ep.153
「さあ?僕はお酒を飲まないから。」
「じゃあ、アルコールを個人で作ることは?」
「個人で楽しむ範疇なら。販売するなら許可がいる。」
「許可は国の?」
「種類によらず許可は国の。元締めは商業ギルドだね。」
なんか一気にきな臭くなってきた。ギルドの酒場で飲んだビールは現実のものと遜色ないくらい美味しかった。ジョッキも冷えていたし。それなのに、商業ギルドが国と結びついて、国の権威を傘にして暴利を貪っている予感しかしない。国の息のかかった奴が、商業ギルドの実権を握っているのなら、まだマシ。国が商業ギルドに弱みを握られているなら、この国は長くは続かないだろうな。所詮金の亡者に一国の王の器はないだろ。プレイヤーという思い通りにならない駒も発生したしな。ただの中央銀行的な立ち位置で、取り越し苦労なだけかもしれんが。
他のプレイヤーはよく暴動を起こさないでいられるな。ギルドの酒場だけで満足できているのだろうか。第2エリア以降には、アルコールを提供する店もあるのかもな。それでも、その土地のものを使ったのを飲み比べしたいじゃないか。あれ?もしかして龍龍と似たようなこと言ってるか?だから彼女にシンパシーを感じたのかも。
「商業ギルド?この街にはないよな?」
「色々あったからね。」
「色々?」
「ブルー」
いつも下の受付で見かける人がブルーを呼びに来る。まるで狙っていたようなタイミング。これもゲーム的忖度を疑わざるを得ない。俺がその話を知るのはまだ早いということなのかな?それとも、情報を多角的に捉えろということなのか。なんにせよ、色々あったことは確かなよう。商業ギルドはきな臭い、気をつけておかねば。あれ?前も似たようなことなかったっけ?必要があれば、思い出すだろ。
「おっと。時間のようだね。これでも忙しくてね。またおいでよ。」
「ああ。時間をとらせてすまない。」
ブルーが先に資料室を出ていく。残された俺は資料室で、アインスの街の周辺の植生の図鑑のようなものがあったので、ペラペラと捲る。雑草という名前の雑草はない、とはよくいったもので、草原でよく見かける草にもそれぞれ名前が設定されている。大体は現実世界で聞いたことあるような草の名前をもじった感じ。使い道は示されていないが。じゃあ、雑草か?香りの強いものとかあれば、ハーブとして使えそう。
途中でラーミのページが目にとまる。綿花のようなものを勝手に想像していたが、茎を加工して繊維にしているよう。まあ、一本からどれほど取れるのかがわからないが、確かにラーミを素材にして名産と呼ばれるほど加工するのは厳しいのかもしれない。やっぱり生態系が変わるほど狩りまくるか、牧畜で刈りまくるかだな。この世界なら、絹は虫型魔物からのドロップであることが容易に想像できるし。収穫量の多い綿花もそのうち登場するだろ。
図鑑も見終わり、他に読み物がないか探すもイマイチピンとこない。この街の歴史を教えろよ。まあ歴史書の類もロックかけられているかも。いや、この考え方はよくないな。ブルーは会議の予定が入っていたし、本は修復中とかにしとこう。スタッフオンリーの扉、ブルーの机の向こう側に積まれている本。非常に怪しいです。
進行度の問題だろうか。メタ的に考えると、西の方に進んだ後に、東の方で過去に一悶着あった事実がわかり、東方面の扉が破られる、そして、またアインスの街が最前線になる、とかかな?そんな胸熱展開、現状俺の希望的観測でしかない。
「東側行ってみるかー。」
戦闘職のプレイヤーもすでに東側を攻めているだろうが、それでも成果が上がっていないのは、何かしら理由があるんだろう。その理由を見るだけならそこまで時間がかかるまい。南の洞窟の奥は海だったから、おそらく東の先も海の可能性が高いと思っている。それならば、攻略が進まない理由も頷けるし。このゲーム水中戦闘は想定されているのかな。それを求めるプレイヤーもいるだろうから、おそらくできるんだよな、水中戦闘。水没したダンジョンとか、海にロマンを求める野郎どもの海戦とか。
「案外釣り人連合が最初の到達者になったりして。」
釣竿も試してみたいし、船の進捗も見てみたいな。イベント中からあの熱量で造船に取り組んでいたら、もしかしたらすでに完成して、船釣り楽しんでいるかもしれん。あの人数を一度に乗せる大きいのを作るのは難しそうだ。2艇の小舟を準備しているかも。
「とりあえず、予定通り進めるか。」
まずは第2エリアの解放から。




