ep.152
「いや!生産を続けるためには、数匹のテイムでは足りないだろう。」
なんてまともな感覚をもっているんだ。俺が【豊穣神の加護】に頼って、成長速度をバグらせているのがズルみたいになるじゃないか。でも、その感覚をもっているならば、畜産事業を新規で興そうとはならないんじゃない?ヤギ狩りまくってドロップを大量にとか、この辺りで取れるラーミって草を改良しようって発想の方が自然じゃない?俺の考えが植物ならなんとかできるって偏っている可能性は否めない。ドロップ品より飼育下のを毛刈りした方が品質がいいのか?まあ、ブランドのこだわりってそう言うところに違いが出るか。
「テイムした魔物の取り扱いは?」
【テイム】を取得したばかりの龍龍に聞いてもわからないだろうから、ブルーに聞く。ルーはテイムしたらしいが、俺は【テイム】をもっていない。一緒に連れ歩けるくらい小型なら街でも生活を共にできるが、中〜大型のはどうするんだろう。街の中でも一緒に行動できなきゃいかんよな。外で待たせるわけにはいかないだろう。アインスは最初に降り立つ街という特性上、初心者の人もいるし。そしたら、龍龍は牧畜している範囲内で過ごさなきゃいけなくなるのか?それは不便じゃない?
「ギルドで登録すれば、街の中も入れるようになるよ。この街にはいないけど、王都には有名なテイマーがいるね。もちろん、街の中で問題を起こしたら、責任をとってもらわないといけない。場合によっては資格剥奪だね。」
フィールドでテイムして、最初はどうするんだろう。衛兵についてきてもらったりするのか?俺も登録しなきゃいかんのか、これ?ルー、街中では大人しくしておくんだ。もうバレていたら仕方がないが、知られたくない人もいる。全ての人を手放しで信用できるほど、素直な性格はしていない。お前、珍しいらしいからな。こちらの世界の言葉を借りると、縁を結んでいるから大丈夫ではあると思うんだけど。ブルーは続けて言う。
「管理責任があるからね。基本的には監視下で生活してもらわないといけない。」
「それは、龍龍がヤギをテイムして、畜産業を始めるならばそこで生活する必要があるってこと?」
「そう思うね。」
「それは不便じゃないか、龍龍?あくまでも、服飾がメインなんだろう?【テイム】をとったのはもったいなかったが、飼育下のものを譲り受ける方がゲーム体験としては良さそうだぞ。」
ブルーが断定しなかったのは、本当に前例がないことなんだからだろう。そもそも独立だって今すぐではないってことだったし、少しずつ基盤を固めていくのが得策ではなかろうか。【テイム】は強い個体を手に入れてヤギ共のリーダーをやらせるか、綺麗な毛のやつをテイムして製品を金持ちに売りつけるかすれば解決するんじゃない?出来のいいものを第2エリアのトップに献上すれば、第2エリアの凡貴族は手を出せなくなるだろう。同時にアインスの領主にも献上すれば、あちらも立ってこちらも立つ。双方良しだ。
「そうだな。うん。よし。じゃあ、テイムしに行ってくる。」
感謝の言葉を述べ、嵐のように去っていく龍龍。生産職でも当然のように第2エリアにいけるんだな。後に残された二人は、まるで嵐の後の静けさ。一体、何がよし、なのか。まあ、いい個体をテイムできたら、スキルポイントも無駄にならないし、譲り受ける時に畜産家の人の印象もよくなるだろう。今後どうなるかわからんけど、健闘を祈ろう。ラーミは見つけたら、聖域で栽培してもいいかもしれない。それでいいポケットチーフでも作ってもらおうかな。ジャケットなんて着る機会来ないだろうけど。女性が泣いている時に、スッと差し出すのはやってみたい。あ、ルーの首巻にしてもいいかも。透明の意味がなくなるか。
「なんだったんだい?」
「なんだったんだろうな。」
俺もよくわかってないんだ。とりあえず、こうなった経緯をブルーに伝える。夜の街の散策中に出会い、店を訪れ、ここにきた。反芻してもわからない。全てを解ろうとするのも、人のエゴだと誰かが言っていたし。まあ、きっと彼女は腕のいい職人になるよ。顔を覚えておいて損はないだろう。
「もういいかい。」
ブルーはいつになく疲れたようで、気だるげな様を隠そうともしない。いや、よくない。よくないんだけど、何を聞こうとしていたか、思い出せない。強烈なことがあったからな。何を聞こうとしていたんだったかな。隠れ家バーを目指して夜の街を歩いてて、酒を提供する店がなくて。酒?
「美味い酒が飲める店を知らないか?」
「お酒?下で飲めばいいじゃない。」
それじゃあ風情がないって言ってんだよな。しんみりと飲みたい夜を知らんのか、貴様。人生うまくいきすぎている勢か?陽キャか?
「ギルドの酒場以外にこの街にアルコールを提供する店はないか?」
少し、質問に具体性を持たせる。あるんだろ?夜な夜なギルド職員が集まる、地下の歓楽街が。洗いざらい吐けよ。お前がやったんだろ。
【】はスキル名、称号名に使うようにしています。
【テイム】はスキル、テイムは行為といった感じです。
本来は、嵐の前の静けさ、です。




