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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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123/129

ep.121

 

 シスコンは不承不承といった面持ちだが、ミアには言い返せないのか、はたまた嫌われたくないのか、セバスの隣にいた男性に鉄門をあけさせ、中に通してくれる。噴水の隣には、問答の間にテーブルと椅子、お茶が用意されている。流石の執事力、でも今回は茶に合うものじゃないんだよな。材料があれば、すぐ作れはするんだが。甘いもの作るとか、持ってくるとかいってたっけか?


「ミア、しばらくだ。体調はいかがかな。」


「お久しぶりです。体調はまずまずと言ったところでしょうか。お薬のおかげで随分落ち着いています。この間のお料理は大変美味しかったです。」


「それは何より。」


 言葉遣いがなっていない気もするが、ミアが友人と紹介してくれたからな。ミアの兄貴がいても気が楽だ。良い薬師と巡り会えたんだろうか、最初に会った時よりも元気そうだ。この間私た料理とは、タコスのことだろう。本当に食べられたか、疑問ではあるが、まあ優しさを汲もう。そう思えば、今回持参したピザも少し重かったかもな。健康体本位で考えるのが良くない。もう少し待ってくれれば、果実を渡せるかもしれんから。


「失礼。私はGAKU。旅人です。」


 セバスが椅子を引いてくれているんだが、座る前にシスコンとその執事に挨拶を。


「これは、ご丁寧に。アヴィ様の執事をしております、ラカイユ、と申します。GAKU様のお話は予々。」


 シスコンはフンと鼻を鳴らすだけだが、その執事は丁寧に頭を下げる。ちょうど反抗期くらいか?まあ可愛いもんだな。兄貴の名前はアヴィ、執事がラカイユか。セバスより若そうだが、兄の執事につく方が偉いのか?この辺の順位はわからんな。ラカイユがどういった話を聞いているのか、気になる。


「すまない。茶に合わせるには少々思いな。後で温め直して食べてくれ。」


 セバスが茶の準備をし始めたため、ラカイユに皿を持ってきてもらって、その上にインベントリからピザを取り出し、皿の上に乗せる。


「おっと、それではお茶は後にして、熱々の内にいただきましょうか。」


 セバスが茶の準備をやめ、そう提案してくる。時間的には昼ちょっと過ぎたくらいか?遅めの昼といっても差し支えないくらい。こっちの世界でピザが市民権を得ているかわからんので、とりあえず切り分けるのは俺が。本人の申し出もありミアには8分割に切った1ピースの半分、先ほども味見をしたからと残りの半分を俺がもらう。アヴィの前には2ピースが。いいぞ。ガキは腹一杯食って大きくなる義務がある。残りは家の人で食べるのであろう、温め方を一応教えておく。まあ、俺よりも優れた【料理】スキル持ちを雇用しているだろうから、軽く。足りるかな。帰る時に、後一枚渡しておこうか


 セバスは茶の代わりに何か果実の入った水を用意し、各々のグラスに注いでくれる。セバス達も座って食べればとは思うのだが、そうもいかないんだろうな。アヴィが一口、それを見届けたからか、続いてミアが一口食べる。


「美味しいです。」


「それは良かった。」


 ミアが一口食べて感想を述べてくれる。ちなみに出したのは、トマトソースにチーズを乗せたシンプルなもの。流石に、薬草を乗せたものは出せなかった。アヴィの方は感想は言わないが、ミアの様子を見つつもすでに2枚目に入っているので、嫌いではなかったのだろう。この辺の食い意地のはった奴には、シンプルなものは物足りないだろうな。照り焼きなんかはまだできないが、味付けし鶏肉なんかは乗せても良いかも。客入り次第だ。


「この果実は?」


 俺は水の中に入った果実が気になった。現実ではレモン水的な立ち位置だろうか、ピザを食べた後でも、飲んだら口が爽やか。甘いような、酸味が強いような独特なクセがあり食べたことのない果実だと思う。


「レプルという果実でございます。」


 こちらの世界の果実だろう。食べられはするが、そのまま食べることはあまりなく、こうして香りづけとして重宝されているらしい。スーパーに売っていただろうか。上級国民が享受している類の果実だろうか。後で、種でももらっておこうかな。


 ピザも食べ終え、セバスが紅茶の用意をしてくれる。手持ち無沙汰だし、前に約束していた、ダンジョンの話でもしてやろうか。随分時間が経ち、記憶も曖昧だが、ところどころ脚色すれば何とか完走できるだろう。あの頃はルーにも頼っていなかったから、アヴィたちのいる今話しても、隠し事なく伝えられるし。この大人数で話すのも気恥ずかしいが、聖域を切り出すまでの繋ぎでもある。あ、セバス。クッキーを一つとっておいてくれ。ルーが食べるかもしれないから。迷惑かけるね。


「それではダンジョンの話でも。ダンジョンといっても、、


 初めてダンジョンに入った時のあらましを語る。コウモリと戦い、行き止まりで隠し部屋を見つけ、中にいたでかい蜘蛛と戦った。麻痺毛を飛ばしてきたこと。何とか勝利を収めたが、継戦はできないほど削られてしまったこと。二日目は大きいカニと戦い、大きくて食べ応えのあるカニ身が手に入ったこと。ボスは大きなカエル。地面が揺れるほど大きく、重く、そして高く飛んで体当たりしてくる。ダンジョンを抜けた先には、岩壁に囲まれた白い砂浜、水平線が広がっていること。今は旅人の仲間達がロマンを求めて船を造っていること。時折紅茶で口を潤わせ、早口になり過ぎないように。主に聴かせているミアの反応を見ながら話した。


「すごい冒険ですね。」


 俺の拙い話にも、ミアは目を輝かせて聞いてくれ、にこやかに感想を述べてくれる。うら若い貴女にはまだ無限大の可能性が秘められているのに。一緒に運営を恨もうか。俺のできる小さな抵抗はシナリオにノイズを入れることだが、遊び人だからな。今回のガチャでレアを掻っ攫うくらいしかできないかも。それかガチで街を壊しに行くかだが、アインスの街はやめておこう。よくも悪くもしがらみが増え過ぎた。


「では、次は咎人と呼ばれるものと対峙した時の話でも。」


 俺が咎人というワードを口にした瞬間、セバスの表情が微妙に濁ったのを確認した。やはり、物知りだな。ミアとアヴィ、ラカイユは知らない様子。子ども達には聴かせたくない話も入ってくるのかな。


「それでは、お暇しようかな。セバス、お茶ありがとう。またくるよ。」


「またぜひいらしてください。」


 セバスは恭しく頭を下げ返事がわりに。ミアはまた歓待してくれるという。立ち上がり鉄門の方に向かおうと振り向くと、今まで押し黙っていたアヴィが口を開いた。


「おい!これどうやって作ったんだ。」


 教育がなってないな?ラカイユ。




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