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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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107/127

ep.105

 

「ほら。できたぞ。」


 渡してもらったナイフは、新品同様の輝き。柄の部分もしっかり調整されている。職人仕事だな。随分腕を上げたようにも見える。


「いい出来だな。独り立ちも近いんじゃないか?」


「まだ全然足りんよ。」


 謙遜する鯛の鯛に【生活魔法】をかけ、タコスを渡す。自分で使えるだろうが、サービスだ。フレンドコールと一緒で、便利なものでも使わないと存在を忘れてしまうからな。


「うん。なかなかいける。」


 そう言ってタコスを食べてくれる鯛の鯛。体もデカく強面の鯛の鯛だが、食べ方は丁寧だな。ソースをこぼすまいと、ゆっくり食べ進める。女将さんたちもそれぞれ感想を述べてくれた。他にも門弟がいるのか、追加で購入もしてくれるとのこと。注文はワカモレ2のサルサ1。気に入ったんだな、ワカモレ。


「本当に金はいいのか?」


「俺が良いって言ってるから、良いんだ。美味しかった。また何か珍しいもん作ったら売り込みに来てくれ。ナイフの調整も。」


「ならば、ありがたく。」


 礼を言って、ゴードン鍛治店を辞去する。さて、次はn/nさん。すでにアポは取ってある。今日もギルドの作業場で研鑽しているそうだ。ギルドにどのような通達が行っているのかも気になるからな。敵情視察のようなものか?


 昨日機能を停止させてた影響か、本日はいつにも増して盛況な冒険者ギルド。まあ、稼ぎ時だよな。俺を警戒している暇なんてなさそうだ。ドロップの買取には長蛇の列が。


「そういえば、俺にもアナウンスあったな。」


 戦闘履歴に応じたアイテムと言っていたが、この時期にあのレベルのボスドロップって流石に破格じゃない?


 ・陸玳瑁の背甲

 ・陸玳瑁の爪

 ・陸玳瑁の血液

 ・陸玳瑁の鼈甲

 ・陸玳瑁の心核


 手持ちを確認した。あのボス亀に関係してそうなのは、ここら辺かな。俺はマッドボールの2発しか入れてないが、ルーの魔法が相当効いたようだ。LUK高いのもプラスに働いているのかも。下に行くほどレア度が高い。現状、俺に扱える代物ではないのは一目瞭然。蒐集家垂涎の一品といったところか?おそらく外交用だな。身を守る手段が一つ増えたと思おう。ますます死ねなくなったが。アイテムを保管できるところはありませんか。


 他には倒した魔物のアイテムが数点ずつ。特段、レアなものはなさそうか?いや、一個だけ。水魔石なるものが。ウサギやスライムのドロップに紛れている。これが世に聞く魔石だろうか?結構レアなんだな。アインスの経済はこれが支えていると聞いたが、このドロップ率で賄えるんだろうか?綺麗な水は貴重だからな。需要は十二分にあるのだろう。全部売っ払って良いかもしれないな。それで装備を更新しようか。今はここらで手に入るドロップ品の価値は下がっているだろうか?昨日大量に落ちただろうからな。でもしょうがないか。装備品の価格も相対的に下がったことを期待しよう。できればルーにも何かしらつけてやりたいんだが、信頼できる職人を知らないのがネック。


 作業場に着く。n/nさんは、こないだと同じ場所にいた。定位置なのかな?


「久しぶり、でもないな。急に連絡してすまない。こないだくれた鍋使ってタコス作ったんだ。」


「問題なく使えたようで何より。遠慮なく。」


 そういって、差し出したタコスを一口。こちらは豪快だ。口元が汚れるのも厭わず、頬張っていく。あっという間に食べ終えると、手を合わせる。


「ありがとう。美味しかったよ。」


「いや、鍋の礼だ。また何かあれば連絡させてもらうかもしれない。」


「あ、ところで、君昨日のクエストには参加した?」


「ああ。近場で小さいのを狩っていただけだが。」


「そうかあ。じゃあ、ボスのドロップは出てないか。」


「ボスのドロップ?」


「うん。西の方には鶴、東には亀が出たらしいんだけど、ダメージ上位だったり、ラストヒットだったり参加したプレイヤーが素材貰えているみたいなんだよね。掲示板で自慢している人がいてさ。何かアイデアを得るために、持ってたら、見せてもらえないかなって思ったんだ。」


 鶴に亀って。あまりにも日本モチーフすぎない?西にはあのサイズの鶴が出たってこと?うわ、見たかったな、それ。飛ばれたらどうすんだろう?近接職何もできなくないか?西が遠距離職向け、東が近接職向けって棲み分けだったのかな?カメも硬そうだったから、近接職大変そうだったけどな。そして、掲示板で自慢していたという人物像がなんとなく透ける気が。確か、あいつラストヒットだったよな。うわ、あんな嫌な奴らにボスドロップ渡ってしまったか。ますます調子に乗ってしまうじゃないか。


「そうだったか。カメには2発魔法を当てて、運よくドロップしたものがある。見せてもいいが、流石にここではあれだな。」


「本当?すごいね!そうだね、じゃあ、こっち。着いてきて。」


 n/nさんはそういうと作業を中断し、作業場の奥の扉に向かって歩き出す。訳もわからず、とりあえず着いていくと、扉の前で何かしら作業をしているみたい。少し待ち、チーンとエレベーターが着いた時のような音がしたと思ったら、扉が開きn/nさんは中に入っていく。


「ここすごいな。」


「やっぱり、知らなかったか。」


 笑いながらそう言うn/nさん。扉の中は仮想空間。まあ、このゲームの世界自体が仮想空間のようなもんだが。なんといえば良いか、何もない永遠が広がっていた。聞けば、用途はさまざま。武器や魔法を試したり、対人の練習をしたり、人には聞かれたくないようなあれこれまで。ギルドの至る所から繋がっているらしく、一定の使用料を払うことで借りられるそうだ。もちろん禁則事項もあるらしいが、極一般常識を持っているなら、問題にはならないそう。


「さ、遠慮はいらないよ。出せるもん出しな。」


 輩か海賊かのように催促してくるn/n。あのサイズの甲羅が出てくるのか、俺も気になってはいたところだ。ここならば、それこそ遠慮なく出せる。ただ、出せるとしたら、甲羅、爪までだろうな。魔法2発当てただけで、鼈甲やら心核がドロップする訳がない。


「うわ、でっか!」


 陸玳瑁の背甲は元のサイズまんまのように見えた。こんなん、どうやって加工すれば良いのか、きっかけすらわからん。せめて、使いやすいサイズに処理済みのものをよこしてくれればいいのに。ますます、インベントリの肥やしだな。巨人の街にいった時に、高値で捌くしかない。


 背甲の後だとスケールダウンしてしまうが、横に爪も出す。それでも十分大きい。俺の体高と同じくらいか、下手したら上回るくらい。もう素材となっているのに、年季と破棄を感じる。


 n/nは二つの素材を隈無く見て、色々ぶつぶついっている。これを見て何か得られるものがあるのだろうか?さすが、もの作る人の感性は独特なんだろうな。


「いや、ありがとう。かなりすごいね。」


 ひとしきり見た後、感想を言う。心なしか肌艶も良くなってる。


「ご期待に添えたようで何より。n/nは参加しなかったのか?」


「ちょっとタイミングが合わなくてね。ボス出る前にログアウトしちゃった。」


「そうか。それは間が悪かったな。」


 そんな雑談をしながら外にでる。n/nは溢れ出る創作意欲を表現するとか言って作業に戻っていった。さ、俺も引き続き頑張ろう。木板でも買って、一度屋台に戻ろうか。





タイマイ=玳瑁

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