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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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124/127

ep.122

 

 帰ろうとするとアヴィから呼び止められた。ピザの作り方のことだろうか。こちらの世界ではピザはそれほど市民権を得ていないのか。それとも、栄養面でこの家では出ていないのか。ミアがあまり食べられないからなのかもしれない。当のミアはそんなアヴィの様子を見てニコニコしている。ミアの方がお姉さんだな。


「人への頼み方がなっとらんな。」


「GAKU様、申し訳ございません。アヴィ様、料理をする人にとってレシピというものは価値の高いものです。」


 ラカイユの反応を見るに、ピザはそこまで広まっていないんだろう。別に教えたって構わんのだが、一応躾はしておかねば。まあ、ここで親の権威を傘にして高圧的に出てこようもんなら、この家との関係もこれまでだ。ミアに一種の同情を持って、関わってきただけだからな。水が欲しかったのもある。ミアとはセバスを介して細々と交流していけばいいし、水の問題は解決できそうだし。ミアに兄がいるってことは、ミアが家督を継ぐ目は無いものと考えて良いだろう。女系でなければ、だが。謝罪をしてきたのは、執事のラカイユ。ミアの客人だからか、俺にも丁寧。


「では何を望む?リルか?いくらだ?」


「それは、お前のリルなのか?」


「と、当然だ。」


「それは、本当にお前が稼いだリルなのか?」


 そう念押すと、口ごもるアヴィ。良かった。この世界だと、戦闘力の有無で普通に稼いでそうだからな。下手しなくても、俺よりも収入が多い可能性だってある。不敬罪でしょっ引かれることも考えられたし。親の金を自分の金だと勘違いしている程の世間知らずでもないことがわかった。交渉のテーブルにはついてやろうじゃないか。


「リルをいただけるのであれば、もちろんそれに越したことはないんです。ですが、アヴィ様のリルではないのでしょう?あなたが私に何を提供できますか?」


 今回もまた、適当に話しを進めたせいで何か対価を求める流れになってしまった。もう後には引けないので、適当に言葉を紡ぐ。あの占い師も、このことを指摘しろよ。子難の相が見えるって。言動には気をつけろって。


「難しいか。ならアヴィ様の得意なことは?」


 下手すると倍以上上の大人に詰められるのは流石に怖いよな。アヴィもなかなか踏み出せなかったので、助け舟を。有事の際に名前出してもいい権利を所望したい。何、領主の名前を貸せってわけじゃない。領主の息子の名前を貸してくれてもいいって言ってるんだ。


「俺は、魔法が得意だ。」


「では、その魔法を教えてもらうというのはどうでしょう?ですが、ピザは旅人の間ではポピュラーな食べ物です。私以外にもたくさんの人が作れます。アヴィ様の魔法は唯一のものでしょう。私は旅人ですので、この提案とレシピが釣り合っているかは分かりません。」


 なんと、アヴィには魔法の素養があるという。それなら、尊大な物言いにも納得いく。この世界では最も重要な能力の一つといえよう。うまくいくと、珍しい魔法を教えてくれるかも?偉い家系の秘事口伝や血系の類でないならいいんだが。でも、それなら、その力を使って稼いでいてもおかしくないような?教育方針のせいか?


「じゃあ、定期的に珍しいものを作って持ってこい。しょっぱいのも甘いのも全部だ。」


「お受けしましょう。」


 相変わらずな物言いだが、交渉のテーブルに着いたのは俺だからな。俺がOKを出すと、ほっとしたような、嬉しそうな顔を滲ませ、ミアの方を向く。年相応かと思っていたが、なんだ、妹のためにレシピを知ろうとしたのか?妹想いのいい兄貴だな。そういえばシスコンだった。ミアもニコニコ。


「それでは、誰にお教えしましょう?料理番はいらっしゃるので?」


「いや、ラカイユに伝えてくれていい。」


「そうですか。」


 とりあえず、ベースとなる生地、トマトソースの作り方を教える。あとはガーリックを入れたり、ハーブを使ったりと、ソースも変えられること、上のトッピングも自由に変えられることを例を出しながら説明する。変わりだねとして甘いタイプのも。


「オーブンを余熱して、焼く直前にオイルをかけて、高温で短時間で焼き上げれば。」


「これもオーブンで作ったのですか?」


「いや、これは適当に石窯を組んで。」


「では、それも見せろ!」


 説明中は黙って聞いていたアヴィ。焼く段階に入って、家で作る時用の説明をしていると、それを遮って、石窯を見せろと要求してくる。別に構いやしないが、街の外だぞ?そんなに気に入ったのだろうか。次会った時、太っていたら俺のせいか?


「構いませんが、街の外に、」


「そうか、では行こう。」


 そう言うと、アヴィは立ち上がり、門の方へ歩き出す。それをわかっていたように、ラカイユもその後に続く。状況についていけてないのは、俺だけだ。ミアもセバスもニコニコ。お前ら、甘やかし過ぎてないか?


「お兄様は頑固ですから。」


「アヴィ様は行動力がおありですからね。」


「おい、どうしたGAKU。日の暮れる前に行くぞ。」


 ちょっと問題があるんだけどなあ。




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