第91話 数値至上主義
会議が再開される。
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戦略補正局の
長いテーブル。
そこに並ぶのは、
官僚。
政策設計者。
そして政治家。
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国家評価制度。
その設計を決める
最重要会議だった。
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レオン・ヴァルディアは
ゆっくりと立ち上がる。
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「では」
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資料をめくる。
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「議会側の提案を
説明しましょう」
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スクリーンに
新しいグラフが映る。
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国家経済指数。
都市成長率。
政策成功率。
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すべてが
右肩上がりだ。
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「NCI導入から
五年」
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「国家効率は
歴史上最高を
記録しました」
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議会側の
補佐官たちが
静かにうなずく。
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「しかし」
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レオンは
指を動かす。
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新しいグラフ。
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新規事業率。
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下降している。
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「挑戦が減っている」
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「理由は
単純です」
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「評価制度が
不完全だから」
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NEA側の
官僚たちが
わずかに
動く。
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「不完全?」
局長が言う。
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「ええ」
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レオンは
平然と答える。
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「余白です」
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会議室の
空気が
少し冷える。
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「余白は」
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「不確実性を
許す」
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「不確実性は
非効率です」
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彼は
グラフを指す。
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「国家は
効率で動く」
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「資源は
有限です」
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「ならば」
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「成功するものに
集中すべきです」
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静かな声。
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だが。
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圧倒的な
自信がある。
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リーネは
レオンを見る。
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彼は
確信している。
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この制度は
もっと効率化できると。
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「議会の提案は
三つです」
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レオンが
指を立てる。
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「第一」
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「余白係数の削減」
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スクリーンの
数値が動く。
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余白補正値。
0.15 → 0.05
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「第二」
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「短期成果補正の強化」
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成果指数が
大きく跳ねる。
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「第三」
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「政策達成速度の
評価加算」
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新しい
係数が追加される。
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つまり。
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**速い政策ほど評価される。**
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会議室に
沈黙が落ちる。
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局長が
ゆっくり言う。
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「それでは」
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「制度は
短期成果だけを
追うことになる」
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「当然です」
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レオンは
迷いなく答える。
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「国家は
結果で評価される」
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彼は
リーネを見る。
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「理想ではなく」
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「結果で」
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リーネは
少しだけ
息を吐いた。
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彼の思想は
理解できる。
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数値は
公平だ。
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効率は
国家を強くする。
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だが。
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「一つ質問があります」
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リーネが
静かに言う。
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会議室の
視線が集まる。
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「どうぞ」
レオンが言う。
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「この制度」
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「十年後も
同じ成果を出せますか?」
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レオンは
一瞬だけ
黙る。
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「当然です」
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「効率は
蓄積される」
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リーネは
首を振る。
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「いいえ」
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静かな声。
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「効率は
消費されます」
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スクリーンに
別のグラフが映る。
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研究開発指数。
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下降。
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教育投資指数。
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下降。
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「余白は
未来の資源です」
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「削れば」
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「未来は
細くなる」
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レオンは
微笑む。
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「未来は
常に不確実です」
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「だからこそ」
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「今の成果を
最大化する」
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二人の視線が
交差する。
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効率。
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余白。
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そのどちらが
国家を守るのか。
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戦略補正局の
会議室で。
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国家制度の
思想戦争が始まった。
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