゃ。」
そういえばこいつ釣り師だったな。バケツくらい持っているよな。ちょっと待ってろって言い、川の方にいき、水を汲んできてくれる兵太夫。こいつ、いいやつじゃないか。
「なんか、ジロジロ見られたがなんかあったのか?」
「ああ、なんでもお尋ね者がこの辺りに潜伏して、その失火だったんじゃなかろうかと。」
流れるように責任転換に成功する。すまんな、顔も知らぬお尋ね者。そういう立場になった自分を恨むんだな。
「案外、お前が犯人だったりして。罪滅ぼしでそんなことを?」」
兵太夫は鋭い。これが釣り師の嗅覚なのか。そんなわけないよと言って交わし、作業を続ける。兵太夫も水汲みを手伝ってくれた。どうやら、人の気配であの辺りの川は魚が逃げている可能性があるとのことだ。時間が経った頃に、トライしてみるらしい。暇つぶしだとしても、話し相手になってくれるだけでもありがたい。MPも減らないし。ただ、腹は減った。
「兵太夫、魚は持ってないか?」
「ああ、何匹かはあるが。」
「それ譲ってくれ。料理して返そう。一尾食わせろ。」
「GAKU、料理人だったのか。」
そう言って、数匹渡してくれる。だが、困った。丸のままだった。ウサギだったら、肉だけ残してくれてるから、油断していた。
譲ってもらった魚を見て手をこまねいていると、不思議に思ったのか、兵太夫がこちらを見てくる。
「どうした?」
「いや、丸のままだったんでな。ナイフを持っていないか?」
お前料理人じゃなかったのか、とナイフも貸してくれる。すまんな、金はないんだ。もらった魚は、鮎のように見える、いかにも川魚のフォルム。鑑定すると、
アイン鮎
始まりの街、アインス周辺で取れる川魚。臭みがなく、淡白な味わい。
やはり鮎だったか。というか、この街アインスっていうのか。ドイツ語かな?初めて知ったが、どこかで見ていただろうか。てか、王都があるなら、そこがアインスじゃないのか?もしかして、ここが王都なのか。運営はここからこの世界を構築し始めたのだろうか。
まあ、いい。【精密操作】のおかげか、魚を捌くのもスムーズ。良いサイズだったので、今回は内臓も除去。うるかなんてのも乙かもしれないが、あいにく塩がない。
「ん?塩がない?」
しまった。見切り発車にも程がある。このままじゃ鮎の素焼きになってしまう。自分から料理させろと言った手前、今更塩がないなんて、言えない。だが、もう内臓は取り出してしまったので、引き下がることもできない。一縷の望みにかけて、恥を忍んで兵太夫に聞いてみる。
「あの、さ。塩って持ってない?」
「お前、塩も持ってねえのかよ。俺、料理しねえって言ったよな。持ってねえよ。」
「そうか、すまんな。素焼きだ。」
塩は持ってなかった。こうなりゃ、開き直って素焼きで食うしかない。昨日見た感じ清流だったし、鑑定結果も臭くないって出てるし、素材の味を楽しもうじゃないか。昨日の残りの枝を組み、【生活魔法】で火をつける。
「うをっ、火魔法使いか?」
「いや生活魔法だ。」
どうやら、兵太夫は【生活魔法】の存在を知らなかったらしい。鮎を提供してくれた礼にギルドで取得できることを伝える。
「それ、本当か?掲示板でも聞いたこともなかったぞ。」
「掲示板があるのか。」
俺は掲示板のがあることを知らなかった。色々情報交換をしたり、同じ趣味で繋がったり、募集かけたり、結構便利らしい。だから俺、フレンド一人しかいないのか。みんな、仲良くやってたんだな。自分が、友達少ないことに気付かされ、落ち込む。鮎が焼き上がるまで、もう少し。それまでの間、思い出したかのように兵太夫とフレンド交換する。これで二人目だ。俺はこれからだ。
「君たち、その火熾したのはどっち。」
焼けるのを待っていると、血相を変えたNPCがこちらに走り込んでくる。あ。確かに、配慮が足りんかったか?ここ、小火があったばっかりだもんな。そんなところで火使って料理するやつ、普通じゃないよな。兵太夫が無言でこちらを指差している。コイツ。確かに火を熾したのは俺だが、これは、二人のせいじゃん。
「あ、すみません。私です。」
「君か。これは火魔法か?」
「いえ、生活魔法です。」
「そうか。君たちも知っていると思うが、ここで昨日小火があってね。ちゃんと消してから移動するように。」
しっかり釘刺される。大丈夫。その辺のマナーは弁えているつもりだ。火魔法かどうか聞いてきたってことは、火魔法が使われた痕跡でもあったのかな。
「それと、ローハを植えているのは見ていたよ。ギルドを代表して礼を言うよ。」
「いえ、どうなるかやってみただけですし。生えればいいのですが。」
男は礼を言って去っていく。辺りを調べているのはギルド職員であっていた。薬草を植えていたことを感謝された。まあ、これでチャラということにしてくれ。こっちは、鮎が焼けたので、そちらに夢中だ。貴方の分はないからな。




