ep.135
最初に会った時は食事系インフルエンサーと思っていたんだが、TeAの発信力もまだまだだったようだ。まあ、お互いこれからだな。次、作りたい料理もすでに決まっている。タコス、ピザときて、次もジャンクなあれだ。ミア家をふくよかにしてやる。
「それに教えてもらいたいこともあるんだ。」
「何よ。」
追加で1,000リルもらい、インベントリにあるタコスとピザの在庫を全放出。これで南の屋台のタコス屋Gも完売御礼。北の畑と合わせて、アインスの街での身辺整理も終わった。これで心置きなく、聖域と第2エリアとに集中できる。ついでに【解体】ないし狩人の情報も手に入るといいんだが。
「TeAって掲示板詳しいよな?」
「ま、まあ、時々見てるけど?」
なんかのプライドが邪魔するのか、TeAは答えを濁す。別に暇人だと思っちゃいないさ。少なくとも俺よりも進めている。外部サイトも禁止、配信も禁止のこのゲームにおいて、掲示板は情報の中心地であり、最先端の情報が集まる場所でもある。どんなゲームにおいても、情報は貴重だからな。そのうち、情報屋稼業するプレイヤーも出てくるんじゃないか?
「草原奥の森のことで、何か知っていることはない?」
「ああ、ボスについて?」
「いや、そうじゃなくて、何か変わったものを見たというか、変わった人を見たというか。」
「あの辺はボス情報だけしかなかったと思うけど。ボス倒しに行ってるのに、他に目移りするプレイヤーはいないでしょ?」
確かにそうだよな。あの辺りの森といえば、ボスエリア。ボスが発見される前、何かないかと探していた先駆者たちならばともかく、ボス情報が出揃った今、あの森を探索する必要はないからな。その理論ならば、狩人だけじゃなく俺も変人ということになる?強く否定はできないかも。それは置いておいて、掲示板に情報が出ていたとしたら、ボスが発見される前まで遡る必要があるだろう。流石にそんなことできないか。
ちょっと待て、俺、ボス倒していないことTeAに言ってたっけ?まだボス倒せてないだろうと、見縊られてる?戦闘が得意じゃないって情報から、そう推察した?間違っちゃいないが、失礼なやつだ。
「そうだよな。わかった、ありがとう。」
「ちょっと待ちなさいよ。森に何かあるの?」
「いや、何かあればいいのにって思っただけだ。それより、イベント終わっても、時々料理する予定だから、何か販売する時は連絡するよ。」
「あ、そうなの。その時は街中に出店しなさいよ。」
第2エリア以降にも触れ書きが行ってるらしいから、それは厳しいかもなあ。とりあえずレシピはこの街の長のところに渡しているから、もしかしたら、街にそういう店が増えるかもしれないぞ。アヴィたちのあの感じだと、レシピを外に漏らすことはなさそうだが、真似て作ることもできるし、プレイヤーが噛めばいくらでも広まるだろうから。
「まあ、努力はするよ。」
「そ。じゃ。あんたも頑張んなさいよ。」
「ああ、また。」
まるで旧知の仲かのようなドライな別れ。TeA相手だとこれが許されるから、楽でいい。最初の出会いは最悪と言って過言ではない。が、イベント期間中、ほぼ毎日のように顔を合わせたおかげか、まるで同性の兵太夫のような気やすさ。これが常連パワーというやつか。友達の少ない俺にとってはありがたい存在だ。できれば末長く、ご愛顧いただきたい。次に料理屋の真似事をする時はいつになるだろうな。
「ピザ窯どうしようかな。」
別にそのまま残していったって構いはしないんだが、平らなものとか、使えそうなやつだけ回収しておこうかな。聖域で何かしらに使えるかもしれないし。石の中に何かロマンが眠っていないかとも密かに思ってたりする。宝石だったり、化石だったり。適当に割って見つかるものなのかな?専用のスキルが存在するのだろうか。そしたら、誰か専門職に頼むしかないな。流石にそこまでスキルポイントは割けない。ロマンで飯は食えないことは知っている。
「よし。これで完全に後片付けは済んだか。」
ピザ窯もバラしてしまって、屋台のあった名残の土を高く持った石の囲いも、主人との別れを寂しがっているようにも見える。使い勝手の良さそうな石は、回収済みなので、情緒もクソもないんだが。
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「課長〜。守護者倒されちゃいましたよー。」
「はぇ?なんやって?」
とあるビルの一室。課長と呼ばれた男の驚いたような声が、シーンとした室内に響き渡る。そんな光景も日常となっているのか、はたまたそんなのを相手している暇がないのか、室内にいる他の職員たちは無反応で自分の作業を黙々と進める。
「だから、聖域ノ守護者ですよ。アレ、課長たちが入れたやつですよね。」
「誰に?どの!?」
これが青天の霹靂というやつか。寝耳に水で驚きを隠せない。少なくとも現状のプレイヤーの成熟度で倒せることを想定しているエネミーではないし、そもそもまだ見つかる事すら予想できていなかった。簡単に辿り着ける場所でもない。もちろん、ギミックを採用し、戦闘職だけじゃなくても勝てるように設定してはいるが、それでも。
「ええと、プレイヤー名はGAKUで、倒されたのは泉の咎人ですね。」
「そうか。」
GAKUというプレイヤーには聞き覚えがある。確か【欲望】の。【欲望】が悪さしたと考えれば、辿り着くことには合点がいく。
「ちなみに、不正は?」
「あんま、舐めないでくださいよ。できるわけないじゃないですか。」
「そりゃそうか。」
とすれば、このGAKUというプレイヤーは自力でギミックを解き明かして、戦闘に勝利したということなんだろう。【欲望】との相性、考察力。素直に賞賛できるが、手放しに喜べるものでもない。現状でも最高難易度を想定している。難易度を変えることはできないが、辿り着くまでの条件には調整が必要となるかもしれない。
「フラグの方は?」
「ログみてみます?」
キーボードをカチカチと操作して、GAKUの行動ログを見せてくれる。ログを見る限りでは、妙に傑物達と交流を持っているようだが、フラグを回収してたどり着いた訳でもなさそうだった。ゲーム体験的にも、ストーリー的にも少しはフラグ踏んだ後に挑戦してもらいたくはある。
「、、、働くかあ。」
今日も夜は更けていく。
いつか、設定をつらつらと書ける機会を伺っています。




