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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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ep.109

 

 生地を仕込んで、森の方に向かっているところ。タコスも用意したので、道中で販売することだってできる。魔物に遭遇すれば戦闘だってできる。経験値にならんから、積極的に挑んではいかないが、昨日のイベントで、【土魔法】の熟練度が結構上がってしまったからな。【水魔法】も使っていきたいところ。


「はは。文字通り、水をあけられた、ってか。」


「   」


 面白いと思ったが、ルーには刺さっていない。良いんだ。爬虫類に人様の高尚な言葉遊びはわからんだろうから。まあ、これから人間社会に混じっていけば、理解できるようになるよ。


「あまり人がいないな。」


 昨日は緊急クエストだから、人が大勢来ていたのか。普段はこのくらいってこと?みんな第2エリア以降に移ってしまっているのだろうか。いつの間に。確かに、エリアボスのガチャポイント美味しそうだな。中にはボス周回している人とかもいるだろうか。それとも、みんなガチャポイントそこまで重要視していない可能性がある?


 久しぶりにきた群生地は、火事の前の状態に戻っていた。草原も元に戻っていたが、森の方の木々はもうしばらくと言ったところか。それでも十分すごい。雨季もあったりで、もともと肥えた土地なんだろう。川も近いし、草原を開墾して潅漑して、田畑にすれば良いのに。米見つかったら、ミアに上申しようかな。俺がアインスの街を一大農業地にしてやろう。


 雨季で雨続きだったというのに、川の流れは少し早くなったくらい。水源の方はあまり降らなかったのかもしれない。まあ、それもファンタジーだ。今日も上流に向かいながら枝を集めていく。ここでは、鯛の鯛に研いでもらったナイフが大活躍。帰りにも通りやすいように、邪魔になるような枝から切っていく。たまに太い枝が落ちているとテンションが上がる。自然のものを拾って喜ぶなんて、ガキの頃の帽子付きどんぐり以来かも。龍涎香、落ちてないかな。


 枝を伐採しながら、川沿いを進む。こないだ引き返した付近は過ぎた頃だろうか。せっかくだから、先に進んでみよう。キャンプキットの予備もあるし、立ちはだかる障害があったとしても、俺には秘密兵器がある。


 遡るにつれ傾斜もキツくなっていき、周りにあるのも石から岩と呼べるくらいになってきた。時折、立ち止まりながら、商品のタコスを頬張り空腹を満たす。釣り人もここまで来る人は多くないのか、あまり人がきた形跡がない。まあ、海を目指すなら、上流より下流だよな。


「おお、これは壮観だ。」


 それでも尚、上流を目指し歩いていると行き止まり。というか、切り立った崖。水の流れは滝となって上から降り注いでいる。滝壺もそこそこの深さがありそうだし、この辺りは傾斜も緩やか。夏のレジャーにはもってこいだな。鬱蒼としていた木々もこの辺りは鳴りを潜めており、開けた地に日が入ってきている。是非とも犬をつれてきて泳がせたい。濡れた体をぶるぶると震わせて飛んできた水を浴びたい。こういう景色を見られるのも、このゲームをやっていてよかったところだな。現実では簡単に見られない光景も、ものすごいクオリティのおかげでまるで現実のように感じることができる。


「ここまで来るのが、面倒なんだけどな。」


 見える範囲では迂回できそうにない。というわけで、ここが行き止まりなわけだが、ここを越える方法を俺は持っている。先ほどリクガメのドロップを確認した時に思い出した。かつて、ダンジョンでトノサマフロッグを倒した時に手に入った一品。トノサマフロッグの手袋だ。


「まさかここで使うとは。」


 てっきり、最初に使うときは何かから逃げる時とばかり。日頃の行いか?使用感を見るにはちょうどいいか。今なら保険が効く。


「本当に登れるのかよ。」


 カエルの手袋はかなりファンシー。手背の部分は黄緑色。掌は白や黄色。今は誰もいないからいいが、成人男性が人前でつけるのは憚られる。そして、手首のベルトもなく、かなり心許ない。登っている途中で手袋が抜けたらどうなるのだろう、とか、足はどうするんだという疑問も残る。到達目標が目視できているのが、唯一の救いか?


「ルー、先に登るか?」


「   」


 その気はないらしい。お前は独力で登れるだろうに。運動しなきゃ強くなれんぞ。


「仕方ない。」


 意を決して、崖と向き合う。試しにしゃがんで壁に張り付いてみる。うん、大丈夫のよう。立ち上がり、一息。そして壁に手をつき登り始める。MPの消費は緩やか。時間経過で加速度的に増えるのだろうか。まあ、ゆっくり行こう。


 崖も中頃まできた。ここまでは特に障害もなく割とスムーズ。しかし、MPの消費速度が若干上がっているように思う。本来は張りつけるだけだから仕方ないか。それでも残りの距離から見て、登り切るの分には問題なさそうだ。


 時折休憩をとりながらなんとか登り切る。隣を流れる川はさらに奥へと続いているようだ。少し触ってみると、結構冷たい。水源に近くなっているのかもしれない。水質も、ミアのところには劣るが、なかなか良さそう。ミアと交流がなかったら、ここのを使っていた可能性もある。


「少し休憩だ。」


 川のせせらぎを聞きながら、都合よく近くにあった切り株に腰掛ける。ジョンにもらっているコーヒーを飲んでも良いんだが、せっかくここまできたんだから、よりいいロケーションを求めてしまう。日は少し傾いてきた頃か。まだいけるな。




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