第74話 速さと、余白
「この件、
今日中にまとめます」
カイルの声は、
迷いがない。
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「確認は
最小限で」
「情報は
十分揃っています」
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会議室の空気が、
少しだけ
引き締まる。
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速い。
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リーネは、
資料を見つめながら
思う。
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判断基準は、
間違っていない。
分析も、
十分だ。
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だが。
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「……一つだけ」
口を開く。
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カイルが
こちらを見る。
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「この部分、
想定外が起きた場合の
余白は?」
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「余白?」
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「変更の余地、
です」
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カイルは
一瞬だけ
考える。
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「必要ですか?」
真っ直ぐな目。
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「今の情報で
十分、
最適解は出せます」
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正しい。
論理は通っている。
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リーネは、
うなずく。
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「……そうだね」
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会議は
そのまま進む。
決定は
早い。
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終わった後。
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「さっきの“余白”って
どういう意味ですか?」
カイルが
尋ねる。
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「……逃げ道、
かな」
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「逃げ?」
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「やり直せる
幅」
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カイルは
少しだけ
眉をひそめる。
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「でも、
最初から
正解を出せば
いりませんよね」
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真っ直ぐだ。
若い頃の
自分を
見ているようで。
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「……そうかもね」
リーネは
笑う。
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夕方。
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決定は
順調に進んでいる。
問題も
ない。
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だが。
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小さな変更依頼が
届く。
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「想定外の
追加条件です」
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カイルは
即座に
資料を修正する。
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「対応可能です」
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速い。
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だが、
修正は
全体に波及する。
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「……負荷が
増えます」
誰かが
呟く。
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「許容範囲です」
カイルは
即答する。
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リーネは、
静かに
見ている。
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速さは、
強さだ。
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だが。
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余白が
ない。
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夜。
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「……速いのは、
正しい」
リーネは
独り言を
呟く。
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「でも」
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速さは、
間違いを
前提にしていない。
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迷わない。
疑わない。
止まらない。
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それは
美しい。
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でも。
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「……私は、
止まりたい」
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逃げではない。
恐れでもない。
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ただ。
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決める前に、
一瞬
余白が欲しい。
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リーネ・アルヴェインは、
静かに
理解した。
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**速さは、強さだ。**
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でも。
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**余白を持てることも、
強さかもしれない。**
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