ep.154
第2エリアに行かないのと、行けないのでは全然違う。釣り人の兵太夫はパーティーで攻略したといっていた。それも随分前だ。生産職の龍龍はどうだったんだろう。彼女なら一人でも行けそうだな。猪くらいならグーでワンパンだろう。
「また少しずつ戦闘もしていかねば。」
最後にまともな戦闘をしたのは守護者戦だろうか。それ以来だから、結構経ってしまっている。このゲーム戦闘も面白いからな。守護者はギミックボスだったおかげもあって辛くも勝てたけど、果たして第1エリアのボスの実力はいかほどか。純粋な戦闘力が求められるなら、厳しい戦いになるかも。でも、森の中での戦闘なら、木にぶつけてスタンとかあるかもしれないな。ソロプレイヤー用の調整にも期待しないと。
「装備も新調できたし、ま、余裕でしょ。」
俺史上今が一番強い。ガチャで当てた杖に、指輪、靴。当たりまくった回復薬もある。服も新調できたし。これで行けなかったら、次のガチャイベントが来るまでソロでは攻略できないってことになりかねない。その頃には第4エリアも2次転職も到達されていることだろう。流石にすでにクリアした人に討伐の手助けをしてもらうのは、ゲーム体験を損なうことになるからな。俺の知り合いで声をかけられる可能性があるのは、レイか鯛の鯛かn/nかな。
草原を抜け、森に入る。途中まではすでに通った道。ちょっとだけ狩人の痕跡を探してみるが、片手間では到底見つかりそうもない。ボスを倒してから、まとまった時間を取ることにしよう。鹿の好物はガチャで当たらなかったが、調べるまでもなかった。あいつらせんべいに目がないらしい。小麦粉と水、別に生体に気を使う必要もなく、砂糖も入れて、美味しいやつにしてやろう。鹿取れすぎて、狩人の方から、弟子入り希望されちゃうかもな。
森が深くなるにつれ、足場も次第に悪くなる。パーティー単位でまとまって歩いても問題ない程度には開けたルートがあり、明らかに人が通っている道ではあると思うのだが、木の根っこが地表を起こしており、本当にこの道であっているのか疑いたくなってくる。未だボスの出る気配はなし。ダンジョンの時も、聖域の時もなんとなくボス感があった。森林だから死角から急襲ってことも考えられるか?ルーがビビっていないから大丈夫だな。最初のボスから気配消す系はナンセンスだろ。
「流石にそろそろか?」
街から数えると小一時間ほど森をうろつく。どこかで道を間違えた可能性もある。ボスがそろそろ出てくるか、そろそろ引き返す時間か。午前中のイベントで時間を使いすぎてしまった。日の傾き加減からみても、このまま悠長に散策を続けることはできないだろう。まいったな。今日中にボスは攻略しておきたかったのに。急ぐ理由はないけど、ゆっくりする理由もないのだ。何に興味が湧くか分からない現状、済ませられるものから、済ませておきたい。
「お。少し雰囲気変わってきたか?」
日がくれても【気配希釈】でどうにかなるだろとたかを括り、勇気の探索続行。それが功を奏したのか、本当になんとなく程度だが、森の感じが変わってきた気がする。植生かな?道が狭まり、日の光が届きにくいところも出てきた。気温も若干下がっているかも?マイナスイオンの力?そのくせ実のなる広葉樹が増えてきたように思う。それこそ、鹿が好きそうな。ボスって鹿?
「熊だった。」
一段と大きい木の洞に黒く蠢く物体が。その木の周囲は開けているものの、周りの背の高い木が覆い被さるように生えており、まるで天然のドームのよう。そのままグランピング施設として利用できそうなくらい。熊がいなければ。
インベントリに残っていたリンゴを食べ、ボス戦に備える。ルーは背中に張り付いたまま。一応、その辺の木で休んでいてもいいぞ、と促したが、ついてくる選択を選んだよう。ますます負けられなくなってきた。
「流石に大きいな。」
意を決して、ボスに近づく。一応【気配希釈】はかけてみているが、効果はなさそう。さすが野生の獣。木の洞から体を起こし、のそのそと出てくる。4足歩行の状態でこの大きさ。ガキの頃阿蘇でみた熊とは比べ物にならない。あの頃でも十分デカかったが。
ゴオォォォ
開戦の合図だろうか、低く、響く。さっきリンゴ食べたのは失敗だったな。こいつに食わせて隙を作るべきだった。ウォーターボールを撃つ。【詠唱破棄】のありがたさが分かった気がする。熊の攻撃で考えられるのは、突進、引っ掻き、噛みつきくらいか?魔改造されてもせいぜい、火を吹くとかだろう。
熊の攻撃が直線的で助かった。AGIに補正のかかる装備を手に入れた俺には、余裕を持って避けられる。保険のサンドウォールを切るまでもない。唯一熊の引っ掻く行動だけは、ある程度溜めて攻撃を出せるみたい。微ホーミングくらいか?溜めずに引っ掻いてくる場合もあり、注意が必要なのはこれくらいだろうか。あとは、HPが減ってからの第2形態次第。




