ep.12
なんかやけに語気の強い男が話しかけてきた。俺からしたら、初対面で物怖じせず死んだばっかりの男に話しかける君の方が勇気あるよ。
「ああ、色々あってな。あなたは。」
「あ、ごめんごめん。オレ、Right。右じゃなくて、正しい方ね。」
「夜の魔物どうだったか知りたくてさ。」
「俺はGAKU。どうだったかも何も、瞬殺されたよ。見えたのははぐれ狼って名前だけ。レベルすら見えてない。」
「はぐれ狼?昼間森の近くに出てくるグレイウルフじゃないんだ。」
「他には?」
「うーん。他に魔物は見なかったし。」
「ああ、関係あるか分からないけど、普段なんとなく環境音みたいなの聞こえるだろ?あれが聞こえなかったな、襲われる前。無音になって、唸り声がして、振り返りざまにガブっと。」
まるでホラーだったんだよと、ライトくんに力説する。ライトくんは剣を背負ってるし、剣士志望だろうか。身に纏っている装備も初期装備ではない。未だ多くの人がラフなシャツを着けてる中、ライト君は皮の胸当てみたいなのを装備している。年齢も若そうだし、喋り方なんかも軽薄な印象を受けるが、なかなかのやり手なんだろう。
「環境音か。なくなれば、警戒を強めても良いってことかな。」
「情報、ありがとう!情報料を、っと、オレお金ないんだった。」
「Rightさんも、お金ないのか。」
「呼び捨てでいいよ。今ギルドで装備更新しちゃって、すっからかん。」
「GAKUさんも、お金ないんだ。でも、装備も初期のだし、」
「じゃあ、こちらも呼び捨てで。それも、色々あったんだ。」
「そっか、じゃあ聞かないことにしよう。そうだなー、なんか聞きたいことある?情報のお礼は情報で。」
「それなら、良い宿屋を教えてくれ。」
「良いか分からないけど、俺はギルドの少し先の宿に部屋とってるよ。」
「でも、これギルドから教えてもらえることだし。そうだ、フレンド登録しようぜ!で、なんかあったら連絡くれよ。」
夜の探索は現時点では不可能であることが確定した。朝になるまで、少し休んで回復しよう。なんか、そろそろ休憩しようって機械も言ってくるし。さすが、高額な医療用VRマシンなだけある。ライト君に宿を聞くと、ギルドでも教えているらしい宿を教えてくれた。ギルドお墨付きなら、悪いとこではないだろう。時代劇なら、袖の下を疑うところではあるが。ライト君的には平等なトレードにならなかったので、後ほど何かあった時に手伝ってくれるそうだ。だが、フレンド登録はどうすれば良いのか。
「フレンド登録ってどうすればいいんだ?メニューにないんだけど。」
「え、GAKU、冒険者登録してないの?冒険者カードで出来るぜ。」
「ああ、色々あってな。仮登録の身だ。」
冒険者登録できたらフレンドになろうと約束し、去って行くライト君。後ろの方にいた集団と合流していたので、普段はパーティーで動いているんだろうな。冒険者登録もしていないと言った時には、本当に何があったんだと気にしてくれた、良いやつだなライト君。またも良い出会いに感謝しつつ、教わった宿屋の方へ歩き出す。
「あ、でも 屋もか がー」
ライト君の声が響いていた。これから夜の冒険に出かけるのだろう、若いっていいな。血気盛んだ。人はまばら、ギルド周りの店なのか、民家なのかはしまっているところが多い。ギルドは24時間営業なのか、煌々としている。こちらの世界でも24時間営業というのかな。そうこうしているうちに宿屋へ着いた。ライト君のいうとおり、ギルドの近く。良い立地だ。空室はあるのだろか。見た感じプレイヤー全員を収容するだけのキャパはなさそうだが、そこはゲーム。なんとかなるのだろう。
「夜分遅くに申し訳ない。空室はあるだろうか。」
「はいはい、旅人さんかな。風呂付きは250リル、素泊まりは100リルだよ。」
女将さんだろうか、ふくよかな女性がやってきて料金の説明をしてくれる。宿で休むと体力等回復されること、基本的には宿は自動更新され宿泊できることなど教えてもらった。金額の高い方が休息時の回復が良いそうだ。宿を出た後も、スタミナバフが少し長続きするらしい。金も冒険者カードから自動引き落とし、残高がないとスポーン地点へ。この世界で暮らすのに旅人は最低100リル/日かかるってことか。まあ、住民税的なもんか。でも1泊100リルとはかなり優料なんじゃなかろうか。だがまた失念していた。100リル払えない。
「50リルでどうにかならないか。」
「ならないね。冒険者ギルドや神殿からの要請でこれでも限界まで下げてんだ。」
「リルがないなら、神殿がそういうのを受け入れてくれんじゃないかね。それかスラムの方さね、まあ、何か取られても文句は言えないよ。」
リルがないからあんたは狙われないだろうけどと笑われる。しかも、NPCのおばさんにそういうの呼ばわりされた。不服だが、言い返せない。今に見てろ、たけえ方の部屋年間で買ってやるよ!と心の中で息巻く。だが良いことも聞けた。神殿はそういうのにも優しいようだ。さすが神殿、この世界の神はわかっている。VR機もそろそろログアウトしろと警告がやかましい。待ってろ、今から神殿に行ってすぐログアウトするから。
「ところで、神殿ってどこにあるんだ?」
道を聞くのも忘れない。俺は学習できる男だ。
「あ、でも宿屋も金がー。」




