ep.150
「自分のブランドを持つには、やっぱり素材からだよな!」
テンションの上がっているように見える龍龍。いや、確実に上がっている。小躍りしそうな勢い。何が彼女の琴線に触れてしまったのか?何の気なしに言った牧畜が?確かに、水はあるし、食いもんはあるし、なんでこの辺りで畜産が発展してないの、とかは薄々思っていたが。住人がやっていないのは、何かしらの理由があると思っていた。
初期投資も結構かかるんじゃないか?輸送費に人件費に。守銭奴の政治家がいないから、根回しのための袖の下が不要だからそこまでなのか?素材に拘るよりも、染め物の独自の色やブランドを象徴する柄を探した方が楽で良さそうだけど。
「独立予定なのか?」
「そりゃ、今はまだまだだけどさ。いつかは自分のブランドは持ちたいじゃないか。」
「応援するよ。それで、龍龍が作ったのは?」
牧畜は手助けできそうにないけど、ラーミと言うらしい、繊維の取れる植物に関しては何かの形で関われるかも知れない。北の畑はもう潰してしまったので、育てている場所の明確なことは伝えられないが、見かけたんだけどって形で提供することはできるかも。追及されるかな?不審者の真似事して、店の前にポイ捨てすることにしよう。妖精さんの真似事だ。
「ありがとうGAKU!それで、どうすればいいと思う?」
「え?それは牧畜のこと?」
「応援してくれるんだろ?」
龍龍の作ったものを買って、金銭面で少しだけ協力できればと思っての言葉だったのだが、牧畜を応援すると捉えられた。俺の言葉足らずだったのは否めないが、いや、応援はしてるんだよ。だけど、不可能じゃない?なんとか諦めさせる方向に持っていけないか?いや、ここでうまいこと立ち回れば、質のいい服を優先的に回してくれるようになるかも。ハイブランド的な感じで。ご贔屓にだけ、裏から商品出すアレ。
「まずは、ルール的に不可能でないのか確認しなきゃじゃ?」
「ルール的に?」
【鑑定】で龍龍作の服を確認しながら、策を考える。初期装備のシャツの型をそのまま用いました、みたいな至極シンプルなラーミ生地のシャツが目にとまる。肌触りも悪くないし、金額も予算範囲内。性能もめちゃくちゃ良いわけではないが、流石に初期装備とは比べ物にならない。
「そう。ギルド資料室のブルーならその辺詳しく教えてくれるかも。」
龍龍と会話を続けながら、今度は勝手に下半身装備を探し始める。ズボンも、シャツと同様にシンプルなものを選ぶ。他の人はみんな強そうな装備になっていったんだが、俺だけ初期装備の色違いみたいな感じだな、これ。青色のものを選び、シャツと合わせてHPとVITに少しずつ補正がつく。攻撃を受ける戦い方をなるべくしないよう留意しているが、保険が効くのは大事だ。
「よし。じゃあ、行こうか。」
「へ?今から?」
お会計を済ませる。上下で8,000リル。相場がわからないけど、こんなもんだろ。フィッティングルームを借り、買ったばかりの服に袖を通す。着替え終えると、何が”よし”なのか、行こうかと声がかかる。まだ、勤務中じゃないのか?シュタインさんは、その辺放任主義なのかな?バイト的な契約じゃないのかもな。まあ、俺もブルーに聞きたいことがあるから、これから伺おうとは思っていたが。
「GAKUの職業は?私は裁縫師。」
ギルドまでの道中、雑談でお互いの職業の話に。龍龍は案の定、裁縫師。聞くまでもない。
「俺は遊び人。」
「初めて見た。なんで遊び人に?」
「この前ガチャイベントあっただろ?それで一旗揚げてやろうと思って。」
本当は細かいことは何も考えず、遊び人に就いたんだけどな。一番シナジーあったし。でも、流石にそれは言えないから、それらしい理由をこさえる。その後の戦闘体験を考えると、冒険者になるべきだったと、ちょっと後悔している。戦闘で経験値が入っていたら、今頃Lv.5くらいにはなってそうだ。それにしても、遊び人になってからレベルが上がらない。2次転職のワールドアナウンスも聞かないから、レベルが上がりにくくはなっているのは理解できるんだが。
「ガチャは当たったのか?」
「この靴くらいだ。」
私は全然だったと笑いながらいう龍龍。俺も笑いながら返す。人に気軽に言えるのはこの靴と指輪くらい。流石に遊び人の諸先輩方の運にはかなうわけもなく。
ギルドに到着して、2階の資料室に。静かな資料室にはそぐわない威勢のいい龍龍がずかずかと入る様を見て、ブルーが何事か、とばかりにこちらを見る。聞きたいことがあるんだってさ。
「ブルー。この街の草原で牧畜をしてはいけないってルールはあるか?」
いきなり本題に入る龍龍。うん、好きだよ、その姿勢。俺みたいに迂遠に物事を聞く奴よりも、よっぽど好感を持てる。
「君がルールのことを聞くんだ?」




