ep.137
「ルーもここだったか。ここいいよな。」
一通り作物を見て周り、泉のほとりで一息つく。時折吹く柔らかい風が草花や泉の水面を揺らし、非常に心地が良い。ルーも泉の付近でのんびりしていたらしい。なかなか風情のわかる爬虫類だ。しばらく雰囲気に浸っていた時、マダムの言い付けを思い出し、水袋を泉につける。ゴキュゴキュと音を立てて泉の水を飲み込み始める水袋。相変わらず、音が下品だ。それでも泉は何かしたか、というように大量の水を失っても水位は変わらない。湧水量というのか?それがすごいんだろう。ここよりも標高の高いところからの雪代かもしれない。雪が降る気候かも知らんけど。梅雨のようなものもあったから、そのうち寒期もくるだろ。
「さ、次々。」
少し堪能しすぎたかもしれないな。まだまだやらなきゃいけないことがある。ルーを軽く一撫でし、立ち上がる。背中のとげとげが指に刺さった。指を気にしながら、向かったのは祠。少しグレードアップしてやるとしよう。
神像に少し横にずれてもらって、元々置いてあった場所に石を積んでいく。崩れることだけは許されないので、組み合わせも考えながらびっちりハマるように。膝くらいの高さまで高さを上げたところで、祠ごと上に押せる。結構貫禄がついたんじゃないか?あとは、なんだろうな。小皿と水呑み、榊をさす一輪挿しくらいか?あまりにも神道すぎる?まあ、一般日本人の思い描く神を祀る様式なんて、どこもこんなもんだろう。大事なのは気持ちだ。現実世界では神の存在感じたことなんて微塵もないが、この世界では明らかに恩恵を受けているからな。流石に、敬わなければなるまい。
「今後ともご贔屓に。」
手をあわせる。豊穣神が何人くらいのプレイヤーに加護を配っているか分からんからな。プレイヤーごとに差別することは神の名において許されないだろうが、偏重することはできるんじゃないの?GAKUでございます。期待していますよ。豊穣神も一柱だけとは限らんからな。豊穣のさせ方のアプローチにもバリエーションはありそうだし。
小屋に近づき、扉の機能拡張メニューを開く。作物がこのペースで育つなら、予想しているより早めに品種改良用のラボが必要になると考えた。もちろん、それに該当する項目は見当たらない。生産系であるのはキッチンと作業台のようなもの。あ、これ、俺の持っている生産系スキルに依存しているのかも?でも、【農耕】があるから、それに関連するものもあっていいのに。ちょっとスキルの種類が違うのかな。キッチンだって、作業台だって、できないことはないだろうが、該当生産行動以外にボーナスが入らなさそうだし。それに、初期段階だから、ボロそうで。ギルドのキッチンスタジオまでとは言わないが、メゾネット物件のちゃっちいキッチン程度は欲しい。
「水が綺麗だから、技術があれば半導体でもいけそうなのに。」
何をするにしても、まずは小屋の広さからか?と思い、選択できる項目の中では比較的安価な小屋の敷地面積を拡張する項目を購入してみる。見たところの変化はない。が、前回ので俺も免疫ができている。これしきのことで、精神を揺さぶられることはない。小屋の中は広がっているに違いないと思い、扉を開ける。
「大きく、はなったか。」
目を見張るほど、大きくはなっていない。しかし、箱と布団でパンパンだった時と比べると、地面の面積は広がり、土の部分が露出している。次は床を敷かないといけないな。あまりにも荒屋すぎる。
「あれ、安くなってない?」
小屋を出て、再度扉でメニューを開く。もちろん敷地面積を拡張する項目は最初より価格が上がっているが、先ほど確認した時よりキッチンは少しだけ安価になっていないか?敷地面積の拡張も含まれていたってことか。そりゃそうか。最初の状態でキッチン追加されても、場所がないもんな。場所代も含めてあの価格だったんだろう。そう考えると、素材を提供すれば、拡張費用も安上がりにできるってこと?それはいいな。森で木々伐採してれば、狩人も見つけやすくなるかもしれないし、なんなら怒って向こうから姿を見せてくれるかも。好感度低くて教えてくれなさそうだな。程々にしておくか。
「それに、聞いたこともないような素材を要求しているのもあるし。」
???ってのも、項目にあるんだが、グレーアウトしていて選択できない。これだけはリルを要求しておらず、現状唯一分かるのが陸玳瑁の心核くらい。それと同程度のランクのものと考えると、簡単に手に入るものではないんだろうな。神朱鶴ってのが、俺がいたのとは反対の西門に出たというボスかな、と想像できるくらい。エンドコンテンツだろ。あんなん出てくるようになるなら、世紀末もいいとこだ。




