ep.134
「ラルムさーん。」
色々混乱してきたが、これ以上の情報は得られないと見切りをつけ資料室を出る。話だけでも聞いてみるかと、ラルムに会いに、買取スペースまでやってきたが、無人。セルフレジかな?確かに、合理的。ラルムもデータであることを考えれば、もともとセルフレジなのか?流石に、メタすぎるか。没入できていないな。
「はいはーい。」
相変わらず、朗らかな声が奥の部屋の方から聞こえてくる。どうせだから、緊急クエストで手に入った一般魔物の諸々も売っ払ってしまおうか。前回、混雑してたから尻込みしたのを思い出す。まあ二束三文にしかならないだろうが、金欠に差し掛かっているし、インベントリ整理にもなる。
「買取ですかぁ?」
「休憩中だったか?すまないな。これらをお願いする。」
「大丈夫ですよ。あ、あのお金なかった旅人さんですねえ。いっぱい狩れるようになったんですねえ。」
よかったですね、と買取作業を進めていく。緊急クエストの繁忙も終わり、ギルドにいる人も全盛期ほどではない。いよいよ、プレイヤーのメインステージは第2エリア以降に移ったとみて、間違いないだろう。雑多な人混みが苦手な俺としては過ごしやすくなっていいんだが、ギルドの運営的にはどうなんだろうな。サービス開始当初のあの人数を捌けるキャパを用意していたら、人が少なくなれば不必要人員とかも出てしまうんじゃないか?第2エリア以降に異動とかあるんだろうか。ゲームの世界の人事も興味深い。
「覚えているのか?」
「最近お顔が回って来ましたからねー。その時に思い出しましたあ。」
俺もお尋ね者の一員だということを失念していた。顔が回ってきたと言ったな。いつの間にか写真を撮られたのか?住人もスクショを撮れるのか?詰所で尋問中にでも描かれたのかな。法廷画家的なやつに。かっこよく書いてもらえていたら、いいんだが。ラルムが思い出すくらいだから、きっと写実的に描かれているんだろうな。この世界でのアート収集もしたくなってくるな。自室に飾って眺めながらコーヒーを飲むんだ。今度ミアの邸宅を見学させてもらおうかな。きっと、センスのいい調度品で溢れているだろう。
「あれは冤罪なんだが。まあ、それはいいとして、ブルーから草原奥の森の方に詳しいと聞いた。その森に腕のいい狩人がいると聞いたことはないか?」
「うーん。狩人かは知らないんですけど、森に入って少し逸れたところに罠があるのは見ましたねえ。」
あれは鹿用だったかなー、とにこやかにいうラルム。あの辺でも時々鹿がいるんですよねー、定期的に増えたりして間引かないといけなかったりするからギルドにも依頼が来ますよ、と続ける。狼がいたから大丈夫なんじゃないか?他に家畜がいるなら話は別だが、そうでないなら狼に任せていいんじゃ、と身も蓋もないことを考える。
「それはどの辺だったんだ?」
「えーっとですねー、この辺だったかなー。」
そう言ってギルドに貼られている地図に指差し、教えてくれる。画面上にピン、と通知が入り、見てみると、持っている地図にもその教えてもらった場所がマークされる。おお。便利でいいな。まだ俺が訪れたことがないからマークの周りはグレーアウトしている。一番近いところで薬草の群生地の辺りまでだ。
「ありがとう。」
「はーい。これ、買取分のリルです。」
一昔前の俺だったら小躍りしていたような金額が。これが成長か。それでも無限に金が必要な現在、馬鹿にできない額はもらえた。大量に納品があったから値崩れしているのかもしれない。果たして、緊急クエスト前に売り抜けられたトレーダーは存在するのか。そう言う奴らからも恨まれるかもしれないのか。
ギルドを出て、新しい食材が入っていないかの市場チェックも兼ねて、スーパーへ行く。ついでにいくつか食材の補填もしておこう。インベントリも整理できたし、新たに果樹にする果物でも買おうかな。タコス用に柑橘類を育てようとしていたんだっけか?レプルとかいう果物が手に入ったから、それの出来次第だな。それに、急がないと。
スーパーを出て、門も出る。ラルムと話しているときにTeAから連絡が来ていた。少し待つように伝えてたし、動線的にスーパーに寄りはしたが、そんなに時間のロスにはなっていないし、まあ許容範囲だろう。
「遅い!」
「悪い悪い。門の出入りで手間取ってな。」
「あんなのギルドカード見せるだけで済むじゃない。」
そうだよな、俺もそうだと思っていた時期があったよ。話し出すとまためんどくさいことになるので、ぐっと堪えて、営業モードへ。何を買うかと聞くと、タコスとピザを買ってくれると。ガチャイベントも明日までだしな。俺が屋台をやる理由がガチャポイントのためだと伝えていたので、最後に買いに来てくれたそうな。めちゃくちゃいいやつじゃない。そんな貴女に朗報ですよ。
「イベントもあと少しだしな。後1,000リル払ってくれれば、在庫全部やるよ?」
「ガチャポイント貯めるじゃなかったの?」
「やることができてな。それに結局、買いに来てくれるのはTeAだけだし。」




