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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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157/157

ep.155

 

 熊の攻撃を避けながら、魔法を当てるのを繰り返す。余裕があるうちに回復も挟んでいく。いつこいつが本性を表すか分からんからな。遠距離攻撃を隠し持っていたら、一気に劣勢になりかねない。守護者と違い、一気に距離を詰めて来はしないから、まだ有意に戦えていると思う。


 ゴアァァ


 一方的に攻撃を受けているからか、思い通りに攻撃が当たらないで苛立っているのか、はたまたその両方か。熊が唸り声をあげる。これだから感情のわかる生き物は良い。特に犬。あの尻尾で感情が筒抜けなのがたまらん。この熊も、もう少し小さくて尻尾があって、ワンと吠えれば可愛げがあるのに。ほら、黒ラヴに見えてきた。


 再度攻撃が飛んできて現実に引き戻される。やっぱり熊は熊だな。なんの可愛げもない。でけえし。なんか煤けているし。


 CT上がり次第、ウォーターボールとマッドボールを交互に撃っているが、いまいち決定打には結びついていない。あの大きさの熊だ、毛皮の強さもそれなりにあるんだろう。ちょっと状況を変えるために【破壊】の力でも使おうかな。どうせなら、第2形態に変わる直前で撃って、第2形態をスキップできたら御の字。こんな手こずるなら、別の手段とっておくべきだった。早いとこアヴィに新しい魔法教えてもらわねば。


 あの時喫茶店でスキル取っておけばよかったが、泣き言言っても仕方がない。結局いつもこう思ってるから。こればっかりはもう、今後も治らないだろう。今できることを繰り返していくしかないのだ。


 再度ウォーターボールを当てたところで、熊の様子が変わる。いよいよ第2形態だろうか。ひとまず、ダメージが通っていると分かってよかった。毛が逆立って、4足歩行から歩行から2足歩行に。立ち上がればますますその迫力が凄みを増す。


「後脚太っと。」


 フィールドの中央に聳える巨木の枝に勝るとも劣らない太さ。流石に蹴りをしてくるような骨格ではないと思うが、引っ掻きに位置エネルギーが乗ることを考えると、とても驚異。移動スピードは落ちてるよな?これで突進のスピード上がるなら、なんで4足歩行やってたんだと、小一時間説教だ。進化というものを蔑ろにしている。


「出し惜しみなしだ。」


 ここからは全力で。いや、今までも全力だったが、【破壊】の力も存分に使っていく。まずは、魔法を撃ちながら、相手の攻撃パターンを見ていく。流石に、短期決戦とはいかない。新調した服のおかげで、致命的な一撃もないとは思うが、HPが減った時に攻撃を喰らって負けるのはしょうもないからな。隙を見て【破壊】を使おう。回復薬も出し惜しみなしだ。


 2足歩行になってからは、引っ掻きが連続攻撃に変化していた。強靭な足腰で上半身の無茶な動きを支えている。それに、なんだか足場がウェットに。よく見ると、中央の木から汗のようなものが滴って、木を中心に地面が湿地、いや沼地のように変えられていく。なるほど。こういうタイプのボス。アインス(水)の街だから、何か、水が絡んでくるのは十分考えられたな。流石に海のようになって、足場がなくなることはないだろうけど。ないよな?


「まさか、短期決戦なの?」


 まさかのDPSチェックがあるのか?そりゃあるか、一応MMOだもんな。熊は緩い足元を気にも止めず、攻撃を繰り出してくる。対して、こちらは当たりはしないまでも、攻撃を避けるのに意識を割く必要が出てきた。【破壊】を使うのもある程度ギャンブルになりそうだ。


 狙うべきは連続攻撃の後。そこが多分一番隙が大きい。モーション自体はわかりやすいから、準備はできそう。


「来た!」


 ベアハッグのような突進の後に連続攻撃の始動モーション。いつもより長めに距離をとり、連続攻撃が終わる時を待つ。


「マッドボール!【破 」


 連続攻撃の後には隙があったのに。いきなり2足歩行をやめ、四つ足で猛スピードでこちらに突っ込んでくる。見境なしかよ。2足歩行への執着はないタイプか。


 辛くも【破壊】は発動せず、マッドボールのみ発動する。この辺は【詠唱破棄】のおかげもあるかもしれない。発動がかなり早くなっている。しかし、魔法発動後のちょっとした硬直に突進を合わせられ、フィールド端まで弾き飛ばされる。HPは一気にレッドゾーン。服を新調していなかったら、危なかったかもしれない。


 幸か不幸か、フィールド端まで飛ばされたおかげで熊と距離を撮ることができた。かの熊はまた2足歩行に戻っている。全く忙しいやつだ。熊の様子を見つつ、立ち上がりHP回復薬・上を使う。これでほぼ満タン。連続で使用できない仕様がもどかしい。


「どうにかして、隙を作らないと。」


 魔法を当てるだけならこのまま同じことを繰り返していくことはできる。だが、制限時間がある可能性を考慮すると、悠長にしてもいられない。【破壊】を使う隙を見出さなくては。




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