ep.21
今回も良イベを引けた。前回のでお眼鏡にかなったのかもしれない。だが今回は何を作ろうか。調理場に立ってみると、明らかに前回よりも多い食材、調味料。店主も料理をするようになったのかな。俺に料理をさせようとしているのか、他のプレイヤーが持ち込んでいるのか。3択だな。だが、選択肢は広がるので助かる。
前回甘いものだったからな、今回は軽食でも良いかな。コーヒーはジャンクなものとの組み合わせも、案外悪くない。口の油をさっぱり洗い流してくれる。炭酸飲料の方が合うのは言わずもがな、だが。今回は立派な腸詰もあることだし、ホットドックにしようかな。料理スキルについても知りたいし。
「前回甘いものだったので、今回は軽食でも良いか?」
「俺は構わん。」
店主は問題ないといい、奥の紳士を見やる。やっぱり紳士の分も作るのだな。分かってはいたが。紳士は無言で頷く。若干反応が弱いように感じるのは、甘党だったからなのだろうか。すまんな、俺が甘いものの気分ではなかった。次回があれば、甘いものを約束しよう。そう思うと、フルーツや製菓の食材が多いように感じる。もしかして貴方が用意したものだったのか。すまない、意図を汲んでやれなくて。
「次回があれば、甘いものを約束しよう。」
一応紳士に伝え、調理に移行する。製菓のものが揃えられていたところでパンは作れそう。俺が好きなハードなパンにしようかな。良いよな、俺の好みで。
「オーブンはあるだろうか。裏か。」
「いや、そこのカウンターの下にある。」
わお、かっこいい作り。カウンターの下に色々備え付けられてて、客には見えない仕様のやつだ。かっこいいよな。じゃあ、裏には何があるんだ。現実で考えるならロースターだろうが流石にないだろう。ないよな?魔法で再現できるのか。
一応オーブンは余熱しておく、小麦粉は、、わからん、これにしよう。今度は、自分で食材買ってこようかな。【調理】スキルを使えば、塩は多めに。油もなんの油かわからんな。商店に顔を出して、どんなものがこの世界の基準なのか、知っておく必要があるな。なんとなく、西洋な世界観ならオリーブオイルっぽいイメージもあるが。こねる作業を終え、少し生地を休ませる。スキルのおかげか、後どのくらい発酵を待てば良いかわかる。現実よりだいぶ短時間。ジジイどもを待たせるわけにはいかないから助かる。年寄りは往々にして気が短いからな。この人たちは知らんが。この茶店で悠久の時を過ごしているなら、おおらかになるのかな。少なくとも余裕はありそうだな。
成形して気持ち二次発酵。少し温度を高めにしたオーブンで焼き上げる。スキルを使っているからか、少し疲れてくる。
「料理はよくするのか。」
「いや、スキルのおかげでなんとかやっている。」
店主も手持ち無沙汰になったのであろう、質問してくる。実際、現実ではなかなか時間を作れない。何より片付けが面倒な時が多い。総合したら、自分で作るよりコスパ良くなることが多いし。その点、こっちの世界は良い。コスパなんて度外視で趣味に時間を割ける。便利でないことも良いものだ。
【生活魔法】で片付けは一瞬。MPはこちらで持とう。なに、構わない。教えてくれた礼の代わりだ。
「そのレベルとは思えんが。」
なんだ、褒めてくれるのか。気分いいな。店主と会話しながら時間を待つ。そろそろだと言ったら、店主もこちらにきて、コーヒーを入れ始める。コーヒーの香りが空間を支配し始める。気を取られてはおれん。こちらも、腸詰に取り掛かる。食い出のありそうな立派なやつだ。
「そういえば、お名前は、何と。」
「そうだな。ジョン、でいい。」
名前を聞いておらず、店主呼びだったことを思い出す。名前を聞くと、ジョン。でいい、とは少し気にかかるが。まあ、詮索は止そう。あまり深入りするもんじゃない。コーヒーと違ってな。
パンも焼き上がり、キャベツのような野菜を敷き、腸詰を乗せ。ケチャップ。マスタードはお好みで。前回もこんな感じだったことを思い出す。余白を食べる本人の嗜好で埋めて完成する食べ物っていいよな。最初から、一部の隙もない食べ物を食べた経験が少ないのも原因か?フレンチのコースなんかはそうなんだろうか。いつか三つ星レストランを利用する機会は訪れるのかな。
今回は最初から3つ用意した。紳士の席へも俺がサーブ。近くで見ると、ますます迫力のある眼、立派なヒゲ。持っている新聞?にはなにやら人の顔が載っている。活字だけではないんだな。なかなかの技術力。魔法で複製とかしているんだろうか。本屋なんかも見て回りたい。店主、ジョンはアイスコーヒーを出してくれた。いいね、アイスコーヒーの気分だったんだ。
マスタードを多めにつけて、いただきます。腸詰の食感もいい。パンの出来もいいな。【料理】スキル様様だ。ジョンも美味しそうに食べてくれている。紳士も満更でもなさそう。
[バゲットがレシピに追加されました]
[ホットドッグがレシピに追加されました]
あれはバゲットに判定されたのか。今度から、この手順を踏まんでもいいのは助かるな。料理スキルに蓄積もされていくのだろう。どんどん手際が良くなっている気がする。まだ2回目だが。
コーヒーも飲み終え、今度こそ席を立つ。
「ありがとう。これを。」
コーヒー豆をもらう約束をしていたことを忘れていた。渡されたのは、焙煎されたコーヒー豆の入った袋。量から見て2杯分くらいかな。まあ、硬貨渡すだけだし、そんなもんか。先払いだったのか。失敗できなくなったな。欲を言うなら生豆が、さらに欲を言うなら、コーヒーチェリーがよかったな。植えれば、実が収穫できそうだし。これ以上はやめよう。いつ【欲望の僕】を踏むかわからない。
「こちらこそ、ありがとう。ジョン。コレは必ず。」
喫茶店を出る頃には疲れは回復していた。
決まりましたね




