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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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119/129

ep.117

 

「私も初心者で、色々なところを見て回っているんですよ。たまたま通りかかったところに、レイさんの声が聞こえて。助けられて良かったです。」


 戦闘はからきしなんです。同じ初期装備であることもアピール。あくまで、穴に落ちているところを救出した救世主であると強調する。それでも、彼女の表情を見るに、信じていない様子。


「じゃあ、この落とし穴はどう説明するのよ。あなたが掘ったんじゃないの?ハマった人に、恩きせて、連絡先聞き出す作戦なんでしょうけど、残念ね。私はそんな簡単な女じゃなくてよ。」


 被害妄想の強い女だ。おそらく現実でも自分の容姿を鼻にかけてるタイプなんだろう。まあ、彼女の容姿が現実の姿をスキャンしたものをもとにしているのであれば、現実でも高嶺の花だろうな。初心者の、俺の益にならない女の連絡先なんて願い下げだ。うまく交渉できればファーストデッドの称号について何か聞くことができたとも思うんだけどな。俺もまだ、精進が足りん。初討伐、初飲食、初死亡は初日にワールドアナウンスがあった3つ。俺の持っている【欲望の僕】と同等、もしくはそれ以上の称号なはずだ。


「落とし穴に関してはわかりませんが、レイさんがここまで来た理由はわかりました。ユニーク探しは大変でしょうが、ファーストデッドの称号もお持ちなんですよね、レイさんならきっと強くなれるはずです。何にせよ、無事で良かった。それでは。」


 適当言って切り上げる。あんまり深く関わらない方がいいタイプだ。今となっては初期装備なのが悪さしている気がしないでもない。どこか舐められているような。ナンパ目的なら、もっといい装備して、カッコつけますよ。それに、穴から助け出す前に、交渉する。


「ちょっと待ちなさいよ。あなた、何で私が称号持ってること知っているのよ。」


「やっぱり、ファーストデッドで称号あったんですね。噂では聞いていたんですが。いや、羨ましいなー。」


 では、と別れを告げ、街の方へ動く。思わぬ出会いに、時間を食ってしまった。ルーも痺れを切らしているようだ。すまんな。すぐ魔道具屋行こうな。人間のしがらみとは、かくも面倒臭いことなんだよ。


「あなた、鎌かけたの!?」


 後ろでレイさんの声が響く。そんなつもりはなかったんだけどな。元々知っていたし。でも、こんなところで初期称号持ちの人と出会えるとは。もっと先に進んでいると思っていたが、人には色々理由があるものな。人生何があるかわからんものだ。


「ちょっと!その噂って何なのよ!」


 ちょっとしつこいかも。門の方へ歩く俺を追いかけてきて、呼び止める。でも、これも俺が蒔いた種なんだよなあ。一度嘘を吐いたら、最後まで通さねばならないのが面倒だ。特にこういう人に当たると。これを教訓として、今度から真実を持って人と関わることにしよう。神には誓えない。あくまでも努力目標ということで、ここは一つ。


 ただ、ここまでは責任もって嘘を吐き通すしかない。どうやって躱そうか。掲示板で見たと言ってしまえば、どのスレよ、となる。いろんな人が噂していただと、誰よ、とかお前最初期からいたのに初期装備なのか、とか、余計な墓穴を掘りかねん。NPCは称号に関しては知っているようだが、ワールドアナウンスを知っているわけもなく矛盾が生じる。NPCに擦り擦り付けるのも不可。


「レイさん、お腹空いてませんか?」


「お腹?話逸らさないでくれる?」


「話を逸らしているわけじゃ。実は僕料理人を目指してまして。今、タコス屋をやってるんですよ。お店をしているといろんな人とお話しするわけで、そこで聞いたんだと思いますよ。」


 お近づきの印にどうぞ、とインベントリからタコスを出し、渡す。サービスだ。その右手に握りしめているコップに、水も注いでやる。これで3杯目だからな?まあ、通説では日に2L飲んでもいいらしいから。


「ありがと。」


 ほう。存外素直。このまま有耶無耶になってくれないものか。噂とは出どころがわからないから噂なのだよ。


「噂の出所は分かりませんが、おそらくワールドアナウンス流れた人が称号もらえたことを知っている人が、ワールドアナウンス=称号と捉えているんじゃないでしょうか?そう考えるなら、ワールドアナウンスはまだ数える程しか流れてませんし、称号持っているレイさんは、十分なアドバンテージを持っていると思いますよ。」


 もぐもぐとタコスをゆっくり食べている彼女に、説くように伝える。タコスに水、それにありがたい説法。それで落とし穴の件はチャラにしてもらおう。それにしても、いい仕事をしたな。やはり祠は出したままにしておくべきだった。


「ねえ、私は何をしたら最前線に行けるかな?」


 知らんよ。神殿に行ってシスターにでも話聞いてもらえ。




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