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無能扱いで追放したら、勇者パーティが半年で崩壊しました 〜装備も補給も撤退判断も全部俺がやってたと気づいても、もう遅い〜  作者: 芋平


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75/113

第75話 止める、という決断

 追加条件は、

 想定より

 広がっていた。


---


「影響範囲、

 想定の三倍です」


 報告は、

 冷静だった。


---


「問題ありません」


 カイルは

 即答する。


---


「修正で

 吸収できます」


---


 速い。


 迷いがない。


---


 会議は、

 そのまま

 進みかける。


---


 リーネは、

 資料を

 見つめる。


---


 数字は

 正しい。


 計算も

 整っている。


---


 だが。


---


 負荷は、

 人に

 乗る。


---


「……待って」


 気づけば、

 声が出ていた。


---


 空気が、

 止まる。


---


「一度、

 止めよう」


---


 カイルが

 こちらを見る。


---


「止める?」


---


「今の修正、

 可能かもしれない」


「でも」


---


 一呼吸。


---


「全体を

 見直したい」


---


「時間が

 かかります」


 カイルは

 即座に言う。


---


「期限には

 間に合います」


---


 正しい。


 論理も

 正しい。


---


 だが。


---


「間に合うかどうかじゃない」


---


 自分の声が、

 思ったより

 はっきりしている。


---


「余裕が

 なくなる」


---


「余裕は

 必要ですか?」


---


 まっすぐな問い。


---


「……必要」


 迷わず、

 言えた。


---


「何かあった時に、

 戻れる幅が欲しい」


---


 沈黙。


---


 上司は、

 何も言わない。


 ただ、

 見ている。


---


 カイルは、

 少しだけ

 考える。


---


「……最適解は

 今です」


---


「かもしれない」


---


「でも、

 最適解を

 守れなかった時の

 準備も

 必要」


---


 リーネは、

 深く息を吸う。


---


「今回は、

 再検討を

 提案します」


---


 会議室が、

 静まり返る。


---


 これは、

 補助の言葉ではない。


 判断だ。


---


 上司が

 ゆっくりと

 口を開く。


---


「……理由は、

 明確か?」


---


「はい」


---


 自分でも、

 驚くほど

 はっきりと

 答えられた。


---


「安全域が

 薄いからです」


---


 短い沈黙のあと。


---


「……分かった」


---


 上司は、

 うなずいた。


---


「再検討に入ろう」


---


 空気が

 動き直す。


---


 カイルは、

 資料を閉じる。


---


「……分かりました」


 声は、

 平坦だ。


---


 責めてはいない。


 だが、

 納得も

 していない。


---


 会議後。


---


「どうして、

 止めたんですか」


 カイルが

 尋ねる。


---


「……怖かった?」


---


 リーネは、

 少しだけ

 考える。


---


「違う」


---


「守りたかった」


---


「何を?」


---


「戻れる幅を」


---


 カイルは、

 答えを

 持たない顔をする。


---


 夜。


---


「……止めた」


 独り言。


---


 逃げではない。


 保身でもない。


---


 決めた。


---


 速さではなく、

 余白を選んだ。


---


 リーネ・アルヴェインは、

 静かに

 理解した。


---


 **止めることも、

 決断だ。**


---


 そして。


---


 決断は、

 任されるものではない。


---


 **自分で

 引き取るものだった。**

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